第13話 街へ帰還 .....街の名前知ってる?(フ) ……そういえば、知らない(リ)
森の異変は、ひとまず解決した。
アラクネとの交渉も終わり、狩猟場の範囲も決まった。
あとは王都へ戻り、今回の出来事を報告するだけである。
「それじゃあ、帰りましょう!」
フロウベルが元気よく言う。
「そうね」
シャンティが頷く。
「……やっと帰れる」
リンナは少し疲れた様子で肩を回した。
今回の森での探索は、当初の予定よりずいぶんと大事になってしまった。
魔物の異常発生を調査するだけのはずだったのに、魔力溜まりの原因を突き止め、魔族であるアラクネと交渉し、さらに新たな召喚獣まで増えてしまったのだから。
もっとも――。
「では、みんな。帰るよぉ!」
フロウベルが振り返る。
そこにいるのは、500匹のスライムたち。
「ぷるっ!」
「ぷるぷる!」
「ぷるん!」
スライムたちは元気よく体を揺らしている。
「……みんなは一緒に帰るからね?」
「ぷるっ!」
どうやら当然のことらしい。
今回一緒に行動していた召喚獣たちは、スライムたちを除き、すでに召喚を解除している。
「グリフォンも解除したのよね?」
「召喚解除しまたよ」
シャンティに答える。
「ワイバーンも?」
「同じく解除しました。今は、アラクネさんの狩猟場の手前で待機させています」
リンナに答える。
「アスタは?」
「そもそも、召喚してません……」
ちょっと考えて、
「やってみようかな……」
「やめなさい!やっても召喚に応じないわよ!」
シャンティが止める。
「……そうですか?案外強くなるって応じるかも」
「……あり得るから怖いわね」
「一応アラクネさんには、あのワイバーンだけは食べないでねってお願いはしときましたが……」
「が?」
シャンティが聞き返す。
「狩猟場に入らなかったら捕食しないって回答されました。こればっかりは、仕方ないですね」
「……」
もう、誰も何も言えない。管轄はフロウベルである。
「じゃあ、今度こそ帰りましょう……」
シャンティが疲れたように言葉を出す。
「ええ」
三人と500匹のスライムは、森を後にした。
カーバンクルは、いつものようにフロウベルの肩の上。
「きゅっ」
「カーちゃんも帰るよ!」
「きゅっ!」
こうして、一行は王都セレナへ向かって歩き始めた。
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帰り道は、行きよりもずっと静かだった。
行きは、何が待ち受けているのか分からなかった。
そして帰りは――ベヒモスもグリフォンも、ワイバーンもアラクネもいない。
一緒に歩いているのは、500匹のスライムだけだった。
その光景だけを見れば、いつもの旅と変わらない。
「……ねえ」
しばらく歩いたところで、リンナが口を開いた。
「何ですか?」
「今回のこと、ちゃんと報告するのよね?」
「と、思ったんですけどね……」
「ん、なんかある?」
「シャンティさんがずっと一緒だったんだから、必要ないかなぁと」
「……あ、そうだね。ギルドマスターだったわ」
リンナは前を行く、シャンティをみる。
「報告はしてもらうわよ。私との認識合わせのために。」
「「……げぇ。」」
シャンティのにべもない回答に、二人して嫌な顔をする。
「あなたたち、冒険者ギルド所属でしょ。報告までが仕事よ」
「「はーい」」
気のない声で返事する二人。
「いろいろと突き合わせしないと、ちょっとまずいから」
「わかりました」
そんな会話をしながら、三人は街への道を進んでいった。
ここで、フロウベルがあることに気づく。
「……あのぉ、シャンティさん。今更聞きづらいんですけど」
「なに?」
「あのですね、そのぉ……」
「なに、珍しく、『らしく』ない態度ね?」
「今、向かってるシャンティさんの街の名前ってなんですか?」
「……!? え、知らなかったの!」
「はい、恥ずかしながら……」
シャンティが呆れた顔で、フロウベルを見て、そのままリンナを見る。
リンナもそっぽを向く。
「あなた、護衛依頼受けてきたのよね。その時に聞かなかったの?」
「あまり遠くないって聞いて、それに、護衛依頼って聞いて舞い上がってました。たはは」
「で、リンナは今の今まで教えていないと?」
「わ、私だって、フロウベルが知らないとは思ってなかったんだよ!」
はぁっとため息をつきながら、フロウベルに教える。
「あの町は、交易都市エルミド。商人たちが集まる交易拠点なのよ」
「そうなんですね!覚えました!」
そして――。
数時間後。
遠くに、交易の街エルミドの城壁が見えてきた。
「あっ、見えてきました!」
フロウベルが声を上げる。
「やっとね」
「帰ってきたって感じがするわ」
リンナとシャンティも、少しだけ表情を緩めた。
エルミドへ近づくにつれ、街道を行き交う人々も増えてくる。
そして――。
500匹のスライムも、当然のようについてくる。
「……」
リンナがスライムたちを見る。
「……これ、また騒ぎになるんじゃない?」
「そうですか?」
「そうよ」
「でも、前にも来ましたよ?」
「前にも騒ぎになったでしょうが」
「ああ……」
フロウベルが納得する。
「じゃあ、今回は静かに入りましょう!」
「どうやって?」
「普通に歩けばいいんじゃないですか?」
「それができないから言ってるのよ!」
そんなやり取りをしながら――。
三人と500匹のスライムは、エルミドへと戻っていった。




