試合1
感想よろしくお願いします。
裏の小さめの体育館位の広さ位のところに出る。初めは12番と25番の女性同士が試合するらしく呼ばれた。周りの人は中央から離れた外側で観戦するつもりだ。
中央に女性が出ていって2人が10メートルほど離れて向かい会う。因みに武器は木製になっている。初心者とはいえ開拓者を志す人はは皆大体妖力の扱いを心得ている。直家とは違い独学だが。直家は1人でずっと暮らしていてもこれ程覚えて扱うことが出来なかっただろう。開拓者の女性の武器は高い技術と多い妖力量だ。その多くが、妖術や弓などの遠距離攻撃を重視している。理由ら妖力量は多いが筋肉量が男より少ない女性は妖力をあまり纏えないのだ。
しかし、今回初戦で戦う女性の1人は女性と思えないほどゴツくて力強そうな感じだ。武器も薙刀を持っていて、胸当てを装備している。まるで、弁慶の様な人だ。対して向かい合う女性は弓を持っていて、小柄で胸が大きく可愛い容姿で、薄い青色の髪の女性だ。元の世界だったら戦いとは無縁そうな見た目だ。それに、あまり自信なさげな感じで注目される事に慣れていない感じがする。何故、このような試合に参加したのだろうか?慣れていないのであれば参加しないのも手だろうに。そう思ったらオドオドしている女性をはやし立てるような声が聞こえた。
「おいおい!青海!シャキッとしろ!30秒は持てよお!」
3人の女性がはやし立てているのが見えた。青海と言われた女性より自信に溢れて、容姿も良く装備も青海と言われた女性より良さそうだ。
ああ、何となくわかった。同郷の人で無理やり参加させられたみたいだな。可哀想に。
そんな3人の声を聞いてビクッと肩を震わせ、ビクビクとしている。それを見て弁慶女は、楽勝だと思ったのかニヤリとわらう。
そんな二人の間に立って、ルールを説明する。辞めと言われたら辞めること、顔や急所は狙わない、とかそのくらいだが。
「準備はいいですね?」
どう見ても準備がよろしく無い人がいるが、役人さんは無視だ。
「では、初め!」
「うおおおお!」
始まった瞬間に弁慶女が走り出し、距離を詰める。それほど動きが早い訳では無いが誰にも止められないような牛のような力強さと勢いがある。それを見て完全に戦意を喪失したのか青海という女性は顔を青くして後ずさるだけで動けない。
薙刀の先端を動きが止まった青海の横腹に叩きつけ横に吹っ飛ばしていく。身体が軽々と宙に浮くほどの威力だった。
「かはっ」
息が止まっただろう今の一撃は、それどころか骨も何本かいっているだろう。勝負は決まった。横に5メートルも吹っ飛ばされて、横腹を抑えてうずくまっている。息が出来ないし、内臓が衝撃で傷が付いているかもしれない、顔が青く吐き気もするのだろう。口をパクパクさせながら、唾液を口から出して苦しんでいる。
弁慶女は追撃はしないで、辞めがかかるのを待っている。そひて、数秒して辞めがかかる。
そんな青海をみて、3人の女性はゲラゲラと笑っている。あの3人は、見ているだけでイライラするな。あんな奴らの言いなりなんて大変だろう。
「………不快だな」
いつの間に隣に立っていたのかあの時のイケメンが隣で眉間に皺を寄せて呟く。
「……ッチ」
何処からか舌打ちも聞こえた。誰だろうと思って見てみるとオレンジ頭で、不快な顔をしている。あいつもイラついているんだろうか。
骨が折れていても妖力があればすぐに傷が治る。だからこそこんな危険な試合などができる。だが、そうやって意識する事も出来ない位苦しそうだ。弁慶女がのそのそと歩いていき、声をかけている。少しして落ち着いたのか、傷を治す様に集中しだす。
ノロノロとゆっくりと直しているので女性の役人が神経質そうに急かす。
「次の試合があるのでそろそろ離れてください」
「なんだい?別にいいじゃないか。傷を治す時間位くれても。もう少しまちな」
弁慶女、普通に親切なおばさんだった。絶対見た目で損しているだろうな。怖いし。
「あと、さっきからうるさいよ!ピーピー言ってんじゃない!黙りな!」
その弁慶女の怒声に、笑っていた女達が押し黙る。ビリビリ来るくらい大声で言われた方はびびるな。本当に初心者かよ、あのおばさん。
「ふん!立てるね?あんな奴らとつるまない方がいいよ。ビシッと言わないと何処までも付け上がるからね」
「は、はい。いや、あの、と、友達で、す。でも、ありがとうございます」
ペコリも頭を下げて、フラフラしながら中央から離れる。役人さんがそれを確認して次の番号を言う。
「次は17番と34番!前に出て下さい!」
お、呼ばれたな。さてさて、何人倒せるかな?自分は悪くても上位には入れる位の力はあるだろう。少し強い位の少し前まで村人だった人には負けはしない。武器の扱い方もよく分かっていないだろう。直家もそれほどではないが使ったことがない人よりは遥かによい。
自信ありげに木製の槍を担いで中央に出ていく。相手も相手も出てきた。男だ。農作業で鍛えて、開拓者を目指すくらいだから体格も直家より1回りくらい立派で筋骨隆々の若いお兄さんだ身長も高い。見た目だけ見ると直家よりもこの時点でもう強そうだが、木刀を慣れない様子で振り回しているのを見ると武器を持った経験が無さそうだ。
それを見て直家がニヤリとする。妖力量はこの1年間で正勝様と稽古していた直家が多いが同じくらいだろうし、独学では妖力をうまく操れなく妖力をあまり纏えないはずだ。それに、単純な力比べならば負けるかもしれないが模擬戦である。相手は対人戦をやった事が無いであろう。これならば充分勝てる、と直家は思っていた。
「では準備いいですね?いきますよ、初め!」
今回は持久戦ではなく一気に決めようと距離を走って詰めようとするが、先に相手が動き出して突貫してきた。かなり速い、それならばと待ち構える事にする。相手は木刀で直家は槍だリーチが違う。槍で近づけさせないようにして相手を叩いていけばいいだろう。
「オリァ!」
「………」
これ以上近づいて来ないように牽制の意味を込めた突きを放ち、相手が突き出された槍を焦った様子もなく木刀で槍を下に弾く。ここまでは予想済みだ。槍を軽く弾かれても柄の部分で殴れば良い。そう思っていた。あまりに強烈な衝撃が手に伝わるまでは。
「…えっ」
それほど強く弾かれたようにしか見えなかった。しかし、結果は違う。妖力を最大限纏い身体能力が強化されている直家が、槍と一緒に身体ごと前傾してしまうほどの威力だった。油断しているわけではなかった。多少の驕りはあったとしても力を緩めたりだとかは一切していない。それでも致命的なまで体勢を崩されたのだ。
「…ふん!」
槍を弾いた返す刀で木刀を直家の横腹に凄まじい勢いで叩きつけようとする。ギリギリ何とか槍を引き戻し縦に構え横腹をガードすることが出来たが、まるで大きい車がぶつかったような衝撃が直家の身体を大きく吹っ飛ばす。
「……ぐっあぁぁ!」
10m近くは飛んだであろう。地面についても衝撃を殺しきれなかったのか少し地面に引きずられるように身体が移動する。頭から地面にぶつからなかったのが救いなのか何とか意識を保っているが、今のは一撃で持っていかれるほどの威力だった。正勝様との稽古でもこれ程飛ぶことは無かった。
相手はすぐに追撃に出ることなくのそのそと歩いてくる。最早勝ちを確信した顔だ。事実それはもう揺るがないだろう。地面に擦り付けられ服が土まみれで顔から血を流している。ゆっくりと移動してくる当たり初心者そのもので、畳み掛けれるうちに畳み掛けないと駄目なのだがそれをしない。だが、直家もその間に妖力で身体を回復させないといけないのにそれをやらない。やる事を忘れていた。直家の顔は絶望に塗られていたのだ。
「……な、んで」
何故これほど相手が強いのか。この相手だけが強いのか?多分違う、皆がこれと同じ位の力は持っているだろう。妖力を最大限纏っても熊を相手している様な程の差を感じる。それほど妖力量に差があるのか?纏える妖力が相手の方が多い?でも独学でやって来た人達があれだけ制御が難しかった妖力を操れる?慌ててできる最大の妖力を目に集中させて相手の妖気を詳しく見てみる。
「うそ、だろ」
ここ最近のようやくある程度見れるようになった妖気を見てみる。直家よりも妖力量は倍以上多く、妖力も直家より上手く操っている。いや、操っているというか勝手に動いている?自分で動かしているような不自然な動きではなく、身体が必要なところに自動で動いているような感じだ。1年しか稽古をやらなかったとはいえ強者との闘争は一番効率の良い成長方だ。なので、直家は正勝様の村では、平均以上の力を持っている。それこそ、戦い慣れない村人を率いて戦える位には。
しかし、ここに集まって来た開拓者を志す者達は違う。最早、生き物が違うと言ってもいいほど体格と才能に恵まれた人達だ。理解する、直家が苦労して覚えた技術は苦労する必要が無いくらい自然に呼吸するように使える人達なのだ。ここに来て初めて理解する。前に言っていた正勝様と成近姉さんの才能が無いという言葉を。これから、こういった人達と競って行かなければならない事実を。
絶望する。何人倒せるかな?ではない、この中で一番弱い可能性すらありうる。凄まじい差だ。正勝様などは差が開きすぎて何がなんだかよく分からなかったが、これは近い分だけ差を実感する。追いつけるのであろうか?これで、初心者なのだろう?ならば他の人はもっと凄いのではないか。そんな環境でやって行けるのか?いま戦っているこの人でさえ死ぬかもしれない程の危険な職業だ。本当に、やって行けるのか?
「………ふぅ。関係ないか」
絶望に満ちた思考でグルグルと考えたがふとどうでも良くなる。正勝様はそんな俺をわかった上で頑張れと背を押してくれた。松五郎や成近姉さんもそんな俺を否定せずに色々教えてくれた。こんな才能が無い男に。ここまで差があるのは大変だが仕方ない。埋めていこう。やって行けるのか?ではない、やっていくのだ。
バッと槍を構えながら立ち上がる。動きが無かった直家が立ち上がったのを見て相手も5m位の所で止まる。血が流れて来て垂れるが、止めはかからない。最早治す事は出来ないので、傷は無視して更に限界まで妖力を纏うようにする。
負けるにしても、ただでは負けてはやらない。やるだけやってやる。まだまだ、稽古で言うと始まったばかりの感じだ。ダメージはデカイけど。
「止め!」
そうして止めが入ったのは直家が立ち上がってから約5分後だ。手も足も出なかっし、技術とかでどうにかなる相手では無かったが、あれ以降1度も膝を付かずに今も血塗れで立っている。
負けたが、意地の勝利だ。息も絶え絶えの様子だがどことなく達成感のある顔をしている。相手の凄まじい衝撃の攻撃を捌き受け止め続け、他の人も早く止めた方がいいのではないかと言うくらい滅多打ちにされたが耐えきった。流石にこれ以上はと思って止めをかけたのであろう。
対戦相手は勝利したがとくに何も言わずに元に戻っていく。それを見て直家も血を垂れ流しながら戻る。戻ったらすぐに妖力を使って傷を直す。これで、もうほとんど妖力を使い切った。
と、そんな直家に細身のイケメンとオレンジ頭が近寄ってくる。
「あぁ、随分無様だなぁ。そんなんで、開拓者になるのかよ。すぐ死ぬぞォ?すぐに村に帰ったらどうだ?」
凄まじくイラつく嫌らしい笑顔でこちらを挑発してくる。こちらは頭に血がある程度物理的に抜けていてあまり怒りたくは無いが、こいつだけは別だ。
「あぁ!オレンチビがうるせぇよ!話しかけてくるな!」
「オレンチビって何だかよく分からねぇが、最後チビって言ってるって事は馬鹿にしてやがるな!?いいぜお望みなら、トドメをさしてやるぜ!」
互いに胸ぐらを掴み合い額がぶつかるほど近くによりながら、睨み合う。それを見て、イケメン男が苦笑いしながら。
「おいおい、君はそんな事を出来る怪我じゃないだろう?君も挑発しないで」
「っけ」
「ふん」
お互いムスッとした顔でそっぽを向く。それを見てまた苦笑いする。
「しかし、良く耐えてたね。ある程度実力差があると皆降参するのに。でも、何で開拓者になろうとしたんだい?」
「あぁ、話すと長いからなんて言えばいいかわからないけど……、記憶喪失で文字どころか常識すら怪しいんだよ、俺は。それで、開拓者になるのであれば支援してくれる人がいたので開拓者になったんだよ」
まぁ、間違っていない。正勝様の狙いはここで手に入る情報だ。丁度いい人材がいたから使ったくらいだろうけど。しかし、オブラートに包んで喋っているけど才能が無いのに何で開拓者やろうとしたのと聞いている。失礼な事は分かっているのだろうと思うのだが、何故そんな事を聞いたのだろうか。
「へぇ、大変だね。いや、すまないねこんな事を聞いて。君と彼、他の開拓者達とは少し違う感じで少し気になってね」
「てめぇも、人の事言えねぇだろうが」
他の人とは違う=背が低いという意味に捉えたのだろうか?少し不機嫌に返す。
「……それもそうだね。僕も少し違うね。人の事は言えないな」
「人にばっかり聞いていないで、テメェはどうなんだ?」
「そういう君も教えてくれなかったじゃないか……。まぁ、隠すことも無いか。僕はね一応武士の家系の人間なんだ。だけど、血縁が遠いから武士の身分を得るためには力を見せないといけないんだ。誰も僕に稽古なんて付けてくれないから自分で強くなる為にここに来たんだ。いつか武士になりたいからね。野心家だろう?僕は」
そう言って少し笑う。驚いた、武士の家系の人なんだ。凄いな。ちゃんと目標を持って来ているんだな。そんな、話をしていると試合が進んでいたのだろう35番が呼ばれた。直家の次の番号だ。
「お!俺だ。いいかぁ、テメェ見てぇな無様は見せねぇぜ俺は」
オレンジ頭も参加していたのだろう。腹が立つ一言を残し木刀を担いで中央に出ていく。
初心者開拓者達の試合はまだ終わらない。
正勝様は直家と稽古する時はわざと纏う妖力量を少なくして稽古してます。じゃないと、直家一瞬で死んじゃいます。




