初心者の開拓者達
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伊吉と分かれたあと、早速開拓者組合所の中に入った。外から見ても豪華なものは中も豪華なものなんだな。かなり広く階段もあるので2階もあるのだろう。建物の中に入ったら直ぐに1段高くなっていて草鞋を脱いで中に入る。まるで、旅館にあるような広い玄関口だ。皆が何かしら武器を持って厳つい奴らが多いことを除けば。
木の板が敷き詰められた床に上がり木がギィと音を立てる。玄関口の右側に襖が全部開いていて広い畳敷きの広間があるのがわかる。そこで初心者の開拓者達と思われる人達が集まっている。何か始まるのだろうか?
左側も畳敷きの広間だが、何か食事所のような雰囲気だ。ここには一般の人も多く、何かを食べている。そして中央の道を通って行く両左右に立て札が沢山立っていて色々と書いていた。そして一番奥に更に1段高くなっている所、畳敷きの中に更に座布団の様なものの上に座っている人達ががいた。屈強な男とかではなく、一言で言えばヒョロい役人の様な人達が座っている所に開拓者達が並んでいた。柳川家の役人の人かな?
「あの、すいません。あの人達は何しているんですか?」
「ん?この町に来たばかりか?あれはな、ここで開拓地の情報とかを聞いたり提供したりしているんだよ。あとは、他の村で受け取った小切手を換金するってのも出来る。今あそこでやっている奴はそれだな。金を受け取っている。あ、オメェはまず登録が必要だな!やってこい!」
「は、はい、ありがとうございます!」
ははは、いいよ!と笑いながら出口に戻っていく。気のいいオッサンだった。どことなく松五郎と似たような感じだったから、結構上位の開拓者なんだろう。
「というか、小切手なんてあるんだ」
なんか思ったより遥かに経済が発達しているんだなぁ。まぁ、ジャラジャラと沢山の金属を持ち歩くのは重いし嵩張るし、何より狙われやすいからな。でも、信用貨幣としてある程度こういったのが普及しているが金属貨幣から抜け出せないのは、まだまだ信用がないからなんだろうか?考えてもしょうがないが。後で知ったが柳川家のこの山城国が発行している国債もあるらしい。
「ええっと、まず俺がすべきは開拓者に登録する事か。あの列に並べばいいんだよな?」
一番空いている端っこのオッサンが座っている列に並び順番が来るのを待つ。ちなみに一番人気の中央の3人は可愛い女性が座っていた。少しの間並び前の人が終わったので直家の番になる。
「えっと、開拓者の登録をしたいのですが」
「開拓者の登録ね、じゃ名前と年齢、後は使っている武器と妖力量を少し測らせて貰うよ」
「は、はい。あ、あの文字が書けないので代筆を」
「あぁ、分かっているよ。かける奴なんて早々いないのだから。名前は…直家ね。はい次に年齢は…若いねぇ18歳と後は使っているのは背中に担いでいる槍でいいのね?…はい。後は…この紙を持って」
質問はテキパキと進み、最後は後ろの沢山ある小さい引き出し箱の中から人の形の様に切り取られた白い紙が渡された。
「で、持ったまま出来るなら妖力を纏わせてね。そっちの方正確に分かるから」
と言われたので全身に妖力が行き渡るようにして、妖力を纏う。全身が強化された感じがしたと同時に右手に持つ紙が茶色に薄く足の方だけ僅かに変色した。
「あの、こんな感じになりました」
「あー、はいはい。だいたい分かりました。ありがとうございます」
そう言って結果を手持ちの紙に書き始めた。何書いているかはよく分からないが何やら小さくバツのような物を書かれた気がする。その次に小さな四角の木の板に筆で情報を書き出し、何やら判子の様なもので判を押す。そしてその小さい木の板をこちらに差し出してくる。
「はい、終わりました。これは直家さんがここの登録者であることを証明する大事な証明書となります。無くさないでください。ただ、諦めて村に帰る時は返してくださいね。登録は取り消しとなりますが」
前に並んでいた人は同じく初心者で似たような説明をしていたが、最後に諦めて帰る時の事は話さなかった。どういう事なのだろうか?なぜ、自分にだけやめた時の仮定の話をするのか?最初から期待などされていないのだと言うのがわかって腹がたった。言ってやらねばならない、何故そのような事を言ったのか真意を聞かなければならない。というか有り体にいうと腹が立ったのでいい詰めてやろうと思った。眉を釣り上げ、眉間に皺を寄せてズイっと前へでて抗議しようとする。
「何故俺にだけそのようなことを………………」
「てめぇ!何でそんな事を俺だけに言うんだよ!あぁ!コラァ!言ってみろよぉ!なんでだァ!あぁん!」
今まさに言おうとした瞬間に隣の列から言おうとした似たような事を言っている奴がいた。胸ぐらを掴まれた気の弱そうな役人は顔面が真っ青になってえっと、その、とか言いながら目線を逸らしていた。
「あぁ!コラァ!俺の目を見て言えよコラァ!なんでだって聞いているんだよ!答えろ!」
誰だと思ったらここに来る時に見たオレンジ色の髪をした背の低い男だった。顔はあの時はよく見えなかったが勝気な顔で反抗心が強そうなタイプに見えた。それが凄い剣幕で怒鳴っている。多分直家と同じことを言われたのであろう。
あの時は背の低いとか、馬鹿にはしたが凄く気の強い奴だ。仮にもこの国の役人達にあれだけの剣幕で怒れるというのは凄い。直家も文句は言おうとはしたがあそこまでやる気は無かった。というか、アレを見て言う気が失せた。俺を担当したやつがこちらを申し訳なさそうな目で見てくるので言わなくても分かっているだろう。
「おい、チビ!何やってんだ!やめろ!」
「あぁ!誰がチビだコラァ!ぶっ殺してやる!」
「あぁ!誰に口聞いてやがる、ヒヨッコが!表出ろ!潰してやるよ!」
「上等だよ!コラァ!やってやるよ」
「あ、あの。すいません。大丈夫ですので、町の中ではそういったことは辞めてください……」
「でもよぉ、こいつ完全に調子に乗ってるぜ?」
「あ?ビビってのか?あ?やるんだろ?コラ!」
「あー、すぐ終わる。5秒でいいから許してくれ。んだコラァチビが!調子に乗ってんじゃねぇぞオラァ!」
「ぐはぁっ」
その瞬間止めに入った開拓者が切れてオレンジ頭の腹にキツイのを1発入れた。それを喰らって口をパクパクさせて横に倒れて悶絶している。今のはヤバイ、あれはきつい。
「ふん。馬鹿な奴だ」
「……んだコラァ…誰が馬鹿だぁ」
「…しつけぇなぁ」
相手しているのがアホらしくなったのか開拓者の男が出口の方にオレンジ頭を置いて歩き出す。起き上がろうとオレンジ頭はするが起き上がれずに他の開拓者から邪魔だと言わんばかりに足で隅の方に蹴り飛ばされる。かなり憐れだ。
「おい、大丈夫か?」
思いがけずに声をかけてしまった。同じ事を言われた同士として少し親近感が湧いたというのもある。
「……んだよ。話し掛けて来んな。殺すぞ」
態度が悪いなぁ。これじゃあ手酷くやられても仕方がない気がする。というか、自業自得だろう。つか何でこんなに態度が悪いんだ?
「そう言うな、ほら立てよ」
まぁ、やられたばかりだから気が立っているんだろう。気にしないようにして、手を差し出す。
「……………」
差し出された手を見て、そのまま自力で立ち上がった。差し出した手だけが残る状況になった。
「…………」
「お前はいつまでそうしているんだ?馬鹿なのか?」
この野郎、人の優しさを無下にしやがって。なんて奴だ。こういう奴が地獄に堕ちるのであろうな!ふざけた野郎だ、伊吉がああゆう奴と一緒に組むのはやめた方がいいってのは本当だ!こいつなんか妖怪に殺られなくても、仲間から裏切られそうだ!これ以上関わらないようにしよう。だが、このまま下がるのも癪だ。こいつが一番嫌がる言葉を言ってやろう。
「………クソチビが」
「…あぁ!んだとコラァ!もっかい言ってみろオラァ!」
直家も頭に青筋を額に刻みながら暴言を吐く。それを聞いたオレンジ頭も頭に青筋を浮かばせ直家を睨みつける。
「ああ?なんて言ったんだ俺は?知らんなぁ?俺がなんて言ったか言ってみろよ?ほら」
「……テメェ、お望み通り殺してやろうかぁ?あぁ!」
さっきあれほど目立っていたオレンジ色の男がまた騒ぎ出したので周りがざわつき初めてまた目立っていた。そんな、直家とオレンジ頭を見ていたベテラン開拓者っぽい感じの人形に何人か一触即発の直家達を止めにかかる。
「おいおい、またお前か!いい加減にしろや!うるせぇんだよ、ここで騒ぎを起こすな!あとお前!お前も挑発すんな!別れろ!」
「あんまりここで騒ぎを起こすと登録消されるぞ」
そこまで言われたらもう何も出来ない。直家とオレンジ頭は互いに睨み合い(とはいえかなり身長差があるから直家が見下ろしている形になるのだが)状態から同時に、ふん!互いに腕を組んで顔を逸らす。それで争いが収まったと思ったのか止めに来た人たちが離れていく。
「……っけ、すこーし身体がでかいからって調子に乗りやがって。短足の癖によ」
「…………………」
こいつは言ってはいけないことを言いやがった。直家の逆鱗にナイフを突き刺したと同義だ。これを言われたからにはもう戦争しかない。戦争だ!上等だよ!チビが!調子に乗るな!
と、心の中では熱く煮えたぎって入る。たが、必死に殴りかかるのを抑えて拳を握り締めている。身体がプルプル震えているのを見てオレンジ頭はここが弱点だとわかったのかニヤリと嫌らしく笑う。
「たーんーそーくぅー」
周りに聞こえないように、直家だけに聞こえるように猫なで声で囁くように言う。
「…………………この野郎……」
もうダメだ。ああ、もうダメだ。こいつは泣くまで殴らないと気が済まない。切れた、切れちまったよ俺は。
「ぶっ殺してやる!」
「上等だ!コラァ!」
「またか!いい加減にしろや!!本当に登録消えるぞ!」
直家がファイティングポーズのような物を構えているオレンジ頭に襲いかかる。また騒ぎを起こした直家達を見て他の開拓者が本気で怒ったように直家とオレンジ頭の胸ぐらを掴み両方を持ち上げる。しかし、それでも空中で互いに殴あっている。
「いい加減にしろって言ってんだろ!」
それを見てプチっと切れた開拓者が掴んだ直家とオレンジ頭を互いをぶつけて黙らせる。
「がふっ」
「だぁっ」
流石の衝撃で互いに頭を抑え悶絶する。
「次は、頭が本当に潰れるまでぶつけるぞ」
クソッ、アホらしくなってきた。何で俺がこんな目に遭うんだ?オレンジ頭に話しかけたのがいけないのか?クソ!疫病神のようなやつだ。熱くならないようにしよう、もう無視だ無視!
痛む頭を抑えてフラフラとオレンジ頭から離れて行く。オレンジ頭も同じく馬鹿らしくなったのか何も言わない。これで、本当に解決したと思ったのか止めに入った男は列に戻っていく。
「クソ!最悪だ!初日からこれかよ。てか、次どうするのか聞いてなかった…」
登録をしたけど何処がどのような所かどのような妖怪がいるか、そういった情報を得るためにここまで来たのにこれじゃあダメだな。そう言えば、畳敷きの広間に人が集まっていたな、そこに行ってみるか。
そう決めて、来た廊下に戻る為に歩いていく。しかし、その道筋に同じ事を思ったのかオレンジ頭の奴も歩いている。鉢合わせは嫌だがアイツがいるので俺が待つというのも癪だ。そのまま早足で進む。
「………………」
「………………」
早足で歩いている直家に気が付いたのか無言で互いに無視をしようとしている。これ以上騒ぎを起こせない事はお互い分かっている。なので早足で歩いて追い越そうとする。速度を早め追い越そうとするとオレンジ頭の方も早足になり今度は直家を追い越そうとする。
「……………………っ」
「……………………っ」
無言だ。目も合わせない。しかし思っていることは同じなのだろう。互いが一歩も引かず早足で歩いていき、ほぼ同時に互いが走り出した。互いに言わなくてもゴールは分かっている。あの大広間に先に入った者が勝者だ。何の勝者かは分からないが、この二人からしたら大事な男を掛けた勝負になった。
「…………っ!」
「…………っ!」
長い廊下だ。大体30メートルくらいあるだろう。もはや互いに全力疾走だ。短足で足が襲い直家と、小さいので相対的に足も短いオレンジ頭とのかけっこ勝負。足の速さはほぼ同じだ。直家は、負けそうになると妖力を纏って走る。しかし、相手も同じく妖力を纏って走る。男の意地がかかっている2人は負けられないのだ。
互いに譲らず肩をぶつけ合い、ほぼ同時にゴールに着く。走って部屋に入ってくる直家とオレンジ頭に周りがギョとする。あんまり関わりたくないと思われたのか周りに人がいなくなる。
そんな状態になっている事に気づかずに互いにまた睨みあっている。
「………俺の勝ちだ」
「………てめぇはどこに目ぇついてんだ?俺の勝ちだろ?」
いや、俺だ。違う俺だと、互いに言い合い譲らない。少しづつ剣呑な雰囲気になり、額をぶつけ合って睨み合う。
「えっと、少しいいか?君達はここでも騒ぎを起こすと本当に登録消されるかもしれないよ。さっき役人達が話していたんだ。ここでは大人しくした方がいいよ」
それは困る。何のためにここまで頑張ってきたのか。こんな事で全部無駄になってたまるか。パッとオレンジ頭から離れる。オレンジ頭の方も消されるのは困るのか大人しくするように決めたらしいムスッとした顔で黙っている。それからようやく周りを冷静に見渡す事ができた。大広間に集待っているのは30人ほどいて、半分くらいが女の人だ。本当に女の人が多いんだな…。しかも皆、それぞれ武器を持っている。いかにも強そうな女の人も入れば全然争い事をするように見えない人も多い。たいして、男はほとんどが筋骨隆々の若い人が多い。直家やオレンジ頭、話し掛けて仲裁した細身の男がどちらかと言うと珍しい方だ。
「あ、さっきはありがとうございました。登録を消されるところでしたよ」
「いやいや、大したことじゃないよ。ここで騒ぎを起こされても困るからね。気をつけなよ」
よく止めた男を観察してみる。珍しい男で現代風の薄い茶色の髪の毛で、優しい感じのイケメンで細マッチョだ。成近姉さんのお兄さんと似たような人だ。武器は腰に刀と背中に槍を担いでいる。両方使えるのかな?というか、一つ用意するだけでも大変なお金なのに凄いな。どんな人なんだろうか?まぁ、わざわざこんな面倒な事に首を突っ込もうとして解決しようとするいい人なんだろうけど。
「はい、気を付けます。それで、ここは何の集まりなんですか?見たところ初心者の集まりのようですけど」
「なんだ、知らないで来たんだ?ここはね、週に1度に初心者の開拓者限定の後ろの鍛錬場で試合をするんだよ。それで自分の実力を知って自分に会う人と組むんだ。最初のうちは皆1人じゃなんにも出来ないからね」
「そんなのあるんですか!?え?今から始まるの?」
「あぁ、そうだねそろそろ始まるはずだよ。というか、聞いていなかったのか?役人の人が説明をしていたろう?」
「そんなの聞いてないよ」
その時の事を思い出して、ムスッとする。騒ぎが起こったから聞けなかっただけかもしれないが。
しかし実力を測るのか。いいかもしれない、自分がどの位置にいるか測ってみたかった。
「もし、参加したいのであれば早く行ったほうがいいよ。もうすぐに、募集を締め切るだろうから」
「ありがとう!行ってくるよ。あそこだよね?本当に助かったよ」
女性の役人が立っていて紙に色々書いている。その人に参加をする旨を言い、開拓者を示す木板をみせる。ちなみにいつもは着物の胸元にポケットを縫ってもらいそこに仕舞っている。
参加する事を了承してもらい。34番と言う番号を覚えて置いてくださいと言われる。トーナメント方式のような感じでやるのかな?よく分からないがそれで番号を呼ばれるらしい。
少しして募集を締め切ったのか第1回戦が始まるらしく、裏の鍛錬場に広間にいた人達が移動し始める。
直家は、この1年本当に地獄のような毎日を送っていたのである。強よそうな人は沢山入るが誰もあれだけの事はしていないだろうと思い自信ありげに笑う。自信が無かった直家に積み重ねた事実が強い自信を与える。確かに直家程の事をやっていた人はここにはいない。自分がそうそう負けるはずが無いと、この時はそう思っていた。
だが、ここで直家は生まれ持った才能がいかに大きいかという事を知ることになる。
感想とブクマと評価をお願いします。
大事な事なので2回言いました。




