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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第2章 伝説ってこう始まる(悪目立ちで)
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第12話 境界線と二匹の魔物 ……なんでベヒモスは愛称ないの(リ) ……かわいくないし(フ)

 森の中。


 シャンティ、リンナ、アスタ、フロウベル、そしてアラクネは、森の奥を見ながら話し合っていた。


「まず、狩猟場の範囲を決めましょう」


 シャンティが地面に枝で簡単な地図を描いていく。


「まず、ここまでなら魔力溜まりを作って良いわよ。」


 森の奥に、比較的狭い円を描く。


「……狭いわね」


 アラクネが渋る。シャンティはニコっと笑い


「で、ここから先を、この範囲をアラクネの狩猟場にする」


 かなり、大きな範囲の円を描く。


「……それなら、納得するわ」


 アラクネが頷く。


「ええ。魔力溜まりから逃げた獲物を追うこともあるでしょう?」


「そうね」


「だったら、魔力溜まりの外側にも、ある程度の余裕が必要だと思ったのよ」


「なるほど」


 アラクネは納得したように頷いた。


「魔力溜まりは狩猟場の中心付近。そこから外側を、逃げた獲物を追うための範囲にする」


「そういうこと」


 シャンティはさらに枝で線を引く。


「そして、この線より外側には出ない。魔力溜まりも作らない」


「人間や魔族の生活圏に近い場所ね」


「ええ」


 アラクネはしばらく地面に描かれた線を眺める。


「……分かったわ。これなら狩りにも問題ない」


「よかった」


 シャンティがほっと息を吐く。


「正式な境界については、王宮に報告して後日決めてもらうわ。今日は仮の境界線ということで」


「構わないわ」


 アラクネは素直に頷いた。


「これで、森の浅い場所に魔力溜まりを作る必要もなくなる」


「そうしてもらえると助かるわ」


 これでひとまず、森の異変については解決の目処が立った。


 ……のだが。


「一段落したのなら、行きましょう!」


 フロウベルが元気よく声を上げる。


「どこへ?」


 リンナが疑問を投げかける。


「グリフォンとワイバーンのところですよ。忘れちゃったんですか?」


「……」


 リンナが固まる。


 召喚に関しては、どんなことでも覚えているフロウベル。


 リンナにとっては忘れたい情報ではあった。


「忘れてたですか? ぷんぷん。 かわいそうなグリちゃん」


「いや、だって色々あったし!」


 リンナが頭を抱える。


 シャンティも苦笑する。


「確かに、あの二匹を放置したままだったわね」


「じゃあ、戻りましょう!」


「そうね」


 シャンティは、ふと、アラクネを見て、


「そういえば、あなた、名前ないの?」


「わたしか? あるわけない。」


「なんで?」


 フロウベルが声を上げる


「私たちは一応魔族だが、虫の魔物に近くてな。数万の卵から生まれるんだ、名付けられると思うか?」


 想像し、顔がちょっと青褪める女性三人。


「まぁ、この辺にはアラクネは私以外居ないから、アラクネのままでよい」


「……そ、そう。わかったわ、じゃあ、一旦お別れね」


「……良い返事を期待している」


「そうそう、今、狩猟場にある魔力溜まりは、アスタ……この魔族に処理してもらうから、襲わないでよ

」


「……え!?わ、我が?」


 慌てるアスタ。


「いいでしょ、襲撃されずに魔力取り放題なんだから」


 シャンティがアスタに話す。


「……その件に関しては承諾する。しかし他の場所に居たら捕食する」


 アラクネはそう言って、奥の森へと消えていった。


 アスタは青褪めた顔で見送っていた。


「で、あんたは、どうすんの?」


 アスタに向かって、シャンティが問い掛ける。


「……え、我か。我はこのまま、魔力溜まりを探し回る」


「そう、じゃあ、あんたとも一旦お別れね。アラクネに食べられないようにね。」


「や、やめろ。ありそうで怖い。」


 アスタとは別れ、グリフォンとワイバーンの元へ急ぐ3人。


 500匹のスライムたちも、一斉に森へ散っていく。


 ぞろぞろと。


 いや。


 正確には、ぞろぞろではない。


 森の中を、あちこちへ散開していく。


「……便利ね」


 シャンティが呟く。


「でしょう?」


 フロウベルが嬉しそうに胸を張る。


「私の召喚獣ですから!」


「もう、それ飽きたわ……あるかどうかわからない胸も張らなくていいから」


 リンナが、鼻でふっと笑う。


 フロウベルがこめかみに怒りマークを浮き上がらせ、


「やっぱり、もぎましょう、そのスライム胸」


「私も手伝うわ、フロウベル」


 シャンティも笑顔だが目が笑っていない。


「ほんとにすみませんでした!!」


 きれいな土下座を瞬時にかますリンナであった。


    ◇


 しばらくすると、一匹のスライムが戻ってきた。


「ぷるっ!」


「居ましたか?」


「ぷるぷる!」


 フロウベルが頷く。


「グリフォンとワイバーンを見つけたみたいです!」


「みたいって……」


「行ってみましょう!」


 スライムについていくと、少し開けた場所に出た。


 そこには――。


「いた!」


 大きな翼を持ったグリフォンがいた。


 その横には、翼を折りたたんで小さく丸まっているワイバーン。


 なかなか、シュールな絵面である。


 こちらを見るなり、ゆっくりと立ち上がる。


「グリちゃん!」


 フロウベルが駆け寄る。


 グリフォンはフロウベルを見ると、翼を広げた。


「おお!」


 フロウベルが喜ぶ。


「元気そうですね!」


 グリフォンはフロウベルの近くまで歩いてくる。


 その姿を見て、リンナが首を傾げる。


「……なんか、普通に懐いてない?」


「私の召喚獣ですから!」


「そうだったわね……忘れてたわ。」


 リンナはもう突っ込むのを諦めた。


「じゃあ、グリフォンは回収完了ですね!解除!」


 フロウベルが解除に、グリフォンが消える。


「……え、あんなに懐いてたのに、あっさり返すのね」


 シャンティが呆れたように言うと、


「まぁ、いつでも召喚できますし。」


 グリフォンが目の前で消えたのを見たワイバーンがいきり立つ。


「あ、こいつ天敵がいなくなったと思って、急に元気になりやがった。」


「グリちゃん、召喚」


 また、現れたグリフォン。シュンとなるワイバーン。


「失敗でした。ワイバーンの処分を決めてから、グリちゃんの解除ですね。」


 ワイバーンがこちらの意図に気付き、低く唸った。


「グルルル……」


 リンナが剣に手をかける。


「どうする?」


 フロウベルはワイバーンをじっと見つめた。


「……召喚してみたいです」


「やっぱり?」


「はい!」


 それから、ワイバーンに向かって話しかけるフロウベル。


「ワイバーン、あなたに二つの選択肢を挙げます。

 1.私の召喚獣になる

 2.この500匹のスライムに跡形もなく溶かされる。

 3.こちらのリンナさんの刀の錆となる

 4.アラクネさんの餌になる

 さぁ、どれがいいですか?」


「あんた、2つと言いながら、4つも上げたわよ。しかも、1以外は全部『死』でしかねぇし」


 リンナがツッコむ。


「しょうがないじゃないですか、色々思いついちゃったんだから」


 言い訳するフロウベル。ワイバーンに向き直り


「さぁ、どれにします。」


 フロウベルの言いたいことはわかるらしい。どうやら、スライムが通訳(?)しているようだ。


 スライムがぷるぷる揺れて、フロウベルに何か伝える。


「え、逃がすって選択はないのかって……それ、4を選択したのと一緒なるよ」


 それはそうであろう。森の奥に逃げれば、アラクネの捕食対象でしかない。


 何か、首をぶんぶん振って、訴えている。


 それを通訳(?)するスライム。


「え、別の場所に逃げるから?だめですよ、他の場所で暴れてもらったら、困るんです。」


 うなだれるワイバーン。


 子声で、シャンティに話すリンナ。


「なぁ、これって、1を選択することしかできないんじゃね?」


「えぇ、言葉巧みに自分のいいように誘導してますね」


 そう、フロウベルはワイバーンも召喚コレクションに入れたいのだった。


 しばらくやりとりが続き、


「やりました!快く召喚獣になってくれるそうです!」


「いやいや、だったように思えるけど、それで相手が応じたことになるのかしら?」


 シャンティが首を傾げる。


「だってシャンティさん。逃げられない状況で、選択迫って

 1.召喚に応じる

 2.スライムに...…

 だったら、どっち選びます?」


「……応じるわね。」


「でしょ!」


「……えげつなぁ」


 リンナが呟く。シャンティも


「応じますよ、ね?」


 ワイバーンに顔を向ける。びくっとするワイバーン。そしてぶんぶんと首を縦に振る。


「じゃあ、召喚!」


 魔法陣が浮かび上がり、その場にいたワイバーンが一旦消え、魔法陣から召喚される。


 きょとんとした顔で召喚されるワイバーン。


「いーよっしゃーーーーーー!」


 拳をあげ、『我が人生に一片の悔いなし』とばかりに感動しているフロウベル。


「あんた、ドラゴンまで召喚獣に加えて……」


 呆れるリンナ。


「やだなぁ、ただの空飛ぶトカゲですよ」


「ひど!?」


 いくら劣等種だからといって、ひどい扱いである。


「ワイちゃん、あんた、そこから奥に行かないのよ。アラクネさんに食べられちゃうから。」


「ワイちゃん?」


「ええ、グリちゃんとワイちゃん、それにカーちゃん」


 肩のカーバンクルを指差す。


「安直な……」


 リンナが呆れたようにため息をつく。


 その様子を見て、リンナが小さく呟く。


「……なんだかんだで、あんたの召喚獣って増えていくのね」


「召喚士ですから!」


 フロウベルは胸を張った。


 500匹のスライム。


 ベヒモス。


 カーバンクル。


 グリフォン。


 ワイバーン。


 そして――アラクネ。


 気が付けば、フロウベルの召喚獣は少しずつ増えていた。


 と、リンナやシャンティは考えている。それは大間違いである。


 特にリンナは忘れている。


 フロウベルはスライムの前にも、召喚しては研究し解除していると話していたことを。


「さて!」


 フロウベルが振り返る。


「帰りましょう!」


「そうね」


 シャンティが頷く。


 森の異変は、ひとまず解決した。


 残るのは――。


 王都への報告だけだった。

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