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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第3章 伝説の召喚士、貴族に目をつけられる(目をつけ返しました)
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第9話 二階層から五階層までは順調ですね。

「……で、これをどうするのよ?」


 リンナは、手の中にある布切れを見つめていた。


「手がかりですよ?」


「いや、それは分かってるけど、どんな手掛かりよ?」


「では、大事に持っていきましょう」


「なんで私が!?」


 フロウベルは不思議そうに首を傾げた。


「だって、リンナが拾ったんですから」


「そういう問題じゃないでしょう!」


 ダンジョンの階段前に、リンナの声が響き渡る。


 結局、女性の下着らしき布切れは、リンナが持っていくことになった。


 誰のものなのか、いつ落ちたものなのか。今のところ、それ以上のことは分からない。


「……もういいよ。さっさと先へ進みましょう」


「はい!」


 こうして二人と五百匹のスライムたちは、二階層へと足を踏み入れた。


 ◆


 二階層も、一階層と同じように石造りの通路が続いていた。


 壁には魔法の明かりが設置されており、足元に困ることもない。


「やっぱり、自然にできた洞窟とは違いますね」


「また始まった……」


「この壁、どうやって加工しているんでしょう? 魔法で一気に作ったのか、それとも石を一つずつ積み上げたのか……」


「フロウベル、今はダンジョンの建築様式を調べに来たわけじゃないからね?」


「分かってます。失踪した冒険者の捜索です」


「本当に分かってる?」


 リンナが疑わしげな視線を向ける。


 ひとつ前の階層と同じ会話が続いている。


 そのとき、通路の奥から二匹の魔物が姿を現した。


 小柄な体に、粗末な武器。ゴブリンだった。


「またゴブリン? しかも二匹……。このダンジョン、もう少しバリエーションはないの?」


「ここにもいるんですね。では、私が――」


「はいはい、任せて!」


 フロウベルが召喚術を使おうとしたところで、リンナが前に出た。


 二本の剣が閃く。


 ゴブリンたちは抵抗する間もなく倒れ、あっという間に戦闘は終わった。


「おお、リンナが冒険者してる!」


「私は冒険者なんですけど!?」


「知ってますよ?」


「その反応が腹立つんだけど!」


 フロウベルは倒れたゴブリンを眺め、それからリンナを見た。


「やっぱり、リンナはお色気要員じゃなくて戦闘要員だったんですね」


「誰がお色気要員よ!!」


 再び、リンナの声が通路に響いた。


 その騒ぎの間にも、スライムたちはフロウベルの周囲をぷるぷると動き回っている。


「みんな、散開して2階層調べてきてくれる?」


 大半のスライムたちが散開し、調査に向かう。数匹はフロウベルの傍を離れない。


 一匹がゴブリンの武器に触れ、すぐにフロウベルのそばへ戻ってきた。


「……?」


 フロウベルは一瞬だけその動きを目で追ったが、特に何も言わなかった。


「フロウベル、スライムが戻るまでちょっと休憩しよう。」


「はーい」


 二人は、探索を続けるスライムたちを待つため、休憩に入った


 ◆


 三階層、四階層と進んでも、目立った異常は見つからなかった。


 魔物は現れるものの、リンナが対処できる範囲だ。通路にも大きな損傷はなく、冒険者たちが争ったような跡も見当たらない。


 スライムたちは相変わらずフロウベルの近くに集まっていた。


 ときどき何匹かが周囲を確かめるように動くものの、遠くまで散らばっていくことはない。


「……ねえ、フロウベル」


「はい?」


「この子たち、ずっとあなたのそばにいるわね」


「そうですね」


「もう少し広く探索してくれてもいいんじゃない?」


「うーん……」


 フロウベルは足元のスライムを見下ろした。


「みんな、私の近くが好きなんでしょうか?」


「それだけかなあ……」


 リンナは首を傾げた。


 スライムたちは、二人の会話を聞いているかのように、ぷるん、ぷるんと体を揺らしている。


「この子たちを連れてきた意味もなくなっちゃうし、みんな、各階層に入ったら一度散開して、隅々まで調査してきて。終わったら、次の階層の入り口で待ち合わせね」


 フロウベルの指示を受け、スライムたちは一斉に散開した。


「うちのスライム、何気に優秀ですね」


「そうね。でも、他の魔物に会わないのかしら?」


「ですよね。戻ってきた子たちを見る限り、何かあれば分かりそうですけど……」


「……まさか、魔物を溶かしてるんじゃないでしょうね?」


 リンナは想像してしまったのか、ぶるっと身を震わせた。豊かな胸も揺れる。


「もげればいいのに……」


 フロウベルがぼそりと呟いた。


「何が!?」


 リンナが即座に振り返った。


 残って傍にいるスライムもぷるぷる震える。


「この子たちは、なんで調査に行かないのでしょう?」


「あんたの護衛でしょ?」


「えっ、私って守られる側なんですか?」


「そこに驚くの!?」


 フロウベルは召喚士である。


 戦闘ができないわけではないが、本人の意識はどうにも召喚術の研究に偏りがちだった。


 リンナは小さくため息をつき、再び前を向いた。


「とにかく、今は捜索が先。五階層までに何も見つからなかったら、その先は慎重に進もう」


「分かりました!」


 返事だけは元気だった。


 ◆


 そして、二人は五階層へと到達した。


 ここまで来ると、さすがに魔物の数も強さも少しずつ増えてくる。


 それでも、リンナが警戒しながら進めば、対応できないほどではなかった。


「……ここまで、特に何もありませんね」


「そうね。あの五人、どこまで進んだんだろう」


 失踪した冒険者は五人組。男性一人に女性四人という構成だった。


「結局、あの布切れだけじゃ、何も分かりませんね」


「そうね。落とし主は困ってるだろうなぁ……」


 リンナは、手に持ったままの布切れを見て苦笑した。


 彼らが何を目的にダンジョンへ入ったのか。あるいは、誰かに何を吹き込まれたのか。詳しい事情は、まだ分かっていない


 だが、五階層まで来て何の痕跡もないとなると、すでにさらに奥へ進んでいる可能性もある。


「六階層から先は、普通の冒険者なら無理をしない場所よ。ここからは本当に気をつけないと」


「はい。……ところで、リンナ」


「なに?」


「もし、男性一人が女性四人にいいところを見せようとして、無茶をしたのだとしたら?」


「……ありそうなのが嫌ね」


「男はポイして、女性だけ助けましょうか?」


 フロウベルの毒を吐いた。


「でも、あんた、女性の胸が大きかったら、同じくポイしそうじゃない?」


「あ、そうですね。みんな、遺体で収容しましょう」


「手を下すのはやめなさい!」


 リンナは頭を抱えた。


 そのとき、足元のスライムたちが、ほぼ同時にぷるりと揺れた。


「……?」


 フロウベルは周囲を見回した。


 通路には、特に変わった様子はない。


「どうかしたの?」


「いえ……何でもないです」


 スライムたちは、すぐにいつものようにフロウベルの周囲へと戻った。


 ただの偶然かもしれない。


 今は、そう考えることにした。


 しばらく、待っているとスライムたちが次々と戻ってくる。特に遺留品などはなかったらしい。


「それじゃあ、六階層へ行きましょう」


「うん。でも、ここからは何が起きてもおかしくないからね」


「分かってます!」


 フロウベルは元気よく答えた。


 その後ろを、五百匹のスライムたちがぷるぷると続いていく。


 二人は、六階層へと続く階段を下りていった

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