武の極地
異世界転生をした元魔術師の俺は、赤子の俺でも魔術が使えるこの世界のすごさに感動して”最強の魔術師”と言う夢を目標にしていきることにした。
友人のカノン、恋人のアリシャ、後輩のクリームと共に日々切磋琢磨している。
そして俺は現在、国の最高戦力の1人であるアルトに土下座して”聖女を助けてほしい”とお願いされている。
その後聖女であるアグラを助け出すため俺は城へと忍び込んだ。
そこでアグラを攫い逃げ出そうとするも、すぐに見つかり交戦状態へとなってしまう。
必死に戦うも防御不可の攻撃を喰らってしまう。
そのまま死を覚悟したが、友人であるカノンが敵の攻撃を防ぎ助けにきてくれた。
友人に敵の足止めをお願いして逃走し、後一歩のところで逃げられる……というところで近衛騎士・バランドとエンカウントしてしまった。
お互いにかなりのダメージを受けた状態となった直後、見覚えのある少女の増援が到着した。
そして何度か斬り合い隙を見つけたと突撃したがそれは罠で、俺はバランドの大技を受けて吹っ飛ばされてしまう。
これはその後の聖騎士の視点のお話。
武の極地。
武術を極めた者が到達する技術。
ある者は剣で魔術を斬り、ある者は防具を貫通する防御不可の攻撃を行い、ある者は剣を一振りすることによって風の刃を飛ばす。
「リーシェ!」
注意が足りなかったのだろうか。
いくらバランドに邪魔をされていたとはいえ、強引にでもリーシェに情報を伝えるべきだっただろうか。
バランドの技[風車]を喰らい、私の右後ろへ飛ばされた死体を見ながら後悔が過る。
まるで車輪に挟まれた小動物のように惨たらしい死体となる技を喰らったのだ。
肉体が原型を留めていることに驚きを感じる。
「叫ぶ暇があれば前を見ろ!」
バランドの叱咤と共に剣が飛んでくる。
「はっ!」
剣で弾く。
バランドの武の極地は飛んでこなかった。何か理由があるのだろうか?。
見ればバランドの剣が形を変え、曲がり円を描き複数重なる特殊な形へとなっている。
不味い、風撥条が飛んでくる。
即回避を行わなければ余波を喰らいそのまま倒れてしまうかもしれない。
「避けても良いのか?」
避けようとした瞬間、バランドがこちらに向けて一言謎の言葉を放った。
避けてもよいのか?どういうことだ?ただの張ったりだろうか?。
いや違うだろう。戦況的に有利で、私に逆転の可能性が無い状態で無駄に張ったりをかます必要は無い。
つまり何かがあるのだ。
親切心か、はたまた何か理由のがあるのかは不明だが良ければ確実に不味いことが起こるのだろう。
そう思い後ろを軽く確認する。
バランドの風撥条が飛んでくるために一瞬だけ、集中して後ろを確認する。
「っな!アグラ!」
後ろにはアグラがいたのだ。
よく見ると分かる、十レーンほど先にある廊下の奥に展開された結界の中にいる聖女が。
聖魔術の結界を貼っているんだ。
認識阻害効果と物理防御能力を備えた結界。
しかしバランドとアグラでは距離があるため、私が避けてもアグラに対して大した攻撃にはならないだろう。
故に今私がこの攻撃を受ける利点は無い。
利点は無いんだ。合理的に考えれば避けるのが一番なんだ。
「聖騎士の盾!」
しかし避けなかった。
避けられなかったんだ。
目の前に展開した大魔術の防御術式、聖騎士の盾は数秒耐えたのちに破壊される。
直後私の腹の辺りに衝撃が走る。
バランドの飛ばした剣先自体は、防御術式が半壊したが防御に完了したのだろう。だが追撃に来た武の極致は防げなかった。
まるで大魔術のような風の暴力により聖騎士の盾は破壊され、そのまま私に直撃した。
鎧にがへこみが入り飛ばされる。
三レーンほど飛ばされて、別館の入り口近くまで飛ばされた。
こういうときは曲がりやすく魔力で治る、という黄金の鎧の性質がありがたい。
下手な鎧ならば砕けてしまい、破片が体を傷つけたのだろう。
しかし戦況は全く良くはない。
「そういうところだぞ。意味の無いことをするな。」
そうバランドに言われる。
私だって避けれるものなら避けているさ。
でも避けれるわけないだろう……アグラは私の
「いくら生き別れの妹だろうとな。」
無理に決まっているだろう。
二度と会えないと思った妹だぞ?。
聖女になった時に再開した奇跡が起こったんだ。
けれど彼女が助けが欲しかったであろう状況を無視し、妄信的に父を信じ彼女を拘束してしまった。
罪滅ぼしと言うことではない。
けれど少しでも
これから可能な限り、ほんの少しでいいから彼女の助けになりたい。
「少しでも……怖い思いはもうさせたくないから……。」
「ほう。立ち上がるのか。」
バランドの風撥条の風に被弾したが、防御を取っていたともあってなんとか立ち上がることはできる。
聖回復魔術を使用しながら立ち上がる。
「これ以上時間をかけて変なことが起きても困る」
「貴様は貴重だから極力殺したくは無かったが……しかたない、殺すか。」
そういってバランドは風撥条の構えをする。
「桜剣」
剣を中心として術式展開をする。
聖魔術と剣を合わせた独創魔術だ。
剣に聖属性の魔力を付与し、斬撃に合わせ放出するという中距離用の魔術。
聖騎士の盾で守るのは防御力が足りなく、私は二つ同時に術式展開をするほど器用なことはできない。
だからこそ!桜剣でバランドを超えることでの逆転をするしかない。
「風撥───っ!?」
いきなりバランドが固まる。
こちらに対して話しかけたバランドが、いきなり視線を変えて驚いた表情をしている。
今まであまり表情を変えなく、変えても喜びぐらいの表情だったあの父がだ。
視線の先は私の右後ろ、先ほどリーシェが飛ばされた方向だ。
視線の先を見る。
その者を見た瞬間、私は凍り付いてしまった。
風車を喰らった少女が立ち上がろうとしていたのだ。
ただ立ち上がろうとしているだけならば、決死の覚悟と美談にできるようなものであろう。
そんな美談にできるような状態ではない。
「ア゛・・・・・ア゛・ア゛・・・・・・・・・・・・ア゛ア゛ア゛。」
声にすらならないうめき声を上げ、体を動かそうとしている。
全身は血だらけで血が固まり黒くなっている。
部分的に皮が剥げ肉が出ている部位もある。
右腕と右足は曲がってはいけない方向へ曲がり、左腕は力なくぶら下がって振り子のように動いく。
更に右腕の肘からは骨が飛び出ており、左の太ももは肉が削れ骨が見える。
立ち上がりかたも異様だ。
人間が立ち上がるとは到底思えない、まるで人形を動かす時のような奇妙な立ち上がり方をしている。
過去に実験され、禁止され追放された死霊魔術の類か。
それまたチキュウにあるこちらの常識とは違う魔術を使用したのか。
生きてるのか死んでいるのかすら分からない。
多くのダンジョンに潜り数多のモンスターを退治し、騎士としては人を殺したこともある。
そんな父すら固まってしまう。
そんな狂気の塊がそこには存在した。
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