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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第1章 若き召喚士、伝説の入り口に立つ(いきなりやらかしすぎです)
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第8話 王様に2人と500匹謁見

 王都セレナの王宮。


 普段なら、冒険者であるフロウベルが立ち入ることなどない場所。


「……ここが王宮ですか」


 フロウベルが目の前にそびえる巨大な建物を見上げる。


「そうだよね…」


 隣にいるリンナの声も、王宮の大きさに圧倒されて小さくなる。


「私も王宮なんて来たことないからね…」


「なんだか緊張しますね」


 フロウベルが少しだけ肩に力を入れる。


「王様に会うんですよ?緊張しないんですか?」


「まあ、それはそうだけど……」


 リンナが後ろを見る。


 そこには――。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぞろぞろ。


 ぷるぷる。


 五百匹のスライム。


「……」


「どうしました?」


「あれを見るとね…緊張感も薄れちゃう。むしろ…」


 リンナがため息をつく。


「王様に会うっていうのに、なんでこの子たちは普通についてきてるのかなって」


「私の召喚獣ですから」


 何言ってんだ、こいつ。


 そんな目でリンナを見るフロウベル。


「そうだけどさ……」


「それに、置いていくわけにもいきませんし」


「……まあ、そうだよね」


 リンナは諦めたように前を向いた。


「行こうか」


「はい」


     ◆


 王宮の中。


 長い廊下を、二人と五百匹のスライムが進んでいく。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぞろぞろ。


 ぷるぷる。


 すれ違う兵士や侍女たちが、驚いた顔で振り返る。


「……」


「……」


「……」


 誰も何も言わない。


 ただ、視線だけが五百匹のスライムについていく。


「やっぱり目立ってるね」


 リンナが小声で言う。


 フロウベルも少し疑問を持ち、案内してくれてる兵士に声をかける


「普通にあの子たち連れてきちゃいましたけど、大丈夫ですか?」


 兵士が振り向き、


「国王陛下から、そのまま連れてくるように言われてますので、大丈夫です」


「そうですか。」


 そんな会話をしているうちに、一行は大きな扉の前へ到着した。


「こちらです」


 案内役の兵士が告げる。


「この先が謁見の間になります」


「ありがとうございます」


 フロウベルが頭を下げる。


 兵士が扉を開く。


 ギィィィ……。


 広い謁見の間。


 その奥には玉座。


 そこに、一人の男が座っている。


 アルヴェリア王国国王。


 その隣には宰相。


 そして、数人の貴族たち。


 さらに――。


 見覚えのない女性が一人。いや、正確にはどこかで会った気がする感じがある。


 長い髪。


 整った顔立ち。


 凛とした佇まい。


 王宮魔術師団長、ミレイア。


「……」


 フロウベルが一瞬だけミレイアを見る。


「……?」


 ミレイアもフロウベルを見る。


 だが、フロウベルはすぐに前を向いた。


 今は王様との謁見である。


 片膝をつき、頭を下げる。


「フロウベル」


 国王が声をかける。


「はい」


 フロウベルは、頭をさげたまま、


「本日はお招きいただき、ありがとうございます。


 また、私の召喚獣に配慮いただき誠に有難うございます。」


 横で同じような姿勢をとっているリンナは、『こういうところは真面目だね…』と苦笑する。


「うむ」


 国王が頷く。


「楽にしてよい」


「はい」


 フロウベルが姿勢を戻す。


 その後ろには――。


 五百匹のスライム。


 ぷるん。


 ぷるぷる。


 ぷるっ。


「……」


 国王がスライムを見る。


 そしてフロウベルを見る。


「報告は聞いている」


「はい」


「王立魔法研究所で、大規模な召喚実験を行ったそうだな」


「はい」


「そして、その結果――」


 国王が少し間を置く。


「五百匹のスライムが召喚された」


「……はい」


「それについて、聞きたいことがある」


「何でしょう?」


 フロウベルが首を傾げる。


 国王は穏やかな口調で尋ねた。


「そなたは、いったい何を召喚しようとしていたのだ?」


「……」


 フロウベルの表情が少し変わった。


『やっぱ、それ、聞きますか』心でつぶやき、


「ゴーレムです」


「ゴーレム?」


「はい」


 ミレイアが反応する。


「ゴーレムを召喚しようとしていたのですか?」


 ミレイアが疑問に思うのももっともである。


 ゴーレムの召喚は、召喚士にとっては、初歩的な魔法である。


「そうです」


 迷いなくフロウベルは頷く。


「私は、小さい頃からずっと同じ夢を見るんです」


 謁見の間が静かになる。


「夢?」


「はい」


 フロウベルは少し考えるように視線を落とした。


「とても大きなゴーレムです」


「どれほどの大きさなのだ?」


 宰相が尋ねる。


「……分かりません」


「分からない?」


「夢ですから」


 フロウベルが苦笑する。


「でも、とても大きいです」


「特徴は?」


 今度はミレイアが尋ねた。


 その声には、魔術師としての興味が滲んでいる。


「たくさんの色と光をまとった巨大なゴーレムです」


「色と光?巨大?」


「はい」


 フロウベルが頷く。


 幼い頃に見た夢を思い出す。


 巨大な姿。


 遠くからでも分かるほどの存在感。


 色とりどりの光。


 そして――。


 なぜか、怖くはなかった。


「……ずっと、私を見守ってくれているような感じがするんです」


 ミレイアが黙ってフロウベルを見る。


「私は、あれを、あのゴーレムを召喚してみたいんです!」


 国王も、宰相も、貴族たちも静かに聞いている。


「それが、私が召喚士になった理由です」


「なるほど……」


 宰相が呟く。


「それで、大型召喚実験を?」


「はい」


「そして、五百匹のスライムが出てきた」


「……はい」


 フロウベルが少し俯く。


「…完全に失敗です」


「……」


 ミレイアが五百匹のスライムを見る。


「ですが――」


 ミレイアが口を開く。


「五百匹を召喚し、すべてを制御している」


「……」


「それほどの召喚術を使えるのであれば、あなたの召喚術は失敗とは言い切れないのでは?」


「いえ」


 フロウベルは首を横に振った。


「ゴーレムが出てきていませんから」


「……なるほど」


 ミレイアは少しだけ笑った。


「目的が明確なのですね」


「はい」


 フロウベルが力強く頷く。


「いつか必ず、召喚してみせます」


 その言葉には、迷いがなかった。


「……」


 国王は、しばらくフロウベルを見つめていた。


 そして――。


「そうか」


 穏やかに笑う。


「ならば、余はその夢を応援しよう」


「え?」


 フロウベルが目を丸くする。


「召喚士として、己の目標を追い続けるのは悪いことではない」


「ありがとうございます!」


 フロウベルが嬉しそうに頭を下げる。


「ただし――」


 国王が続ける。


「五百匹のスライムについては、少々話を聞かせてもらいたい」


「はい?」


「どうやって、あれほどの数を制御している?」


「……」


 フロウベルが後ろを見る。


 五百匹のスライム。


 ぷるん。


 ぷるぷる。


「制御ですか?普通に指示を出しているだけですけど?」


「……」


 宰相が頭を抱えた。


「その『普通』が分からないのです」


「そうなんですか?」


「そうなんです」


 首を傾げるフロウベル。


「えーっと、『普通』召喚された召喚獣はどうやって制御されてるのですか?」


 質問するフロウベルに宰相やミレイア、貴族たちが心の中でツッコむ。


『そんなことも知らんで、召喚してるんかい!』


 リンナが小さく呟く。


「私も最初はそうだったよ……」


 ミレイアが微笑む。


「ぜひ、一度あなたの召喚術を詳しく見せてもらいたいものです」


「もちろんです!」


 フロウベルが答える。


「私も、もっと召喚術について勉強したいので」


「それなら――」


 ミレイアが言葉を続けようとした、その時。


 フロウベルが改めて彼女を見る。


「……」


 じーっ。


 ミレイアが首を傾げる。


「どうしました?」


「いえ……」


 フロウベルが少し考える。


「どこかで見たような気がして」


「そう?」


「……」


 フロウベルがミレイアを見る。


 そして――。


「…………」


 何かに気づいたような顔。


「どうしたの?」


 リンナが小声で聞く。


「いえ」


 フロウベルが小さく首を振る。


「なんでもありません」


「そう?」


「はい」


 今は王様との謁見中。


 余計なことを言うべきではない。


 そう判断したフロウベルだった。


     ◆


 謁見が終わり、フロウベルたちが王宮を出る。


「終わったね」


 リンナが息を吐く。


「はい…疲れました…はぁ…」


 フロウベルも、息を吐く。


「王様、いい人でしたね」


「うん。私もそう思う」


 フロウベルが歩きながら振り返る。


 その後ろには――。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぞろぞろ。


 ぷるぷる。


 五百匹のスライム。


「それにしても……」


 フロウベルが呟く。


「ゴーレムを召喚する方法、もっと勉強しないといけませんね」


「そうだね」


「次は絶対に成功させます」


「……」


 リンナが少しだけ笑う。


「頑張ってよ」


「はい!」


 フロウベルは王宮を振り返った。


 その奥には、まだ王宮がそびえている。


 そして――。


 彼女が幼い頃から見続けてきた夢。


 色とりどりの光を放つ、巨大なゴーレム。


 その正体を、フロウベル自身はまだ知らない。


 これから、突拍子もない出来事がフロウベルを中心に起こっていくことも――。


 まだ、誰も知らなかった。

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