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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第2章 伝説ってこう始まる(悪目立ちで)
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第8話 ワイバーンの見張り番 一狩りできました!(フ) ・・・(リ)

 ワイバーンは、地面に降りたまま動かなかった。


 グリフォンが、その目の前に立っている。


「……グルル」


「……グォ」


 二体の魔物が、じっと睨み合っている。


 まぁ、グリフォンが一方的に睨みつけて、ワイバーンが上目遣いで泣きそうな目で見ているのだが。


 なかなかシュールである。


 その様子を、フロウベルたちは少し離れた場所から眺めていた。


「……どうしましょうか?」


 リンナが尋ねる。


「どうするって……困ったわね」


 シャンティも困ったようにワイバーンを見る。


「あの状態を見ちゃうと、わざわざ殺す……って感じにはなれないわよね」


「ですよね!」


 フロウベルが嬉しそうに頷く。


「でも、このまま森に帰すのも危険よ」


「まぁ、そうですよね。うーん……」


 フロウベルは腕を組んで考える。


 ワイバーンは強力な魔物だ。


 この森にいること自体が異常なのだから、放置するわけにもいかない。


 かといって、戦う意思を失った魔物を殺すというのも、フロウベルには考えられなかった。


「誰か、従魔契約できませんかね?」


「私は、精霊魔法しかできないわ。」


 シャンティが答える。


「それは、仕方ないですね……」


「わたしも、無理だな。魔術はからっきしだ」


 リンナが答える。


「チっ!使えないな、この胸スライムは……」


 あからさまな悪態をつくフロウベル。


「おい!なんだその態度の違いは!」


「まぁ、そんな事はどうでもよくて……」


「良くない!」


「うるさいですよ。それなら、調査が終わるまでここに居てもらいましょう。」


 リンナを無視し、話を続けるフロウベル。


「ここに?大人しくしてるかしら」


 フロウベルが顔を上げた。


「グリちゃんに見張ってもらいます!」


「……グリちゃん?」


 リンナが聞き返す。


 フロウベルは、グリフォンを指差した。


「はい!」


「いや、そういうことじゃなくて……」


「グリちゃん、お願いします!」


「グルルッ!」


グリフォンが力強く返事をする。


そして、ワイバーンの前へ一歩進み出た。


「グォ……」


ワイバーンが一歩下がる。


「……」


シャンティが、その様子を見つめる。


「……これなら、逃げることはなさそうね」


「ですよね!」


「いや、そこはワイバーンが可哀想じゃない?」


 リンナが苦笑する。


「仕方ないでしょう?殺されるよりマシだもの」


 さらっと怖いこと言って、シャンティは肩をすくめる。


「今のところ、これが一番安全だと思うわ」


「じゃあ、決まりですね!」


 フロウベルがグリフォンへ向き直る。


「グリちゃん。ここでワイバーンを見張っていてください」


「グルッ」


「ワイバーンが逃げようとしたら、止めてくださいね」


「グルル……」


 グリフォンがワイバーンを見る。


 ワイバーンは、無言で翼を畳んだ。


「……すごい説得力」


 リンナが呟いた。


「グリフォンって、こんなに強かったっけ……?」


 シャンティも小さく呟く。


「普通なら、ワイバーンのほうが上位なんだけどね」


「さっきもそういってましたが、そうなんですか?」


 フロウベルは不思議そうに首を傾げる。


「基本、竜種だけでまとめるなら、食物連鎖の頂点なのよ。」


「ふむふむ」


「いくら、劣化種といわれたワイバーンでも、そのくくりに入るわ。」


 涙目でグリフォンを見ているワイバーンを憐れむように見るシャンティ。


「でも、グリちゃんのほうが強いですよ?」


「……それが問題なのよ」


「?」


 フロウベルには、やはり分かっていない。


「このワイバーンがワイバーンの中で一番弱いやつで、そのグリフォンがグリフォンの中で一番強いやつと仮定したら、この状況は説明できるかもしれないけど……」


 シャンティの説明に、リンナが、


「そんな偶然ってあるか?」


「そうなのよね……フロウベル、あれ」


 グリフォンを指差し、


「あれ、ホントにグリフォン?」


「私の召喚獣契約の情報だと……『グリフォン(やばいかも…)』って出てますよ」


 あっけらかんと、情報を流す。


「な、何よ、それ?(やばいかも…)って?」


 リンナが、すっごく引きつった顔で聞いてくる。


「さぁ、そう出てますし。まぁいいじゃないですかグリフォンだし」


 にこやかに、そしてさわやかに答えるフロウベル。


 シャンティと言えば、しゃがみ込み頭を抱えて、なにかブツブツと呟いている。


「とりあえず、これでワイバーンのことは大丈夫そうですね!」


 何も考えていない、召喚さえできれば、それでよい、それがフロウベル。


「……そうね」


 とりあえず立ち上がり、シャンティは頷いた。


 ただし、グリフォンとワイバーンから視線を外さない。


「でも、何かあったらすぐ戻ってきましょう」


「はい!」


 フロウベルたちは、グリフォンとワイバーンを残して森の奥へ進むことにした。


◇


 少し歩くと、新たな『魔力溜まり』が見つかった。


 地面の一部が黒く変色している。


 周囲の木々も、どこか不自然だった。


「……ここにもあるわね」


 シャンティがしゃがみ込み、地面に手をかざす。


「昨日の『魔力溜まり』と同じ……いえ」


「違うんですか?」


「魔力の流れが少し違うわ」


 シャンティが眉を寄せる。


「こっちは、どこかへ向かって流れている」


「どこかって?」


「さらに森の奥よ」


 フロウベルが、森の奥を見る。そして迷わず、


「じゃあ、行ってみましょう!」


「簡単に言うけどね……」


 リンナが呆れる。もう驚きもしない。


「何があるか分からないのよ?」


「だからこそ、冒険じゃないですか!」


「……そう言うと思った」


 シャンティが小さくため息をついた。


 この子には何を言っても無駄と諦めた。


 そのとき。


 ぷるっ。


 足元のスライムが一匹、森の奥を向いた。


「ん?」


 フロウベルが見る。


 すると。


 ぷるぷる。


 別のスライムも、同じ方向を向いた。


 気がつけば、500匹のスライムたちが一斉に森の奥を見つめていた。


「あ、デジャブ」


「うん、私もそう思った。つい数時間前と同じだね」


 フロウベルは嬉々として、リンナは嫌そうに呟く。


 ぷるっ。


「何か見つけたんですか?」


 ぷるぷる。


「……あっち?」


 ぷるっ!


 フロウベルが指を差す。


「……ほんとですね。また、戦闘になるのでしょうか」


 シャンティも諦めムードである。


 スライムたちは、一斉に森の奥へ進み始めた。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!」


 シャンティが慌てて追いかける。


「フロウベル! 今、何か命令した?」


「ん? してませんよ? そういえば今回は、特に何かしてほしいとも思ってませんでしたね」


「……」


 シャンティが足を止める。


 リンナもスライムたちを見る。


「今度は、勝手に動いた……?」


「みんな、賢いですね!さっすが私の召喚獣!」


「それが怖いのよ……」


 リンナがジト目で、フロウベルを見る。


「どういう意味ですか!ひどいです!」


 喚くフロウベル。


 シャンティが怒鳴る。


「今はそれどころじゃないでしょ!スライムたちが勝手に動いているのよ!」


 シャンティを見て、フロウベルは首を傾げながら、


「賢くていいじゃないですか」


「……まあ、あなたはそう言うわよね」


 スライムたちの後を追うために、シャンティは諦めたように歩き出した。


 その後を、リンナとフロウベルが追う。


 そして――。


 森の最奥。


 先ほどまで何も聞こえなかった場所から。


 ――ドン。


 地面が、わずかに揺れた。


「「わぁ、また、デジャブ」」


 フロウベルとリンナが声をあげる。


 シャンティも、森の奥を見つめる。


 フロウベルの目が輝いた。


「何かいますね!」


「……だから、楽しそうにするなって」


 リンナが剣に手をかける。


 500匹のスライムたちも、森の奥を見つめている。


 そしてそのさらに奥で――。


 何かが、ゆっくりと動いた。


 同じ展開にならないことをリンナは切に願う。

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