↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第1章 若き召喚士、伝説の入り口に立つ(いきなりやらかしすぎです)
PR
7/54

第7話 王宮招集

 王都セレナ。


 王宮の一室。


 そこには、国王と宰相、そして数人の貴族が集まっていた。


 テーブルの上には、何枚もの報告書が並べられている。


「……五百匹、ですか」


 宰相が一枚の報告書を手に取り、改めて確認する。


「はい」


 答えたのは、王宮に仕える文官だった。


「王立魔法研究所で行われた大型召喚実験において、召喚された魔物は五百匹のスライムです」


「大型召喚実験で、スライム?」


 貴族の一人が眉をひそめる。


「しかも五百匹だと?」


「はい」


「……失敗ではないのか?」


 別の貴族が口を挟む。


「本来召喚される予定だったものとは、まったく違う魔物が出てきたのであれば、失敗と考えるのが普通でしょう」


「ところが――」


 宰相が報告書をめくる。


「その五百匹すべてが、召喚主であるフロウベルという少女の命令に従っているそうです」


「五百匹すべて?」


「はい」


「……」


 部屋が静かになる。


「それは……少々おかしくないか?」


「私もそう思います」


 宰相が頷く。


「通常、召喚した魔物を制御するには、それ相応の魔力と精神力が必要です。五百匹ともなれば、単純に数が多いというだけでは説明できません」


 そこで、それまで黙っていた女性が口を開いた。


「召喚術の常識から考えても、かなり異例ですね」


 宮廷魔術師団長――ミレイアだった。


「五百匹もの召喚獣を同時に維持し、なおかつ命令まで正確に伝えているのであれば、召喚魔法そのものにも興味があります」


「つまり、彼女にはそれだけの実力があると?」


「少なくとも、そう考えるべきでしょう」


 ミレイアは淡々と答える。


「本人がどう認識しているかは別として」


「本人?」


「報告によれば、本人は今回の召喚を『失敗』だと思っているそうです」


「……失敗?」


 貴族たちが顔を見合わせる。


「五百匹を召喚しておいて?」


「はい」


「五百匹すべてを従わせて?」


「はい」


「それで失敗だと?」


「そういうことになります」


 宰相が答える。


「……理解できん」


 貴族の一人が頭を抱えた。


 国王は、しばらく報告書を眺めていた。


「それで、その娘は今どうしている?」


「冒険者として活動を始めています」


「冒険者?」


「はい」


 宰相が別の報告書を取り出す。


「昨日、リーフェンへの救援物資の運搬依頼を受け、現地へ向かったとのことです」


「リーフェン……」


「そして、そこで――」


 宰相が報告書に目を落とす。


「救援物資の搬送だけでなく、町の復旧作業にも参加したそうです」


「その五百匹のスライムで?」


「その五百匹のスライムで」


「……」


 再び沈黙。


「瓦礫の撤去、木材の運搬、水の搬送などを行い、復旧作業に大きく貢献したとの報告です」


「スライムが土木作業を……?」


 貴族の一人が呟く。


「そのようです」


 ミレイアが報告書を覗き込む。


「興味深いですね」


「ミレイア殿は、あのスライムたちを危険だとは考えないのか?」


「現時点では、特に」


 ミレイアは即答した。


「少なくとも、リーフェンでの行動を見る限り、人々を襲うような様子はありません」


「しかし、五百匹だぞ?」


「五百匹だから危険、という判断も早計でしょう」


 ミレイアは静かに答える。


「問題なのは、五百匹を操る召喚士が何を考えているのか――そこではないでしょうか」


「……なるほど」


 国王が頷いた。


「その娘は、王都に戻ってきているのだな?」


「はい。すでにセレナへ戻っていると思われます」


「ならば――」


 国王が報告書を閉じる。


「本人から話を聞こう」


「よろしいのですか?」


 貴族の一人が尋ねる。


「何か問題でも?」


「いえ。ただ……」


 貴族が言葉を選ぶ。


「五百匹もの魔物を連れている者を、王宮へ招くことになります」


「それならばなおさらだ」


 国王は穏やかに笑った。


「危険かどうか分からないからこそ、直接話をするべきだろう」


 宰相も頷く。


「では、招集状を」


「頼む」


「承知しました」


「あと一つ…」


「なんだ、ミレイア」


国王がミレイアに尋ねる。


「いえ…彼女は、いったい何を召喚しようとしていたのでしょう?」


     ◆


 その頃。


 王都セレナ。冒険者ギルド。


「……はぁ」


 リンナが大きく息を吐いた。


「やっと帰ってきたな」


「そうですね」


 フロウベルが答える。


 二人の後ろには――。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぞろぞろ。


 ぷるぷる。


 五百匹のスライムがついてきている。


「王都に戻ってくると、やっぱり目立つね」


「そうですか?」


「そうだよ」


「でも、もう慣れました」


「私はまだ慣れてないよ」


「そうですか?」


「そうだよ」


 だんだん、受け応えが雑になってきているリンナ。


 そんな会話をしながら、二人がギルドへ入る。


「おかえりなさい、フロウベルさん」


 受付のイリアが笑顔で迎える。


「ただいま戻りました」


「リーフェンでの依頼、お疲れさまでした」


「はい。無事に終わりました」


「それはよかったです」


 イリアが微笑む。


 フロウベルも笑顔を返す。


「ところで――」


 イリアが一枚の封筒を取り出した。


「フロウベルさんに、お預かりしているものがあります」


「私に?」


「はい」


 封筒には、王家の紋章が刻まれている。


「……」


 フロウベルが固まる。


「……これ、なんですか?」


「王宮からの招集状です」


「……」


「……」


 リンナも固まる。


「……王宮?」


「はい」


 フロウベルが封筒を見る。


 そして、リンナを見る。


「私、何かしました?」


「……」


 リンナが無言で五百匹のスライムを指さす。


 ぷるん。


 ぷるぷる。


 ぷるっ。


「……心当たり、ありすぎるんじゃない?」


 フロウベルがスライムを見る。


「……この子たちですか?」


「たぶん」


「でも、私、悪いことしてませんよ?」


「それは私も分かってるけどさ……」


 リンナが顔を顰める。


「五百匹のスライムを引き連れて王都を歩いてる人が、王宮に呼ばれたんだよ?」


「……」


 フロウベルは少し考える。


「もしかして――」


「うん?」


「スライムが王宮に就職するんでしょうか?」


「なんでそうなるの!?」


 ギルド内に、リンナの声が響き渡った。


 五百匹のスライムが一斉に振り返る。


 ぷるっ。


「……」


 イリアが口元を押さえて笑っている。


「ふふっ……」


「イリアさんまで笑わないでください」


「すみません。でも……」


 イリアは封筒を見る。


「王宮からの正式な招集ですから、きちんと行ったほうがいいと思いますよ」


「……はぁ、分かりました」


 フロウベルは渋々封筒を受け取る。


「王宮……ですか」


 少しだけ緊張した表情になる。


「何を聞かれるんでしょう?」


「さあ……」


 リンナが苦笑する。


「でも、たぶん――」


 リンナは後ろを見る。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぞろぞろ。


 ぷるぷる。


「この子たちのことじゃないかな」


「……」


 フロウベルも振り返る。


「……でしょうね」


 五百匹のスライムが、何事もなかったようにぷるぷるしている。


「まあ、行ってみましょう」


「そうだね」


「王宮なんて、初めてです」


「私も付き添うよ」


「ありがとうございます」


 フロウベルが歩き出す。


 その後ろに――。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぞろぞろ。


 ぷるぷる。


 五百匹のスライム。


 王都セレナに戻ったばかりのフロウベルたちに、今度は王宮からの呼び出しがかかった。


 果たして、王宮で待っているものとは――。


 そして、五百匹のスライムについて、フロウベルは何を聞かれるのだろうか。


 本人だけは、まだ何も分かっていなかった。


「……あれ?」


 フロウベルが足を止める。


「この子たち、連れて行っていいんでしょうか?」


「…………」


 リンナが頭を抱えた。


「今さら!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。