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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第3章 伝説の召喚士、貴族に目をつけられる(目をつけ返しました)
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第11話 救出! ……あの娘だよ。履いてないの(フ) 指差さない!(リ) ……(顔真っ赤の娘)

「みんな、行きますよ!」


 フロウベルの声に、五百匹のスライムたちが一斉に動き出した。


 ぷるぷる、ぷるんっ!


 青い小さな塊が通路を埋め尽くし、魔物たちの足元へと押し寄せる。


「……なるほど!スライムたちいいわよ!」


 リンナが一瞬でスライムたちの意図を察し、魔物に近づく。


 スライムたちは魔物の攻撃を避けながら、足元にまとわりつく。何匹ものスライムに囲まれた魔物がバランスを崩し、隣の魔物へとぶつかった。


 その隙を、リンナは見逃さない。


「今だっ!」


 左右の剣が閃き、魔物の一体が倒れる。


 フロウベルも状況を見ながら、スライムたちに指示を飛ばしていた。


「右側に集まって! そっちは無理しないで、いったん下がって!」


 スライムたちは指示に応じ、まとわりつく相手を変えながら魔物の動きを妨害していく。


 魔物たちは、何が起きているのか理解できない様子だった。


 数匹なら大した脅威ではないスライムも、これだけの数が一斉に動けば話は別だ。


「な、何なんだ、こいつら!?」


 冒険者の男が叫んだ。


「召喚獣だから! 説明はあと! 今は自分たちを守って!」


 リンナが声を張り上げる。


 彼女は魔物の攻撃をかわし、女性冒険者たちへ迫る一体を斬り伏せた。


 その間にも、スライムたちは魔物の足元を塞ぎ、逃げ道を奪っていく。


 やがて、魔物たちの動きが乱れ始めた。


「よし、今です!」


 フロウベルの合図とともに、リンナが最後の一体へと踏み込む。


 鋭い一撃が決まり、魔物は床に倒れた。


 しばらくして、通路に静けさが戻る。


「……終わった?」


 女性冒険者の一人が、呆然と呟いた。


「はい。もう大丈夫です」


 フロウベルが答える。


 五百匹のスライムたちは、彼女の周囲に集まり、ぷるぷると揺れていた。


「……あんた、これ全部、自分の召喚獣なのか?」


 男が信じられないものを見るような目で尋ねる。


 ジロっと男を睨みつけるフロウベル。


 リンナも、


「助けてもらっといて、お礼も言わず、『あんた』呼ばわり?」


 さすがに、イライラしている。


「な!? だ、誰も助けてくれとは……」


「ほぉ? そういうこと言うわけだ。フロウベル、ほっといて帰ろう」


「そうですね。この人たちを救出しようが、しまいが見つけたことには変わりありませんし。」


 フロウベルも同意し、帰ろうとする。


 その時、女性4人が大声で、


「「「「ありがとうございました!私達を連れて帰ってください!」」」」


 同時にお辞儀する。リンナとフロウベルは、目を合わせて、にっこり彼女たちに微笑む。


「いいわよ。貴方たちは礼儀をわきまえてるようだし。」


『え、俺は?』みたいな顔をしている男は無視して、答えるリンナ。


「あと……リンナ、あの娘にあれ返してあげないと。」


「あれ?……あ!」


 スカートの端を持ち、中を見えないように隠している女性のところに行き、こっそり返す。


 女性は顔を真っ赤にして受け取り、物陰に隠れて履いている。


「変なこと聞くけど、なんで、あんなところに……」


 女性は顔を真っ赤にしながら、答える。


「ちょうど、用を足しているときに、魔物に襲われて逃げて……」


「あ、なるほどね。……なんで、誰も見張らなかったの?」


 ……なにか、沈黙が落ちる。やがて、一人の魔導士っぽい女性が声を上げる。


「そういえば、ここまでのドタバタで忘れてたけど、あの時、『俺が見張っててやるから大丈夫だ』ってあんた、そういって見張りを買って出たわよね」


「え、あ、そう……だったか?」


 目が泳いでる。さらに、シーフっぽいボーイッシュな女性が、


「あんた、覗いてたわね?それで対応が遅れたんでしょ!」


「な、なにを!だ、誰がそんなこと……」


 剣士っぽい女性がさらに追い打ちをかける。


「あんた、人が用たす時なんか、必ず見張りを買って出るわよね。」


「そ、それは、俺が男だから……」


「私たちも同じD級冒険者だけど?」


 とうとう言い訳できなくなった男。


「す、すみませんでしたぁ」


 きれいな土下座をして謝る男。


「こいつはこのまま置いて、さ、帰りましょう」


 リンナが促す。


「お、俺を置いて帰るのか?」


「あなたは一人で帰ってきなさい。」


 にべもなく、返事するリンナ。


「お、俺も一緒に……」


「あなたがいると、私たちの身も危険に思えてくるのよ。」


 それまで、ただ、黙って見ていたフロウベルが、スライムたちへ、


「女性が嫌がることをしておいて、まだ自分のことしか考えていないんですか?」


 フロウベルの声から、いつもの明るさが消えた。


「あなたたち、服だけ溶かすことってできる?」


 なにか不穏なこと言った方思うと、スライムたちが行動し始める。


 男にスライムたちが取り付いて、服だけを溶かし始める。装備は溶かしてない。


「や、やめろ!おい、なにすんだ!!」


 スライムたちが拘束し、溶かしていき、あられもない姿になる男。


「ど、どおうすんだよ!人前に出られねぇじゃねぇか!」


「ああっ!? 女性を恥ずかしい目に遭わせておいて、なんだその態度は!」


 ひさびさのぶちぎれモードのフロウベル。


「ここで、ひっそり殺されなかっただけでもマシと思えや!」


 フロウベルの豹変ぶりに、男は何も言い返せない。


 女性たちも固まって、フロウベルを凝視している。


 リンナだけが、もう慣れっこの様に平然とし、やはり男を睨みつけている。


「今回は、フロウベルの意見に同感ね。装備はあるみたいだから、自分で帰ってきなさい。」


「さぁ、皆さん帰りましょう!」


 また、笑顔に戻ったフロウベルに激しく首を縦に振り、ついていく女性陣。


「ま、待って……」


 そこまで言って、フロウベルに睨みつけられ委縮する男。


「スライムさんたち、悪いんだけど何匹か残って、私たちについてこないように、これ監視してて。」


 何匹かが男を囲み、監視を始めた。


「危害を加えるようだったら、装備から溶かしていっていいからね。」


 残ったスライムはぷるぷると、揺れフロウベルの指示に従う。


 そう言って、さっさと行ってしまうフロウベル達。


 こうして、男だけ取り残されていくのだった。


     ◇


 ひとまず安全を確保しながら進むフロウベルたち。


 女性四人の状態もカーバンクルで確認する。


 全員疲労は激しいが、幸い、命に関わるような傷はない。カーバンクルの癒しの力で回復させる。


「これで、歩けますか?」


 フロウベルが尋ねる。


「何とか……。本当にありがとうございます」


 シーフぽいの女性が頭を下げる。


「私は、ルーラン。職業はシーフ。で、こっちが……」


「魔導士のミルファですわ。」


「私はカオリ。剣士だ」


「わ、わたしはシェリルです。僧侶をしてます……」


 最後に下着忘れの女性が名前を告げる。


「わたしは、リンナ。で、この子はフロウベル」


「フロウベルでーす。召喚士ですよ!」


「リンナ……フロウベル……青と緑の髪……召喚士……」


「「「「ブルー&サファイア!」」」」


 四人が一斉に指差し通り名を叫ぶ。


「その通り名やめろ!!!」


 リンナも叫ぶ。既に王都じゃ知らないものはいない名物コンビである。


「でも、本当に助けてくれて、ありがとうございます。魔物からも、あの男からも」


 女性の一人が頭を下げる。最後の方は嫌悪感も混じる声だった。


「お礼は外に出てからでいいわ。今は無理せず、私たちについてきて」


 リンナはそう告げると、周囲を警戒した。


 フロウベルもスライムたちに指示を出す。


「みんな、帰り道も気をつけてね。何かあったらすぐに教えてください」


 ぷるっ!


 スライムたちは返事をするように揺れ、通路の先へと散っていった。


 こうして、フロウベルたちは四人の冒険者を連れ、迷宮の出口を目指すことになった。


     ◇


 帰り道でも何度か魔物と遭遇したが、今度は四人を守りながら進む必要がある。


 リンナが前方を警戒し、フロウベルはスライムたちに周囲を探索させる。


 危険な気配があれば立ち止まり、魔物を避けられる道があればそちらを選んだ。


 時間はかかったものの、大きな問題は起きなかった。


 やがて、迷宮の入口から差し込む光が見えてきた。


「……なんと無事にたどり着いたね」


 フロウベルが、ほっと息を吐く。


 四人は一人ずつ階段を上り、ようやく地上へと戻ってきた。


 ルーランが空を見上げ、深く息を吸い込む。


「帰ってこられた……」


 その声には、安堵と疲労が入り混じっていた。


「よかったですね」


 フロウベルは微笑んだ。


 足元では、スライムたちが元気よく跳ねている。


 だが、リンナはまだ気を緩めていなかった。


「とりあえずギルドに戻りましょう。報告も必要だし、詳しい話も聞かないと」


「そうですね」


 フロウベルたちは四人を伴い、冒険者ギルドへ向かった。


 ちなみに、残してきたスライムは、ダンジョンを出たころには何匹かはついてきていた。


     ◇


 ギルドに戻ると、四人の救出を知った職員たちが安堵の表情を浮かべたが、一人足りないことに気付く。


 行方不明者の捜索は、ギルドにとっても重大な案件だ。


 四人の無事は確認し、まずは休息と手当てが優先された。


 手当の最中、リンナとフロウベルは、ギルドマスターの執務室に呼ばれた。


「なんで、一名足りないんだ? もう、ダメだったのか?」


「「捨ててきました!」」


「はぁ!?なんだと!」


 リンナが事の経緯を説明する。最初は怒っていたギルドマスターだが、段々と渋い顔になり、


「言いたいことはわかった……だがな、こと人命救助で見捨てたとは……」


「野放しにしてたら、女性の被害者が増えます!」


 リンナが珍しくギルドマスターに逆らう。それだけ憤慨してる。


「……それとも、ギルドマスターはあの男をかばうんですか?」


 ゴゴゴゴ……後ろから般若かス〇ンドが現れそうな低い声でフロウベルが問う。


「い、いや、そういうわけじゃないが、身ぐるみ溶かして、捨ててくるのはどうかと思うぞ。」


 ギルドマスターのいう事は正論である。だが、その正論が通じないのがフロウベルである。


「なら、今から全てを溶かしてきて証拠隠滅でもしましょうかね……」


「すまん、怒りは鎮めてくれ。あれが戻ってきたら、女性たちに謝罪させ、それなりの罰を与えるから」


 さすがに実行しかねない勢いだったため、約束してしまったギルドマスター。


 そこへイリアが、女性たちを連れてきたことを告げに来た。


「マスター、女性たちの治療も終わったので、連れてきました……マスターどうしたんです、汗すごいですよ?」


「な、なんでもない。こちらに入れてもらってくれ。」


「……? わかりました。入ってください」


 先ほどの四人が入ってきた。全員席に座り、質問が始まった。


 まず、ギルドマスターが事情を尋ねた。


「それで、どうして六階層より下に進んだ?Dランクではさすがにきつい階層だぞ。」


 四人は顔を見合わせた。


 やがて、ルーランが代表して口を開く。


「……希少な素材が見つかったって、聞いたんです」


「希少な素材?」


「ええ。六階層より先でしか採れないもので、見つければかなりの報酬になるって」


 リンナは眉をひそめた。


「誰から聞いたの?」


「あいつが、街で会った男です。冒険者風の格好をしていて……名前は聞いていません」


「名前も知らない相手の話を信じたの?」


「あいつが、妙に有頂天になって、『一攫千金だぁ!』とか言って張り切りだして……」


「それで、あんた達も付いていったの?」


「……はい。 なんだかわからないけど、そうなんだろうと。」


 ルーランが申し訳なさそうに答えた。


「最初は半信半疑でした。でも、そいつは迷宮のことにも詳しそうで、ほかの冒険者も素材を探していると言っていたんです」


「それで、急いで潜ったってこと?」


「……そうです。あいつが『先を越されたくない』って騒いで」


 リンナはため息をついた。


 ここでギルドマスターが質問する。


「さっきから、出てくる『あいつ』って、見捨ててきたやつのことだよな?」


「……そうです。名前も口に出したくない!」


 相当、ルーラン含め、女性陣はおかんむりである。


「はぁ……。危険な場所に行くなら、情報の裏くらい取っておきなさいよ」


「返す言葉もありません……」


 ルーランは肩を落とした。ジョブがシーフなだけに情報や斥候として今回は失敗だった。


 フロウベルは少し考えてから尋ねる。


「その人、どんな特徴でしたか?」


「えっと……。普通の男でした。特に目立つところはなくて、服装もありふれた冒険者のものでした」


「どこのギルドに所属しているかは?」


「分かりません。聞いても、はぐらかされました」


 四人の証言は、どれも曖昧だった。


 名前も所属も分からない。


 ただ、迷宮の情報に詳しそうな男が、報酬の大きさを強調して深層へ向かうよう勧めた。


 それだけだった。


「……少し、気になりますね」


 フロウベルが呟く。


「きゅっ、主。この人たちを治療したとき、なんか変な魔法の痕跡があったよ。魅了系かな?」


 ここで、肩に乗っていたカーバンクルが爆弾発言である。


「……え? そんなものが?」


「きゅっ。もう弱まってるけどね」


「それ、もっと早く教えてくださいよ!」


「きゅっ? 聞かれなかったし……」


 興味なさげに答えるカーバンクル。大概にひどい。


「という事らしいです、ギルドマスター」


「はぁ……ある意味ギルドへ対しての敵対行為だな、その情報を流した奴は」


「敵対行為?」


 フロウベルが尋ねる。


「あぁ、冒険者に偽情報を掴ませ、魔法で誘導操作して危険にさらした」


「なるほど……でも、なんで、そんなことしたんでしょ?」


「そうね。でも、今の話だけじゃ何とも言えないわ」


 リンナも同意した。


 今の時点では、何も判断できない。


「ギルドマスター、似たような話を持ちかけられた冒険者が、ほかにもいるかもしれないから情報集めてよ」


「わかってる、イリア聞いていたな、冒険者に声かけとけ」


「わかりました」


 イリアはお辞儀して、執務室を出ていく。


 四人の冒険者は、改めて二人に頭を下げた。


「本当に、ありがとうございました」


「次からは、無茶しないこと。約束よ」


 リンナの言葉に、四人は揃って頷いた。


「で、残してきたやつは、どうするんだ?」


 フロウベルが、ギロッと睨みつけ、


「私たち、いえ、女性冒険者がどうにかしないといけないんですかね?」


 ブチ切れ10秒前である。


「わ、わかったよ。男の冒険者にちゃんと事情を説明して探しに行ってもらう」


 触らぬ神に祟りなしである。


 こうして、行方不明だった四人の救出は無事に終わった。


 後日談ではあるが、取り残されていた男は、5階層の岩陰に隠れて泣いていたところを発見された。


 数日間、よく生き延びたと捜索に向かった冒険者たちは驚いたが、男の話では、数匹のスライムがほんのちょこっとの食べ物を運んできて、魔物からも守ってくれていたとのこと。


 怒ってはいたが、やはり、死なれたら目覚めが悪かったので、最低限生き延びるだけのことはしてあげていたフロウベルだった。


 後は、彼らに深層行きを勧めたという男の正体は、いまだ分からないままだった。

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