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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第3章 伝説の召喚士、貴族に目をつけられる(目をつけ返しました)
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第7話 移動手段も召喚獣で!(蛇はちょっと……)

 王都を出て、ダンジョンへ向かう街道。


 フロウベルとリンナは、並んで歩いていた。


 フロウベルの肩にはカーバンクルのカーちゃん。


 足元には、いつものスライムたちがぷるぷるとついてきている。ひさしぶりの大行進。道行く人が振り返る。


「こうして二人で歩くのも、久しぶりですね」


 フロウベルが、のんびりとした声で言った。


「そうね。最近はシャンティさんも一緒だったからね」


「それに、王都ではミレイアさんやイリアさんとも話していましたしね。」


「……そうだったわね」


 リンナは、少しだけ遠い目をした。


「なんだか、いろいろあったわねぇ……」


「そうですね。ミレイアさんには……小言をいっぱい言われました……」


「宮廷魔術師団長だもの。優秀だし、落ち着いているし、私にとっては、頼りになるわ」


「それに、あのスタイル……」


「はい、出た」


 リンナは即座に反応した。


「……敵です」


「あんた、ミレイアさん、なんだかんだ慕ってたわよね?」


「それとこれとは別です!」


「何が別なのよ!!」


「存在そのものが!」


「存在!? 本人に聞かれたらどうするのよ!?」


「あの大きな……くっ……」


 今にも血の涙でも流しそうなフロウベル。


「そこまでなの!?」


「いつか、正々堂々と戦います!」


「何と戦う気なのよ!!」


 カーちゃんが、フロウベルの肩の上で小さく首をかしげた。


「きゅっ。主、勝てると思ってるの?」


「……カーちゃん?」


「きゅっ?」


「いつからいました?」


「最初からだよ!?」


「忘れてはいませんよ。ただ、会話に参加するとは思っていなくて」


「きゅっ。ボク、普通にお話できるんだけど……で、何で勝てると思ってるの? 全体の戦力差を考えてよ……」


 カーちゃんまでフロウベルの胸元に目を向け、ため息をついた。


「ほら! カーちゃんまで呆れてるじゃない!」


 リンナが声を上げる。


「ムキー! まだ、成長期なんです! きっと……」


 リンナは苦笑しながら尋ねた。


「イリアさんはどうなのよ?」


「あの姉妹は揃って敵ですよ?」


 リンナは呆れて、続く言葉が出なかった。


「イリアさんも、かなりの強敵です」


「受付嬢を何だと思ってるのよ!」


「優しくて、綺麗で、仕事もできて……」


「うん」


「しかも、あのスタイルです」


「そこに戻るな!!」


 フロウベルは、ふう、とため息をついた。


「リンナさんも、あちら側ですしね」


「何の陣営分けよ!?」


「青(貧乳)の陣営と、豊穣(豊胸)の陣営です」


「勝手に陣営を作るな!!」


 カーちゃんが、ふるふると揺れた。


「きゅっ。ボクは、どっちでもいいかな」


「カーちゃんは中立ですか?」


「きゅっ。どっちにも関わりたくないだけだよ」


「ひどくありませんか!? 私はあなたの主ですよ!」


「いや、今のはカーちゃんが正しいと思うわ……」


 リンナは、深々とため息をついた。


「じゃあ、シャンティさんは?」


話題を変えようとしたリンナだったが、フロウベルの顔がぱっと明るくなった。


「青(貧乳)の陣営ですよ!」


「即答!?」


「優しいですし、話も分かってくれますし、安心できます!」


「まあ、確かにね。あの人は頼りになるわよね」


「それに、胸部装甲的な意味で」


「台無しだぁぁぁ!!」


 カーちゃんが、ぴょこんと耳を動かした。


「きゅっ。主、シャンティさんに怒られるよ?」


「大丈夫です。シャンティさんは聞いてません」


「…………」


 リンナは、カーちゃんの頭をそっとなでた。


「カーちゃん、あなたって本当にいい子ね……」


「きゅっ。ありがとう」


「私も、カーちゃんを見習うべきかもしれないわ」


「リンナさんまで、何を言っているんですか!?」


「いや、あんたの言動を見てると、そう思うのよ……」


 しばらく歩いたところで、リンナは空を見上げた。


「……ところで、フロウベル」


「はい?」


「私、あんたも含めて、周りの女性陣に振り回されてる気がするんだけど」


「そうですか?」


「ミレイアさんには緊張するし、イリアさんには気を使うし、シャンティさんには逆らえないし……」


「リンナさんも大変ですね」


「誰のせいでこうなってると思ってるのよ!」


「でも、リンナさんがいてくれると安心します」


「……っ」


 リンナは、一瞬だけ言葉に詰まった。


「私一人だと、きっと色々と大変ですから」


「……まあ、あんた一人だと本当に大変でしょうね」


「はい!」


「そこは否定しなさいよ!!」


 フロウベルは、きょとんとした顔をした。


 リンナは、またため息をつく。


 けれど、その表情は少しだけ柔らかかった。


「……まったく。調子が狂うわね」


「何か言いましたか?」


「何でもないわよ!」


 そんなやり取りを続けながら、二人は街道を進んでいった。


 やがて、王都から十分に離れたところで、フロウベルが突然立ち止まった。


「あっ!」


「今度は何よ!?」


「楽ちんな、移動手段がありますよ!」


「楽ちんなって?」


「召喚獣に乗れば、もっと楽に移動できます!」


「ああ、そうだけど、移動用の召喚獣なんて契約しているの?グリちゃんとかワイちゃんは嫌よ?」


 リンナは少し考えた。


「以前契約していた、別の魔物です。」


 フロウベルは、得意げに胸を張った。


「では、召喚します!」


 足元に魔法陣が広がる。


 次の瞬間、地面を這うような大きな影が現れた。


「シャアァァァ……」


 現れたのは、巨大な蛇だった。


 長い胴体が地面を滑り、鎌首をもたげる。鱗が光を反射し、その口から鋭い牙がのぞいていた。


「…………」


 リンナは、固まった。

 

「ボアちゃん、ひっさしぶり♪」


 巨大な大蛇に手を振っているフロウベル。にこにこと説明を始める。


「この子は大蛇型の魔獣で、ボアちゃんって言います。正式名称はブラックポイズン・ボア。Aランクの魔物です。地面を滑るように進むので、移動速度もなかなかのものなんですよ。二人くらいなら余裕で乗せられます!」


 リンナはギギギッと音がしそうな動きで、フロウベルに顔を向けた。


「……帰ってもらって」


「え?」


「帰ってもらって!!」


「でも、便利ですよ?」


「便利かどうかの問題じゃないの!!」


大蛇が、リンナの方へゆっくりと顔を向けた。


「シャア……」


「こっちを見ないでぇぇぇ!!」


リンナは、フロウベルの後ろに隠れた。


「リンナさん、怖いんですか?」


「怖いに決まってるでしょうが!!」


「でも、この子、意外とかわいいですよ?」


「どこが!?」


 カーちゃんが、フロウベルの肩から大蛇を見た。


「きゅっ。相変わらずでかいなぁ。乗り心地いいのかなぁ」


「そういう問題じゃないわよ!!」


 リンナは、必死の形相でフロウベルに詰め寄った。


「お願いだから、別の子にして!」


「……仕方ありませんね」


 フロウベルは、大蛇の頭をなでた。


「ごめんなさい。また今度お願いしますね」


「シャア……」


 大蛇は、少し残念そうに魔法陣の中へ戻っていった。


「……怒ってなかった?」


 リンナが、おそるおそる尋ねる。


「大丈夫です。次は乗ってくれるかもしれませんよ、と伝えておきました」


「次もないわよ!!」


 フロウベルは、改めて別の魔法陣を展開した。


 今度現れたのは、大きな狐だった。


 ふさふさとした毛並み。大きな尻尾。九つに分かれている。穏やかな目。


 大狐はフロウベルに近づき、頭をすり寄せた。


「この子なら大丈夫です!この子は、Aランクの魔物で九尾狐。名前はク……おっといけない、これ以上は。名前はキュウちゃんです。」


「ちょっと、メタな発言があった気がするけど……あら、かわいい」


リンナの表情が、みるみる緩んだ。


「でしょう?」


「うん。これなら乗ってもいいわね」


「では、出発しましょう!」


 二人は大狐の背に乗った。思った以上に広く、毛並みも柔らかい。


 リンナは、そっと背中をなでた。


「……あったかい」


「乗り心地もいいでしょう?」


「うん。これなら楽ね」


 カーちゃんが、フロウベルの肩で小さく鳴いた。


「きゅっ。ボクも、そっちに乗りたいな」


「カーちゃんは私の肩ですよ?」


「きゅっ。知ってるよ……」


「何か不満でも?」


「きゅっ。何でもないよ」


 リンナは、カーちゃんを見て苦笑した。


「……カーちゃんも苦労してるわね」


「きゅっ」


 大狐は、ゆっくりと歩き始めた。


 フロウベルは満足そうにうなずく。


「やっぱり、歩くより楽ですね!」


「……最初からこれにすればよかったじゃない」


「そうですね!」


「そこは反省しなさいよ!!」


 二人の声が、街道に響く。


 こうして、ダンジョンへ向かう一行は、ようやく移動を再開したのだった。


 ――ただし、リンナはまだ知らない。

 

 フロウベルの『便利そう』という一言が、これから何度、自分の常識を裏切ることになるのかを。

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