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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第2章 伝説ってこう始まる(悪目立ちで)
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第9話 森の異変、張本人? 

 森の奥へ進んでいく。


 先ほどまでの戦いが嘘のように、森は静かだった。


 ワイバーンとグリフォンを残した場所から、さらに奥へ。


 木々は次第に密集し、日差しも届きにくくなっていく。


「……この辺りね」


シャンティが足を止めた。


「何がですか? ああ、トイレの場所ですか?」


 フロウベルが周囲を見回す。


「あの辺の茂みが……」


「違うわよ!! 魔力溜まりのことよ!!」


「そんなに怒鳴らないでください。更年期ですか? エルフの方って意外と歳くってますしね」


「誰のせいですか!それに私は、まだ100ちょっとで、ピッチピチですからね!」


 シャンティが、顔を真っ赤にして抗議する。


「……えぇ。100超えてるとか人間感覚だとおばあさん領域なんですけど。」


 味方認定しときながら、辛辣なことをいうフロウベルである。


「ムキーーー!」


 声にならず、地団駄を踏むシャンティ。


 有無も言わさず、後ろからフロウベルの頭をたたくリンナ。


「何するんですか!」


「何するんですかじゃないわよ!シャンティさんに謝りなさい!」


 リンナの剣幕に押され、シャンティを見ると、しゃがんで地面にのの字を書いている。


「ご、ごめんなさい!」


 すかさず謝るフロウベル。


「……いいのよ。人間から見たら年寄りだし。」


 いじけたことを言いながら、無理に微笑むシャンティ。


「これからは、お年寄りを大切にします。」


 一言多いフロウベルであった。


         ◇


 地面には、先ほども見た黒ずんだ跡がある。


 だが、今度は少し違った。


「……こっちに向かって、魔力が流れているわ」


 シャンティが森の奥を見る。


「じゃあ、行ってみましょう!」


「でしょうね……」


 リンナがため息をつく。


「冒険者ですから!」


「その言葉で全部片付けないでよ……」


 そのとき。


「ぷるっ」


 一匹のスライムが、森の奥を見つめた。


「……あれ? ん~なぁんか光ってますね。」


 フロウベルがそちらを見て話す。


 すると――。


 500匹のスライムも、一斉に森の奥へ視線を向けた。


「……何を見つけたの?」


 リンナが嫌そうな顔をフロウベルに向ける。


「そうですね……何かはわかりませんが?」


 フロウベルは平然としている。


「今回は、何も命令してないわよね?」


 シャンティが確認する。


「探索はお願いしてましたよ? そういう行動してますし?」


「……」


 シャンティは黙り込んだ。


 スライムたちは、まるで何かを感じ取っているかのように、森の奥を見つめている。


「何に反応してるかはわかりませんけど、賢いですね!」


 フロウベルが嬉しそうに笑う。


「さすが私の召喚獣です!」


「……それが問題でもあるのよ」


 リンナが呟いた。


「え?何か言いましたか?」


「なんでもない」


 そのまま進んでいく。


 しばらくすると――。


 木々の向こうに、開けた場所が見えてきた。


「……誰かいるわ」


 シャンティが小声で言った。


「人……ですか?」


 リンナが緊張し、剣に手をかける。


 三人が慎重に近づく。


 すると。


 そこには、一人の男がいた。


 黒いローブ。


 長い黒髪。


 頭には二本の角。


 背中には、黒い翼。


 そして――。


 地面には、いくつもの魔法陣が描かれていた。


 その中心には、あの黒い魔力溜まりがいくつも存在している。


 男は、三人に気づいていない。


 両手を広げ――。


「もっとだ……」


 低い声で呟いている。


「もっと魔力を……俺に力を……」


 魔法陣が淡く輝く。


「この森に眠る膨大な魔力……」


 男は拳を握る。


「すべてを我がものとし――」


そして。


「フハハハハハハハハッ!」


 森に高笑いが響き渡った。


「……」


「……」


「……」


 三人とも、なんか痛いなぁっと思いながらも眺めてる。


 500匹のスライムも眺めてる。


 男は気づかない。


「そうだ……これだけの力があれば……」


「魔族……?」


「……?」


 リンナが小さく呟いた。フロウベルはわかってない。


 どちらかというと魔法陣に興味が言っている。


 その瞬間。


 男の肩が跳ねた。


 ゆっくりと振り返る。


「…………」


 目が合った。


 フロウベルたちと。


 男の顔が、みるみる青ざめていく。


「……こ、こんにちは」


 さっきまでの威厳はどこへ行ったのか。


 小さな声だった。


「こんにちは!」


 フロウベルが元気よく返す。


「……」


 男は気まずそうに目を逸らした。


「い、いや……その……」


「何をしているのかしら?魔族の……しかも悪魔種が?」


 シャンティが尋ねる。相手が弱いとわかり、圧をかけ始める。


「……」


 男は黙る。見ているリンナとフロウベルも少し寒気を感じる。


「魔法陣と、魔力溜まり……」


 シャンティが続ける。


「あなたが作ったの?」


「……はい、魔法陣は私がつくりました」


 男は観念したように頷いた。


「へぇ!あの魔法陣で魔力溜まりを作ってるんですが?」


 好奇心が勝ったフロウベルが声を上げる。


「いや、魔力溜まりは最初からあってですね……」


「じゃあ、あなたは異変の原因じゃないの?」


 シャンティが『嘘つくんじゃねぞ、コラ。』という目つきで、悪魔を見据える。


 頭を横にぶんぶん振りながら悪魔が答える。


「は、はい。私はこの魔力溜まりから、魔力を集めていただけです。」


「何のために?」


 男はしばらく黙った。


 そして――。


 小さな声で答えた。


「……魔王になるためです」


「…………」


「…………」


「…………」


 今度は三人とも、別の意味で固まった。


「魔王?」


 フロウベルが首を傾げる。


「はい……」


 男は少し俯く。


「魔王になるために、力を集めています……」


「魔王って、悪い人なんですか?」


「え? いえ……別に、魔王だから悪いというわけでは……」


 シャンティが割り込む。


「そうね。魔王というのは、単に魔族の王を指す言葉よ」


「ああ、国王と同じなんですね」


 納得するフロウベル。


「今の魔王も、善政していて、国交も結んでるわよ」


「じゃあ、この悪魔の人、力をつけてレボリューション(革命)を起こす気ですか?」


 腕を前に突き出し、掌を横に振って


「ち、違います。魔族の国では、個人の力を重視する風習があるんです。だから、何年かに一度、魔王になるための競技会が開かれるんです。」 


「競技会って……」


「それって、一般参加有りなんですか?」


 目をキラキラさせて質問するフロウベル。


「フロウベル?まさかとは思うけど、参加とか考えてないわよね?」


 般若顔のシャンティがフロウベルを睨みつける。


「……いえ、考えてません、すみません」


 泣きそうな声で謝るフロウベル。


「考えていたのか、こいつ……」


 リンナが頭を抱える。


     ◇


 シャンティは悪魔をじっと見つめていた。


「あなた、悪魔でしょう?」


「……はい」


「この森で魔力を集めていたのよね?」


「……はい」


「そのせいで魔力の流れが変わって、強い魔物が森の奥から移動してきた可能性があるわ」


「……え?」


 悪魔の顔が固まる。


「ワイバーンまで出てきたのよ」


「……」


 うんうんとうなずく、フロウベルとリンナ。スライムたちも一緒にぷるっと揺れる。


「それだけじゃないわ。オーガの亜種もいた」


「…………」


 男の顔から、さらに血の気が引いていく。


「えっと……」


 男が恐る恐る聞く。


「……それ、僕のせいですか?」


「たぶん」


 シャンティが即答する。


「……僕は、集めていただけですよ?」


 男は頭を抱えた。


「そういえば、変ね。魔力溜まりがあるから、集めていただけなら、この魔力溜まりって……」


「誰が作ったんでしょうね?」


 フロウベルも疑問を口にする。


「ねぇ、悪魔さん。そもそもどうやって魔力溜まり見つけたの?」


 フロウベルが聞く。


「はい……我々悪魔は人間族よりは魔力察知に長けて、たまたま、通りかかったこの森に

 無数の高密度の魔力溜まりがあり、歓喜しました!」


「なるほど。この森に、他にも魔力溜まりってあるんですか?」


「え? 結構、この森にはありますね。特にもっと奥にも、かなり高密度な魔力溜まりがあるみたいで……」


「それ全部、自分で集めようと……?」


「……」


 悪魔はしばらく答えず。


「……はい、そうです」


「ちなみに、魔王になって、何するつもりなの?」


 フロウベルは首を傾げながら聞く。


「強くなって、僕を見下している奴らをこき使うんです!」


「うわ、志ちっちゃ!?」


 辛辣なフロウベルの言葉。


「いや、待って」


 リンナが割って入る。


「なんで普通に魔王になるための相談をしてるのよ!」


「え?」


「え?じゃない!」


 そのとき。


「ぷるっ」


 スライムが一匹、男のほうへ近づいた。


「……」


 悪魔がスライムを見る。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 その先には――。


 500匹。


「…………」


 悪魔の顔が引きつった。


「……なんだ、あれは?」


「ああ!」


 フロウベルが嬉しそうに答える。


「私の召喚獣です!」


「……」


「500匹のスライムですよ!」


「…………500?」


「はい!」


 悪魔は、ゆっくりと一歩後ろへ下がった。


「……そうか」


 さらに一歩。


「……500か」


「どうしました?」


「い、いや……」


 悪魔は引きつった笑顔を浮かべる。


「……なんでもありません」


 シャンティは、その様子を見逃さなかった。


「あなた……スライムを怖がってるの?」


「えっ!?」


 男が慌てる。


「い、いや! 別に!」


「でも、下がったわよね?」


「それは……」


 悪魔は500匹のスライムを見る。


「……なんとなく」


「なんとなく?」


「……はい」


フロウベルは不思議そうに首を傾げる。


「普通のスライムですよ?」


「……」


 悪魔は何も答えなかった。


 ただ――。


 500匹のスライムから、目を逸らしていた。


◇


「とりあえず」


 シャンティが話をまとめる。


「この魔力を集めるのはいいけど、私たちを襲うってなら、ここで……ね。」


 シャンティが、怖い笑顔で悪魔を見る。


「……はい。わかりました。でも、集めていいんですか?」


「魔力溜まりが減ってくれるのは、まぁ、助かるし。」


「有難うございます!」


 涙目でお礼をいう悪魔。魔法陣へ向き直る。


「へぇ、その魔法陣で魔力を吸い上げるんですか?」


 好奇心の塊、フロウベルが悪魔に聞く。


「ええ、これで集め、自分に取り込みます」


 大概に人の好い悪魔である。


 その姿を見ながら、リンナが呟いた。


「……なんなの、この人」


「悪魔ですけど?」


「そういう意味じゃないわよ!」


 フロウベルは楽しそうに笑っていた。


「でも、面白い人ですね!」


「面白いで済ませていいのかなぁ……」


 シャンティはため息をつく。


 森の奥には、まだ誰も知らない魔力溜まりが存在している。


 そして――。


 その理由を、このときは誰も知らなかった。


 そして――。


 この日、フロウベルたちは一人の悪魔と出会った。


 本人は魔王を目指しているらしい。


 ただし。


 今のところ、誰よりも魔王らしくない悪魔だった。


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