↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第2章 伝説ってこう始まる(悪目立ちで)
PR
21/52

第5話 オーガ……決して王都のギルドマスターではない。

 森の奥で、何かが動いた。


 ガサッ。


 木々の間から、ゆっくりと姿を現す。


 それは――。


「……オーガ」


 リンナが呟いた。


 身長は二メートルを超えている。


 太い腕。


 分厚い胸板。


 鋭い牙。


 手には巨大な棍棒を握っている。


「!?……王都のギルドマスターがなぜここに?」


「違うわーーーーー!!!!」 


 ボケるフロウベル。ツッコむリンナ。余裕がある二人である。


 オーガの姿を見た瞬間、採集者たちの顔が青ざめた。


「……あいつだ」


「こいつに追われて……」


「逃げるので精一杯だったんだ」


 採集者の一人が震える声で言う。


「あなたたちのような、ベテラン冒険者がオーが1体に?」


 リンナは剣に手をかけながら、疑問を投げかける。


「今までのオーガと違って、固さと再生能力が半端じゃないんだ!」


 リンナは、その言葉に驚き、オーガを見据えながら、


「オーガの亜種か……」


 その表情は真剣だった。


「三人が軽傷で済んだのは、運が良かったわね」


 採集者たちは黙って頷く。


 オーガがこちらを見る。


「グオオオオオッ!」


 森全体に響くような咆哮。


 採集者たちが身をすくませる。


 リンナは一歩前に出た。


「フロウベル、下がって! こいつは私が――」


「オーガの亜種なんですね!」


 フロウベルの目が輝いた。


「……なんで嬉しそうなのよ」


「だって、強そうですよ!」


「だから危ないって言ってるの!」


 リンナが叫ぶ。


 オーガが棍棒を振り上げた。


「来る!」


 リンナが剣を抜く。


 その瞬間。


「みんな!」


 フロウベルが声を上げた。


「ぷるっ!」


 500匹のスライムが、一斉に動いた。


「えっ!?」


 リンナが驚く。


 スライムたちはオーガへ向かって一斉に跳ねていく。


 オーガが棍棒を振り下ろす。


 ドゴォン!


 地面が大きく揺れた。


「ぷるっ!」


 一匹のスライムが吹き飛ばされる。


「危ない!」


 リンナが叫ぶ。


 だが――。


 吹き飛ばされたスライムは、地面に落ちると何事もなかったように跳ねた。


「……無事なの?」


「ぷるぷる!」


 元気そうである。


「……もう、驚くのも疲れてきたわ」


 その間にも、別のスライムたちがオーガへ取りついていく。


 足。


 腕。


 背中。


 肩。


「グオッ!?」


 オーガが腕を振り回す。


 だが、振り払っても次々とスライムがまとわりつく。


「グオオオオオッ!」


 オーガが暴れる。


 木々が揺れる。


 地面が踏み荒らされる。


 それでも――。


 500匹のスライムは離れない。


「……また、この戦い方」


 リンナが引きつった顔をする。


「はい!」


 フロウベルは嬉しそうだった。


「みんな、頑張って!」


「ぷるっ!」


「ぷるぷる!」


「ぷるん!」


 スライムたちはさらにオーガを覆っていく。


 オーガの動きが少しずつ鈍くなる。


「グ……オ……」


 やがて――。


 オーガの姿が、少しずつ小さくなっていく。


 そして。


 消えた。


「……」


「……」


「……」


 森が静まり返る。


 リンナは剣を下ろした。


「終わった……?」


「はい!」


 フロウベルが元気よく答える。


「みんな、すごいですね!」


 500匹のスライムが、嬉しそうにフロウベルの周りへ集まる。


「ぷるっ!」


「ぷるぷる!」


「ぷるん!」


「よしよし!」


 フロウベルが一匹ずつ撫でる。


 リンナは、その光景を見ながら呟いた。


「……オーガの亜種よ?」


「はい」


「普通、もっと苦戦するものなのよ?」


「そうなんですか?」


「そうなの!」


 リンナが頭を抱える。


「私たち、昨日から何を見せられてるの……」


 採集者たちは、完全に言葉を失っていた。


 しばらくして。


「……助かった」


 一人が呟いた。


「本当に……ありがとう」


「いえいえ!」


 フロウベルは笑顔で答える。


「困っている人を助けるのも、冒険者ですから!」


「いや……」


 リンナが横から口を挟む。


「今回は、ほとんどスライムがやったけどね」


「私が命令しました!」


「はいはい」


 リンナは諦めた。


 リンナは、まだこのとき、その違和感に気づいていなかった。


 フロウベルは命令していない。ただ「みんな!」と言っただけである。


 勝手にスライムたちがフロウベルの意図を汲み取ったのである。


   ◆


 その後。


 三人の採集者を連れて、フロウベルたちは森を出た。


 オーガが消えた場所には、何も残っていなかった。


 武器も。


 骨も。


 肉片すらない。


 ただ、踏み荒らされた地面だけが残っている。


 リンナは一度だけ振り返った。


「……」


 何か引っかかる。なぜオーガの亜種がこんな森に?


 だが、今は考えても仕方がない。


 まずは三人をギルドへ連れて帰る。


 そう決めて、歩き出した。


   ◆


 街の冒険者ギルド。


 扉を開けると、受付の職員がこちらを見る。


「おかえりなさい」


 そして――。


「……あら?」


 シャンティが奥から出てきた。


「ずいぶん早かったわね」


「はい!」


 フロウベルが元気よく答える。


「三人とも見つかりました!」


「それはよかったわ」


 シャンティが採集者たちを見る。


「怪我は?」


「軽傷です。カーバンクルに治してもらいました」


「そう」


 シャンティが頷く。


「なら、依頼は無事完了ね」


「はい!」


 フロウベルが胸を張る。


「それと、森でオーガを退治しました!」


「……」


 シャンティの動きが止まった。


「……今、何て?」


「オーガです!」


「オーガ?」


「はい!しかも亜種!」


 フロウベルが元気よく答える。


「……亜種!?」


 驚くシャンティを余所に、


「みんなで倒しました!」


 嬉しそうに話すフロウベル。


 シャンティの視線が、500匹のスライムへ向く。


「……あなたたちが?」


「ぷるっ!」


 500匹が一斉にぷるぷると跳ねた。


 シャンティは額に手を当てた。


「……なるほど」


 リンナが苦笑する。


「オーガに襲われていた採集者を助けたんです」


「そう……」


 シャンティは少し考える。


「オーガがいた場所は?」


「森の奥です、それほど深くではありませんが」


 リンナが答える。


「三人の採集者が襲われたのも、同じ場所でした」


 シャンティの表情が変わった。


「……そう、さほど奥でない場所」


 しばらく黙っていたシャンティは、窓の外を見る。


「少し、おかしいわね」


「何がですか?」


 フロウベルが首を傾げる。


「この辺りの森に、オーガが出ること自体は珍しいことではないわ」


「じゃあ、普通なんですね!」


「いいえ」


 シャンティは首を横に振った。


「今回の場所が問題なの」


 リンナも少し真剣な顔になる。


「何かあるんですか?」


「まだ分からないわ」


 シャンティはギルドの職員へ声をかける。


「少し森を調べてくるわ」


「ギルドマスター自らですか?」


「ええ」


 そして、フロウベルを見る。


「あなたたちも来て」


「はい!」


 即答だった。


「もちろんです!」


 リンナがため息をつく。


「やっぱりそうなるのね……」


 シャンティは苦笑した。


「あなたたちだけで行かせるより、私が一緒にいたほうが安心でしょう?」


「それは確かに」


 リンナが頷く。


「では、準備して」


「はい!」


 フロウベルが500匹を見る。


「みんな、もう一度森へ行きますよ!」


「ぷるっ!」


 500匹が一斉に跳ねた。


 シャンティはその光景を見ながら、静かに呟いた。


「……あの森で、何が起きているのかしら」


 こうして。


 フロウベルたちは、再び森へ向かうことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。