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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第1章 若き召喚士、伝説の入り口に立つ(いきなりやらかしすぎです)
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第3話 冒険者ギルドとスライムの大群

王都の大通り。


 朝の街は、多くの人々で賑わっていた。


 商人が店を開き、冒険者たちがギルドへ向かい、街のあちこちから声が聞こえてくる。


 そんな中――。


「……」


 フロウベルは歩いていた。


 その後ろを。


「ぷるっ」


「ぷるぷる」


「ぷるん」


「ぷるっ!」


「ぷるぷるぷる」


 大量のスライムがついてくる。


 ぞろぞろ。


 ぞろぞろ。


 ぞろぞろ。


 通りを歩く人々が、次々と足を止めていく。


「……なんだ、あれ?」


「スライム?」


「いや、なんでこんなにいるんだ?」


「お、おい大丈夫なのか?あの数」


「誰か数えてる?」


「……数えたくない」


 当然である。


 誰だって、朝っぱらからスライムの数を数えたくなどない。


 フロウベルは、そんな周囲の視線を気にすることなく歩いていた。


「みんな、ちゃんとついてきてね」


「ぷるっ!」


 一斉に返事をするスライムたち。


「……よし」


 フロウベルは満足そうに頷いた。


 ちなみに。


 本人はこれが普通だと思っている。


 昨日まで研究所にいたため、まだ街中での異様さを理解していなかった。


 やがて――。


 大きな建物が見えてきた。


「久しぶりですね」


 冒険者ギルド。


 王都でも最大級のギルドである。


「よし」


 フロウベルは扉を開けた。


 ギィィィ……。


「おはようございます!」


「…………」


 ギルド内の空気が止まった。


 受付にいた冒険者たち。


 依頼書を眺めていた冒険者。


 談笑していた冒険者。


 酒を飲んでいた冒険者。


 全員の視線が、フロウベルへ向く。


 そして。


 その後ろへ。


「ぷるっ」


「ぷるぷる」


「ぷるん」


「…………」


 スライム。


 スライム。


 スライム。


 スライム。


 スライム。


 ぞろぞろぞろぞろ。


「…………」


「…………」


「…………」


 誰も、何も言わなかった。


 やがて。


「……なんだ、このスライムの大群は?」


「あいつ、またやりやがったか?」


 誰かが呟いた。


「さあ……?」


「新しい魔物討伐依頼?」


「いや、あれ全部召喚獣じゃないか?」


「まさか」


 ざわざわと騒ぎが広がる。


 フロウベルは首を傾げた。


「……?」


 そして受付へ向かう。


 そこには、一人の女性がいた。


 長い髪。


 整った顔立ち。


 柔らかな笑顔。


 落ち着いた雰囲気を持つ、二十代前半の女性。


 彼女の名は――イリア。二十三歳。


 冒険者ギルドの受付嬢である。


「おはようございます」


 イリアはいつものようにフロウベルに笑顔で挨拶した。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「依頼を受けに来ました」


 イリアは手元の書類を確認する。


「依頼をお探しですか?」


「はい。何か受けたいんですけど……」


 そこで。


 イリアが一度、フロウベルの後ろを見る。


「…………」


 もう一度見る。


「…………」


 さらに見る。


 見渡す。


「……あの」


「はい?」


「こちらのスライムたちは?」


「私の召喚獣です」


「そうでしたか」


 イリアはにっこり笑った。


「可愛らしいですね」


イリアの体の一部がプルッと揺れる。どことは言わない。


「…………」


 それを見て、フロウベルが固まる。


 綺麗。


 優しい。


 スタイルがいい。


 そして笑顔。


 で、プルッ。


 自分のスライムたちを見て、スライムたちプルッ。


(……スライム入れてないよね …相変わらず敵だわ)


 なぜかフロウベルの警戒レベルが一気に跳ね上がった。


「フロウベルさん?」


「い、いえ。何でもありません」


「そうですか?」


「はい」


 フロウベルは視線を逸らした。


 イリアは不思議そうに首を傾げる。


「それで……こちらの召喚獣は、何匹ほど?」


「…………」


 フロウベルは少し考えた。


「いっぱいです」


「いっぱい……」


 イリアの笑顔が少しだけ固まった。


 後ろを見る。


 大量のスライム。


「……なるほど」


 イリアは微笑んだ。


 ただし、目が笑っていなかった。


「少々、お待ちくださいね」


「はい」


 イリアは奥へ向かった。


 数分後。


「――ギルドマスターを呼んできました」


「え?」


 フロウベルが首を傾げた。


「どうしてですか?」


「念のためです」


 イリアは笑顔で答えた。


「念のためですか…」


 しばらくして。


 ギルドの奥から、地響きのような足音が聞こえてきた。


 ドス。


 ドス。


 ドス。


「……?」


 フロウベルが振り返る。


 現れたのは――。


 巨大な男だった。


 大柄な身体。


 ゴリゴリに鍛え上げられた筋肉。


 腕は丸太のように太く、身長も周囲の冒険者より頭一つどころではなく高い。


 いかにも強そうな男。


 冒険者ギルドのギルドマスターである。


 男はフロウベルを見る。


 そして。


 「オーガ!?」


 たいがいに失礼なフロウベル。


 「誰がだ!」


 その後ろを見る。


「…………」


 スライム。


「…………」


 さらに見る。


 スライム。


「…………」


 まだいる。


「…………」


 まだまだいる。


 男はしばらく黙っていた。


 そして。


「……嬢ちゃん」


「はい?」


「こいつら、全部お前の召喚獣か?」


「はい!」


 フロウベルは元気よく答えた。


「そうか」


 ギルドマスターは腕を組んだ。


「……で?」


「はい?」


「何しに来た?」


「冒険者として依頼を受けに来ました!」


「…………」


 ギルドマスターは目を閉じた。


 深く息を吸う。


「……そうか」


「その後ろの連中も、一緒に依頼へ行くのか?」


「後ろのって、『スライム?』ですか? もちろんです」


「…………なんか、微妙にニュアンスが違ってたような気がするが、まあいい。」


ギルドマスターはフロウベルを見つめながら思案する。


「…………」


「……何ですか?」


「いや」


「惚れないでくださいね。」


「誰がちんちくりんなお前なんかに惚れるか!?」


「ひっどーい!!抗議しますよ、抗議!」


そんなフロウベルの抗議を無視して


「で、もう一度聞く。お前さん、何がしたいんだ?」


 フロウベルは少し考えた。


「冒険です」


「…………」


 ギルドマスターの眉が、わずかに動いた。


「そうか」


「はい!」


「……まあ、いい」


 ギルドマスターは諦めたように言った。


「詳しい話を聞こう」


 そのとき。


「ねえ!」


 明るい声が飛んできた。


「何これ!?」


 一人の少女が、スライムの群れを指差している。


 腰には二本の剣。


 動きやすそうな冒険者装備。


 活発そうな雰囲気の少女だった。


「スライムがいっぱい!」


 少女は楽しそうに近づいてくる。


「こんなの初めて見た!」


 フロウベルは彼女を見る。


「…………」


 同年代くらい。


 明るい。


 冒険者。


 そして――。


 スタイルがいい。プルッと揺れる。何がとは言わない。


(……また!?)


 フロウベルの目が細くなった。


 少女は気にせず笑う。


「私、リンナ!」


 腰の双剣を軽く叩く。


「Cランクの冒険者だよ!」


「フロウベルです」


「よろしく!」


「よろしくお願いします」


 笑顔で握手を交わす。


 ただし――彼女の体の一部に対する警戒は、まったく解かれていなかった。


 リンナはフロウベルの後ろを見る。


「それで、このスライムたち……」


「私の召喚獣です」


「へえ!」


 リンナの目が輝いた。


「すごいじゃん!」


「……そうですか?」


「うん!」


 リンナは笑った。


「こんなにたくさんの召喚獣を連れてる召喚士、初めて見たよ!」


「…………」


 フロウベルは少し困った顔をする。


「でも、普通の『スライム?』ですよ?」


「いやいや」


 リンナは笑いながら首を振った。


「普通じゃないでしょ、これ」


「そうなんですか?」


「そうだよ!」


 その横で。


 イリアが小さく頷く。


「はい。普通ではありませんね」


 ギルドマスターも頷く。


「ああ」


 フロウベルは三人の顔を見る。


「……?」


 そして。


 自分の後ろを見る。


「ぷるっ」


「ぷるぷる」


「ぷるん」


 大量のスライム。


「…………」


 フロウベルは首を傾げた。


「まあ、いいです」


 そして笑う。


「とりあえず、何か依頼を受けたいです!」


 ギルドマスターは頭を抱えた。


 イリアは苦笑した。


 リンナは楽しそうに笑った。


 そして五百匹のスライムは――。


「ぷるっ!」


 元気よく鳴いた。


 こうして。


 フロウベルの冒険者としての新しい一日が始まった。

挿絵(By みてみん)

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