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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第3章 伝説の召喚士、貴族に目をつけられる(目をつけ返しました)
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第10話 六階層の魔物の群れ 七階層みぃつけた!

 五階層から六階層へと続く階段を下りる。


 階段を抜けた先は、これまでの階層よりも薄暗かった。


 ただ、通路はちょっと広め。


 壁に埋め込まれた魔法灯の間隔が広くなり、石壁にも傷やひび割れが目立つ。


「うーん……この辺りから、少しずつ雰囲気が変わりますね」


「ダンジョンの研究は後にして。今は行方不明のパーティーを探すんでしょ?」


「分かってますよ、リンナ。ちょっと気になっただけです」


「その『ちょっと』で何時間も使いそうだから言ってるの!」


 リンナの言葉に、フロウベルは少しだけ頬を膨らませた。


 それから、足元に集まっていたスライムたちへと目を向ける。


「みんな、お願い。六階層も探索して、何か見つけたら教えてね。次の階段のところで合流しましょう」


 ぷるっ、ぷるぷるっ!


 スライムたちは元気よく跳ねると、通路の奥や分かれ道へと散っていった。


 ただし、何匹かはいつものようにフロウベルの足元に残っている。


「……あんた、本当に守られてるわね」


「えっ、私って守られる側なんですか?」


「そこに驚くの!?」


 そんなやり取りをしながら進んでいると、通路の先から複数の足音が聞こえてきた。


 現れたのは、数匹のゴブリンと、それよりも一回り大きな棍棒持ちの魔物だった。


「うわ、ゴブリン。あとホブゴブリンも混じってるのか!?」


 リンナが二本の剣を抜く。


「リンナ、お願いします!」


「はいはい。後ろは任せた!」


 リンナが駆け出し、先頭のゴブリンを斬り伏せる。


 だが、横から別のゴブリンが飛びかかり、さらに大柄な魔物が棍棒を振り上げた。


 リンナは身をひねって攻撃をかわしたものの、広い通路では魔物たちが横に広がり、一度に複数を相手にしなければならない。さすがのリンナも、すべての攻撃をさばくのは難しかった。


「フロウベル! そっち、何とかして!」


「はい! ……そうですね」


 フロウベルは魔物の群れを見て、ひとつの召喚術を思いついた。


「アラクネさん、お願いします!」


 足元に魔法陣が広がる。


 現れたのは、女性の上半身と蜘蛛の下半身を持つ魔物、アラクネだった。


 長い黒髪が揺れ、額の小さな角が魔法灯の光を受ける。


「……フロウベル。ここは、私の縄張りじゃないわよね?」


「はい。ダンジョンです」


「そう。で、あそこにいるのは?」


 アラクネが視線を向けた先では、リンナがゴブリンの攻撃をさばいていた。


「食料です。存分に食してください!」


 アラクネは魔物たちをじっと見つめた。


 そして、少しだけ首を傾げる。


「ゴブリンね。まずそうだけど……食べていいの?」


「はい。襲ってきた魔物ですから」


「あの子も?」


 リンナを指差している。


「だ、ダメです。リンナはやめてください!」


「……冗談よ。でも、あの子が一番おいしそうなんだけどね」


 戦いながら、悪寒が走るリンナ。ある意味危機だった。


「分かったわ」


 アラクネは蜘蛛の脚を動かし、魔物の群れへと向かっていった。


「ちょっと待って!? 今、食べるって言った!?」


 リンナの叫びを聞きながら、フロウベルが注意を促す。


「リンナ、大丈夫ですよ! でも、アラクネさん、食べ始めると夢中になるかもしれませんから」


「それ、先に言ってよ!」


 叫びながら、リンナがゴブリンを斬り倒す。


 リンナは迫ってきたゴブリンの一撃を剣で受け流し、その勢いを利用して相手の懐へと踏み込んだ。


 だが、背後から棍棒が振り下ろされる。


「ちょっ、こっちはこっちで忙しいんだけど!」


 身をひねってかわしたものの、体勢を立て直す前に別のゴブリンが迫ってくる。


 そのとき、魔物の足元を何かが横切った。


 アラクネの糸だった。


 足を絡め取られたゴブリンが転倒し、後続の魔物まで巻き込んで床に倒れ込む。


「……うわ。あれ、敵じゃなくてよかった」


 リンナは思わず呟いた。


 その間にも、アラクネは大柄な魔物を糸で絡め取り、身動きを封じていた。


 魔物が棍棒を振り回すが、糸は簡単には切れない。


「暴れないで。食べにくいでしょう?」


 アラクネは淡々と告げると、魔物を押さえ込んだ。


 バリバリ、ボリボリ……


 しばらく続く咀嚼音と魔物の絶叫。


 やがて、通路に響いていた魔物の叫び声も止んだ。


「……終わった?」


 リンナが剣を構えたまま、恐る恐る尋ねる。


「ええ。ごちそうさま」


 アラクネは満足そうに答えた。


「ごちそうさまって……」


 リンナは何か言いかけて、結局、口を閉じた。


 今は深く考えないことにしたらしい。


「アラクネさん、ありがとうございました」


「いいのよ。食事もできたし」


 アラクネは機嫌よく答えた。


 血で真っ赤にした口でにっこりとほほ笑む。


「それで、私はもう戻っていいの?」


「はい。助かりました」


「そう。じゃあ、またね」


 アラクネの姿が魔法陣に包まれ、消えていく。


 リンナはその場に立ち尽くしていた。


「……アラクネってすごいわね。絶対逆らわないわ」


「はい。私もあそこまですさまじいとは……」


「ええ、召喚して何なんですが、今度から使いどころもっと考えます」


 めずらしく反省するフロウベル。


 リンナは大きく息を吐く。


「はぁ……もういい。先に進みましょう」


「はい!」


 足元では、スライムたちがぷるぷると揺れていた。


 そのうちの一匹が、魔物の落とした棍棒に近づく。


 ぷにっ。


 触れたスライムは、何事もなかったかのようにフロウベルのもとへ戻ってきた。


「……今の、何?」


 リンナが目を細める。


「さあ?」


 フロウベルも首を傾げた。


 スライムは答える代わりに、ぷるんと揺れた。


「……まあ、いいわ。今は探索が先ね」


 二人は再び歩き始めた。


 やがて、探索に出ていたスライムたちも少しずつ戻ってくる。


 しかし、行方不明のパーティーにつながるような手がかりは見つからなかった。


「六階層でも見つからないか……」


 リンナが不安そうに呟く。


「七階層にいる可能性はあります。もう少し探しましょう」


「そうね。ここまで来たんだから、見つけないと」


 二人は階段を見つけ、スライムが全て戻ってきたのを確認し、七階層へと下りていった。


   ◇


 そこは、六階層よりもさらに暗く、壁の損傷も激しかった。


 通路は複雑に枝分かれし、遠くから何かを引きずるような音が聞こえてくる。


「……ここ、かなり危ない場所なんじゃない?」


「そうですね。慎重に進みましょう」


 フロウベルはスライムたちに目を向けた。


「みんな、周囲をよく見てね。何かあったら、すぐに教えてください」


 ぷるっ!


 スライムたちは散らばり、通路の先へと進んでいこうとした、次の瞬間、


 スライムたちが、一斉に同じ方向を向いた。


「……ん?」


 続いて、通路の奥から金属がぶつかる音と、魔物の唸り声が響いてきた。


 リンナが剣を握り直す。


「今の音……!」


「行ってみましょう」


 二人は音を立てないように、慎重に通路の角へと近づいた。


 そこから先を覗き込んだ瞬間、リンナの表情が変わった。


 複数の魔物に囲まれ、必死に抵抗している冒険者たちがいた。


 男が一人。女が四人。


 探していた五人組のパーティーに間違いない。


 全員が疲れ切っており、装備にも傷が目立つ。


 男は女性たちを守るように前に立っていたが、その動きは明らかに鈍っていた。


 ……一人の女性だけ、スカートの端を持って中を隠している。


「……見つけた。下着の持ち主」


 フロウベルが真面目に呟く。


「そうかもしれないけど、今はそこじゃない」


 リンナが小さく呟く。


 見つけたことに、喜んでいる余裕はなかった。


 魔物たちは冒険者たちを取り囲み、逃げ道を塞いでいる。


 このままでは、全員が危ない。


「フロウベル!」


「はい!」


 フロウベルは一歩前へ出て、スライムたちに向かって手を掲げた。


「みんな、行きますよ!」


 五百匹のスライムたちが、一斉にぷるんと揺れた。

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