試合2
感想よろしくお願いします。
長めの木刀を担いで中央に出ていくオレンジ頭。結構余裕そうだ。もしかしてあいつは結構強いのだろうか?小さいが。
「さて、彼はどの位持つのかな?」
「え?あいつ強い訳じゃないの?」
「君はあの時の相手の妖気を見やすくする術を知っているだろう?それで見てみて分かるから」
何で知ってんだ?と思ったが試合の時に使った。でも、よく分かるな。いや分かるもんなのか?なんか怖いな。そんな、少し引いたような視線に気が付いたのか弁明してくる。
「僕は元々妖気を見ることが得意なんだよ。それにさっき君がやった妖気を見やすくする術を出来るだけ常時やるように心がけているんだよ」
なるほど、だから分かったと。しかし、目が良すぎだろ何処に妖力を集中したのかすら分かるのかよ。すげぇな。
まぁ、とりあえず今は言われた通りオレンジ頭を見てみる。
「……あれ?…あいつ俺とあんまり変わらない…?」
「そうだね。正確に言うと彼の方が少ないね。妖力もそれほど纏える訳じゃないし。彼も開拓者には向いているとは言えないよ」
「じゃあ何であいつさっき、あんな事を言ったんだ?」
「さぁ?見てみれば分かるんじゃないかな」
あれだけの啖呵を直家に切って見せたのだ、何か勝機があるのだろう。直家としては勝ってきてほらどうだ?という顔を見せられのが嫌で負けて欲しいと思いながら見ていたが。
オレンジ頭が中央に出ていく。相手は直家が戦った人よりは小柄な人だがそれでも直家よりは大きい。オレンジ頭と比較すると子供と大人位の差がある。体格も相手の方が遥かに立派で、妖力量も見てみたが直家と試合した人と同じ位だ。相手も木刀でどことなく軽薄そうな人だ。単純に考えるとオレンジ頭が勝てる可能性はほぼ皆無と言っていい。熊と人間位の差があるのだ。
しかし、オレンジ頭の表情は変わらない。勝てるのだと信じて疑わない顔をしている。相手はそんなオレンジ頭を見て少し警戒している。妖力量は多い初心者開拓者達だが、独学なので限界があり、直家や、イケメン男の様に妖気を見る術を会得している人は少ない。素の状態では遥かに直家より妖気を見る事ができるが。流石に妖力量を測ったりをなんだりは無理だ。という事で、相手はオレンジ頭がどのくらいの力量にあるのか分からない。
「では準備はいいですね?いきます、はじめ!」
オレンジ頭が先に動いた。初めと言われた瞬間に木刀を大段上に振り上げてそのまま突貫する。弁慶女の様な勢いや力強さは無く動きが早いわけでわない。相手はそんなオレンジ頭に警戒をして動きはしない。
待ちの姿勢で槍を構える。リーチを活かし突貫の勢いを殺そうとしたのだろう。槍の射程圏内に入り突きだそうとした瞬間にオレンジ頭が横に大きくそれた。あれだけ全力で走っていたの勢いをそのまま横に行く力に転用したのである。身体が小さいから出来る身軽な動きだ。どうやら、妖力も脚に集中的に纏い最大限速く動ける様にしている。身体が小さいからこそ頭を使って工夫し、最大限身体を使いこなせる様になったのだろう。オレンジ頭は嫌いだが、直家もこれには感心した。
「なっ!」
これには相手も驚いたのであろう。かなり力を入れて突きだしたのであろう空振りして動作が少し遅れた。その間に勢いを保ったまま、槍の内側に入りがら空きの肩に大段上に振り上げた木刀を振り下ろした。しかも今度は上半身にも妖力を纏わせながら。ニヤリと笑い勝ちを確信したような顔をする。
「オラァ!」
「ぐっ!」
かなり大きな音が打撃音がした。今のは効いたであろうが。
「でも、あんまり効いてない?」
「そうだね。少し弱いね」
あれだけ完璧に入った攻撃も相手の動きを止める事は出来ない。熊と人間なのだ。多少の打ち身ぐらいでは戦闘中の痛みを感じににくい状態の相手はまだまだ動ける。そのまま持ち直し、槍の柄でオレンジ頭のいる方に横に薙ぎ払う。それは、オレンジ頭の横腹に直撃かなり吹っ飛ばされる。
「なんだよ。強い奴に当たってついてないなと思ったけどお前弱いんだな。ビビって損したぜ。じゃ、今度はこっちからいくぞ?」
空中に投げ飛ばされて一瞬意識が飛ばされたように見えたがすぐに立て直し、足から着地する。流石に顔には余裕の表情はもう見えなくなっている。相手に実力を知られ今度はオレンジ頭が攻勢にかけられる番だ。まともに正面から打ち合っていれば勝てるわけが無い。
「ッチ!クソが!あてが外れた」
しかし、オレンジ頭は悪態をつきながらも木刀を大段上にまた振りあげる。
「あれは通用しなかったのに何でやるんだ、あいつは?」
「彼は身体が小さいからね、守勢になったらすぐにやられてしまう。だから攻め続けるしかない、という判断なんじゃないんだろうかな?」
なるほど、それしかない訳か。何となく彼の性格も影響しているような気がするが確かに理にかなっている。彼には動き続け攻め続けるしか最初から方法が無いのだ。流石に全力の攻撃が全く通じないというのは予想外だったようだが。
今度は相手が走ってオレンジ頭に突っ込んでくる。まだまだダメージの抜けきらないオレンジ頭は無理やり少ない妖力を回復に回し回復させる。そのまま、オレンジ頭も動き出す。
「っ!めんどくせぇやつだな!」
「うるせぇよ!」
しかし、今度は相手に真っ直ぐ行くのではなくジグザグに動き回りながら相手と距離を離したり近づいたりしながら撹乱する。相手はその動きに惑わされて動きが止まる。オレンジ頭の掴みどころのない意表をつくような動きに翻弄されて足踏みしている。フェイントが凄く上手いのだ。だが、地力が違うのかスピードでは相手の方が遥かに早い。なので、少しづつ慣れて来てタイミングを見て攻撃をしかける。
「くっ!」
その攻撃に待ってましたと言わんばかりカウンターを綺麗に入れる。そしてすぐに離脱して反撃を食らわないようにする。見事なヒットアンドアウェイ戦法だ。問題は攻撃が大して効いていないという事だが。
「クソッたれが!これだから丈夫な奴は嫌なんだ!」
なかなか倒れない相手に悪態をつきながら相手の攻撃を完璧に見切りまた懐に入る。
「……凄いな…」
直家はオレンジ頭の事は嫌いだ。だが。彼がいかに沢山の努力をしてあれだけの技術を身につけたかは想像出来なくはない。しかも、彼には多分直家と同じで才能なんてものは無かっただろうし、体格にも恵まれなかった。それでも、あれだけの能力差がありながら互角に戦えている事が凄まじい事なのだ。さっきの試合での才能の差には正直絶望した。これ程の違いがあるのかと。彼も同じ事を思っていたはずである。それでもなお、やり通す根性は素直に認めた。認めざるおえまい。
妖力を部分的に集中させて纏う工夫、瞬時に相手の意表をつくような機転、チャンスが来たら迷わずに危険な所に飛びこむ事が出来る胆力、そして何より守りを捨てた攻撃一辺倒の闘い方。全てが直家にはないものであるのだから。
「でも、そろそろ彼も限界のようだね。あの動きを続けるのは負担が大きいからね」
確かに少しづつ動きに精彩を欠いて行くのがわかる。相手もあのオレンジ頭の動きにも慣れてきたのか攻撃をするタイミングがあって来た。
「ぐっ!」
今相手の攻撃を避けきれずに少しかすった。かすっただけでも身体が少し浮くくらいの衝撃だ。完全に体勢が崩れた。相手が反撃に出る。
「オラァ!ちょこまかと動きやがって!」
「ぐっあっ!」
動きが止まったオレンジ頭に槍を腹に突きだす。穂先には白く丸い布を巻いてあり貫きはしないが衝撃で身体がくの字に折れ曲がり浮く。今度は身体を吹き飛ばさないような力でやったのだろう。離れてしまうと捉えづらくなる。そのまま連撃だ。更に腹に一撃、横腹に一撃、石突で逆の横腹を一撃。今までの鬱憤を晴らすかのようにオレンジ頭にとって致命的な一撃を入れていく。完全に意識が吹っ飛び膝から崩れ落ちそうになる。
相手はそこで攻撃を止めて勝ちを確信し、役人の人も止めをかけようとする。
「…………!…まだ終われるかぁ!」
しかし、そこで飛んでいた意識が戻り勝ちを確信し武器を下ろした敵に木刀を振りあげる。その木刀の切っ先は綺麗に油断していた相手の顎に入りそのまま連撃に移ろうとしたら。相手が倒れる。
「止め!止め!」
それでも頭に血が上り相手に攻撃を仕掛けようとするオレンジ頭を止め。試合を終わらせる。
「うぉぉ!勝ったぞ!勝ったぞ!俺の勝ちだ!」
相手が倒れていて、オレンジ頭が立っている。この状態はどう見てもオレンジ頭の勝ちに見える。
「いえ、あなたの負けです」
「へ?どういう事だよ!倒れてんのあっちだぞ!」
「私最初になんて言いましたか?」
「……知るかよ」
「はぁ、頭部への攻撃の禁止。そう言いました。私の目には思いっきり顎に当たっていた様にみえましたが」
「……そんなのあったのか?」
「ありました。あなたの負けです。大人しく戻って下さい」
嬉しそうな顔から一転、不機嫌そうな顔になりこちらに戻ってくる。その時直家の顔を見て少し気分を持ち直した様な顔をする。
「あいつよりましか……」
「どういう意味だ?」
確かに直家よりは見れた闘いであった。前半に関しては互角以上の戦いを繰り広げていたのだから悪くはないだろう。しかし、それを認める訳にはいかない。実力の程は認めたが負けは負けだ。
「テメェも同じ負けだよ。そう大差無いだろ」
「ハァ?ふざけんなよテメェの変態見てぇな闘い方よりかはいいに決まってんだろうが」
変態?マゾヒストと言いたいのだろうか。痛みに必死に耐えた俺に大して変態呼ばわりとはこの野郎……やっぱり嫌いだ。
「んだとぉ!この野郎」
「あ?やんのか?いいぞすぐに終わらせてやるよ、顎に一発入れてな!」
「だから喧嘩するなっていってるのに。やめないか。せっかく惜しい試合だったのだから」
「お、ほらこいつもそう言っている。お前とは見る目が違うんだよ!」
「別にお世辞を言わなくてもいいんですよ?こんな時くらいは素直に喋ってください」
「いい加減にしないと本当に消されてしまうよ。役人さんが騒ぐ君たちを見ているよ。こういってはなんだけど君達はあんまり期待されていないんだ。他の迷惑になるならってやられるよ」
「……………」
「……………」
そう脅されては何も言えない。しかし、そんな事を忠告してくるイケメンの目的は何なんだ?お節介が過ぎる気がするが。
「僕としては君たちにこのままいなくなられると困るからね。まぁ、端的に言うと興味が湧いたんだ。君達の名前を教えてくれないかな?」
どういう興味かは知らないが名前くらいいいだろう。
「ああ、俺は直家って言う」
「……猿吉だ」
「直家に猿吉ね。そのまま呼んでいいかな?あ、僕の名前を言うのを失念していたね。僕は長貴と言うんだ。好きに呼んでくれていい」
「んで、長貴さんよぉ。興味があるってどういう事だ?」
「ああ、僕達で組まないかという事だよ」
「……どうして俺たちなんだ?見ただろ俺達が負けるのを。俺達より強いのは沢山いるだろうに」
「そうだね。君達が負けるのを確かに見たよ。実力も周りに比べて不足している事も知っている。しかしね、君達が攻撃を受け続けても立っていられる頑丈さと根性、意表を突く動きや攻撃をやり続ける胆力も見たんだよ。君たちとならやって行けると思ったんだよ」
「……それだけじゃねぇだろ?」
「………鋭いね。そうだね。それだけじゃない。嘘は言っていないよ。でも本当の理由はね、僕が武士になりたいと言ったでしよ?武士ってのは強いだけじゃないんだ。確かな教養と人を指揮する能力も必要になってくるんだよ。だから僕はここで人を上手くあやつる事も出来なきゃ行けない。今までそんな経験はもちろん無いから経験しないといけないんだ」
「長ったらしいなぁ。つまりどういう事なんだ?」
「申し訳ない。長ったらしく喋るのが悪い癖でね。要は君達と狩りの組を作りたいのと、それのリーダーになりたい」
「つまりそれは、この3人で組むってことか?」
「そうだね。何人か増やしても良いけど、とりあえずはこれでやらないか?」
うーん、どうだろう。リーダーなんて直家は出来ないし猿吉もあまり得意ではなさそうだ。それはあんまりリーダーうんぬんかんぬんで文句を言わないことでもわかる。しかし…
「こいつと組むの?」
「こいつと組むのかよ」
お互いが同じタイミングで同じことを言う。それを聞いて長貴は笑いながら
「相性いいじゃないか。タイミングも被るし。いいと思うよ?」
「けっ!冗談じゃねえ。それにそれを抜きにしてもまだ認めたわけじゃねぇぞ。テメェがリーダーになるってんのも、俺より強かったらの話だ。勝って来たら話を聞いてやる」
何様なんだようかと思わないでもないが、それでも言っていることはその通りだ。当たり前だが、俺達より弱い奴にリーダーはやらせたくない。
「それもそうだね。僕の実力も見て判断してくれ。あんまり強い訳じゃ無いが認められるように頑張るよ」




