第1話 召喚士の常識?(きっと、たった1名だけです。)
王都セレナ。
王宮での報告を終えたフロウベルとリンナは、冒険者ギルドへ向かっていた。
「……ようやく終わったわね」
「そうですね!」
「王様との謁見……平常運転だったわね……」
はぁっとため息つくリンナ。
「ええ、王様も宰相様もお優しい方ですから!」
「まあ、確かにそうだけど……」
リンナは、隣を歩くフロウベルを見た。
王様を前にしても、いつも通りのフロウベル。
緊張しないのはいいことなのかもしれないが、もう少し自分の立場を考えてほしい気もする。
「それで、フロウベル。これからどうするの?」
「あの、くそ貴族の事ですか?」
実は、まだ少し怒っているフロウベル。
自分が何かされたわけでもないのに、何か物騒なことをしそうな雰囲気である。
「違うわよ!あれは、ほっときなさい。王様が何かしてくれるから。」
本日、何度目かの溜息をついて、
「しばらく王都にいて、何かするのかってこと。」
「そうですね……。新しい召喚の研究したいですね。」
「召喚の研究?」
首を傾げるリンナ。歩きながら、召喚に関して話すフロウベル。
「ええ、実際にアラクネさんの例がありますが、たぶん、今まで召喚の対象って魔物って認識があったと思うんです。」
「ああ、そう言われれば、召喚に素人な私でもそう思ってるわね。」
「ですよね。でも、実際には魔族のアラクネさんも召喚できました。しかも魔物と同じ召喚契約ができます」
「そうね、確かにできたわね……」
ふと、リンナがある考えに達して叫ぶ。
「あんた、まさか!?」
「いえ、リンナさんが考えてるようなことはしませんよ。アラクネさんには知らなかったとはいえ、契約まで結んじゃったんですけど、もう、魔族や人に対しては行いません」
フロウベルの話を聞いて、ほっとするリンナ。
「……よかった。ちょっとは理性があったのね、フロウベル」
「ちょっとはとは、なんですか!私は理性の塊ですよ!」
「理性の塊が、思い付きで魔族を召喚対象にすんな!」
「……それはそれ、これはこれです。で、私、思ったんですよ」
「話し、そらしやがったな、で何を思ったんだ?」
リンナが呆れた顔をして、フロウベルに問う。
「召喚契約とテイムの違いって何だろうって?」
「……はぁ?」
「獣使いさんや、魔物使いさんたちのテイムと、召喚契約。今まで、皆さんは召喚について、こう考えていましたよね、召喚した相手を『帰還』させると、召喚契約そのものも解除されると思われていましたよね?」
「そうだな。テイムで、開放するのと同じようなイメージだったな」
「でも、私の召喚を見て、召喚契約されたものは、契約そのものを切らない限り、何度でも召喚されるってわかりましたよね」
「そうだな……」
「これって、テイムとあまり変わらないと思いません?」
「……そう思えてくるけど、私にはごめん、そこまで理解できない」
「胸ばっかりに栄養回すから、脳みそが腐るんですよ」
「誰が、腐ってるか!」
「まぁ、いいです。その辺、エルミドに行ったときにでも、シャンティさんと考えます」
「どうせ私じゃ、頼りになりませんよ」
リンナが拗ねる。フロウベルが不思議そうな顔をして、リンナを見る。
「そんなことはありませんよ?いつも、私を守ってくれてるじゃないですか」
リンナに向けてにこやかに笑うフロウベル。リンナそんなフロウベルを見て照れる。
「そ、そっかなぁ。で、召喚の研究はどうするんだ。」
「この王都には研究所もありますし、そこで、しばらく調べものして、エルミドに行きます」
「……休むという選択肢は?」
「休んでますよ?」
「いつ!?」
「今です!」
「歩いてるだけでしょうが!」
この調子では、ギルドに着くまでに何度ツッコミを入れることになるのだろう。
できれば、三回以内に収まってほしい。
……無理だろうが。
しばらく歩きながら、たわいもない事をしゃべる。
リンナふと、疑問に思った。
「ねえ。召喚って、相手が応じてくれないと成立しないんでしょう?」
「はい!」
「じゃあ、召喚したい相手が応じてくれなかったら?」
「諦めます!」
「……意外とあっさりしてるわね」
「だって、嫌がっている相手を無理に召喚することはできませんから」
フロウベルは、当然のことのように答えた。
「相手にも都合がありますし、召喚に応じるかどうかは相手が決めることです!」
「……そういうところは、ちゃんとしてるのよね」
「そういうところ?」
「なんでもないわ」
リンナは少しだけ笑った。
フロウベルは、召喚に関しては妙なところで真面目なのだ。
……妙なところで、というのが問題なのだが。
「でも、この辺が、テイムとの差なのかもしれませんね?」
「いや、私に聞かれても……ティムとの差?」
「ええ、基本ティムの場合、相手より有利な状況の時に使役できるじゃないですか」
「……そうね」
ティムは、相手より強い、または、相手が弱っているときに使役契約の魔法をかけると行える。
「召喚契約は、あくまでも相手の意思ですから」
「なるほどね……。アラクネは自分で了承してたし、ワイバーンも……まあ、選択肢はあれだったけど」
リンナは、フロウベルの肩に乗っているカーバンクルを指差した。
「じゃあ、カーちゃんは?」
「ベヒモスさんもカーちゃんも、『面白そうだから』だそうです!」
「……四大魔獣って、そんな理由でいいの?」
リンナは頭を抱えた。
「……でも、あれ、あのスライムたちはなんで、召喚に応じたの?」
「それが、一番分かんないんですよね!ゴーレムを召喚しようとしたのに500匹のスライムとか、はぁ失敗したのに……」
「意思疎通は?」
「なんなく、行動とかはわかるんですが、言葉の会話はないんですよ。ほんとになんなんでしょうか?」
「こっちが聞きたいわよ!」
今は20匹程度、残りは研究所にいると思われるが、ぷるぷると揺れながらついてきているスライム。
それを眺める二人。
「早く、ギルドに戻りましょ」
リンナが促す。
「そうしましょ……」
珍しく疲れたように答えるフロウベル。
「ああ、ギルドに帰っても、説明求められるんだろうなぁ」
リンナが泣き言を言っている。
「ですね、任せましたよ、頼りになるリンナさん」
「こういうときだけ、頼るなぁ!!」
二人はとぼとぼ、スライムはぷるぷると冒険者ギルドへ向かうのであった。




