↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第2章 伝説ってこう始まる(悪目立ちで)
PR
18/51

第2話 新しい街、新しいギルド、そして新しい揉め事

 街の門をくぐる。


 フロウベルたちを乗せた馬車は、そのまま街の中へと進んでいった。


「ここが今回の目的地ですか?」


「そうだよ。ここで荷物を降ろせば、今回の依頼は完了だ」


 御者席からグレイスが答える。


 街並みは王都セレナほど大きくはない。


 だが、人通りは多く、商店も多い。


 街道沿いの交易拠点なのだろう。


 フロウベルは馬車の荷台から街を眺めながら、少し嬉しそうにしていた。


「新しい街って、なんだかわくわくしますね!今回は本当に何事もなく着いてよかったです」


「ぷるっ」


「ぷるぷる」


「ぷるん」


 馬車の後ろから、500匹のスライムがぞろぞろとついてくる。


 通行人が振り返る。


 子供が指を差す。


 大人は距離を取る。


 リンナはそれを見て、小さくため息をついた。


「……何事もなく、ね」


「はい?」


「なんでもない」


 やがて馬車は商店の前で止まった。


「さて、ここだ」


 グレイスが荷台から降りる。


 商人仲間らしき人物が駆け寄り、荷物の確認を始めた。


「護衛してくれてありがとう。無事に届けられたよ。」


「こちらこそ。依頼を受けられてよかったです」


 フロウベルが頭を下げる。


 グレイスは500匹のスライムを見た。


「しかし……最後まで慣れなかったな」


「そうですか?」


「いや、頼もしかったよ。特にオークのときは……」


 悍ましい光景が蘇り、グレイスの顔が少し引きつる。


「……思い出さないほうがいいな」


「え?」


「いや、なんでもない」


 こうして商人護衛の依頼は無事に完了した。


「それでは、私は商談があるのでここで失礼するよ」


「はい。ありがとうございました!」


「また何かあったらよろしく頼む」


 グレイスはそう言って店の中へ入っていった。


 フロウベルはその背中を見送る。


「……終わりましたね」


「ええ」


「じゃあ、この街の冒険者ギルドに報告しましょう!」


「そうね」


 リンナは少し嫌な予感がした。


 だが、断る理由もない。


 二人と500匹のスライム、そしてフロウベルの肩に乗ったカーバンクルは、街の冒険者ギルドへ向かった。


   ◆


 街の冒険者ギルド。


 扉を開けた瞬間。


 ざわっ――。


 ギルド内の空気が変わった。


 受付にいた職員。


 依頼を確認していた冒険者。


 食事をしていた者。


 全員の視線が、一斉に入口へ向く。


 そして、その先にいる500匹のスライム。


「……」


「……」


「……大量のスライム?」


 誰かが呟いた。


「大量だな……」


「確か情報では、500……」


 500という言葉を聞いた途端、


「ええ、500匹の『スライム?』ですよ!」


元気よく反応するフロウベル。横でリンナが頭を抱えている


「はぁ……既に情報回ってるわね。」


 リンナが諦めた感じでため息をつき呟く。


 受付へ向かう。


 すると、一人の女性がこちらへ歩いてきた。


 長い耳。


 長い髪。


 華奢な体。


 そして、落ち着いた雰囲気。


「こんにちは。私はこのギルドのギルドマスター、シャンティよ」


「こんにちは!」


 フロウベルが元気よく挨拶する。


 シャンティはフロウベルを見て、それから後ろのスライムを見る。


 さらにカーバンクルを見る。


「……あなたがフロウベルね?」


「はい!」


「そう」


 シャンティはしばらく黙ってフロウベル眺めていた。


 フロウベルも黙って見ている。


 ――ある一部の箇所を。


 リンナも黙っている。


 500匹も動かない。


「……」


「……」


 やがてフロウベルが口を開いた。


「シャンティさん」


「何かしら?」


「あなたは……敵ではない、むしろ味方!」


「? それは、ギルドマスターですし……」


 シャンティが首を傾げる。


 リンナは頭を抱えた。


「また始まった……」


「リンナさんは、味方ですけど、ある意味凶悪な敵です!」


 ビシッと、リンナを指さすフロウベル。


「なんでーーーーーーー!!!」


「フン、自分の胸に手を当てて考えて下さい!」


 シャンティは少し不思議そうにしながらも、話を続けた。


「続けていいかしら?王都から連絡は来ているわ。あなたが特殊な召喚士だということも聞いている」


「特殊?」


「ええ」


「迷惑な、じゃなく?」


 リンナの一言にジロリと睨みつけるフロウベル。


 ペロッと舌を出すリンナ。仕返しである。


 シャンティは500匹を見る。


「ただ、この街では召喚獣をこれほど大量に連れて歩く冒険者は珍しいの」


「そうですか?」


「珍しいというより……初めてよ」


「なるほど!」


 フロウベルは納得したように頷いた。


「ああ、言いたいことはわかります。この子たちは大丈夫ですよ」


「……それを確認したいの」


 シャンティの声が少しだけ真剣になる。


「王都でもお墨付き貰ってますよ、王様から。」


「一応、この街では、魔物を連れて歩くことには規則があるの」


「この子たちは魔物じゃありません。召喚獣です」


「そこは理解しているわ」


 シャンティは淡々と答える。


「でも、見た目はスライムでしょう?」


「はい。『スライム?』です」


「……」


 シャンティが一瞬だけ黙った。何か言葉に違和感がある。だが、何がおかしいのかは分からない。


 リンナも黙った。


 フロウベルは何も気づいていない。


「問題は数よ」


「500匹です!」


「そこを堂々と言わないで……」


 リンナが小声で呟く。


 シャンティは500匹を見渡した。


「この街では、これほどの数の召喚獣を自由に行動させることは認められないわ」


「……どうしてですか?」


 フロウベルの表情が少し曇った。


「この子たちは悪いことなんてしません」


「ええ。それはまだ分からないわ」


「さっきも言いましたが、王様のお墨付きですが?」


「それはわかっているけど、自分で確かめないと安心できないのよ」


 シャンティは静かに告げた。


「あなたが、この500匹を本当に制御できているのか」


 フロウベルは少しだけ考えた。


 そして――。


「もちろんです!」


 胸を張った。慎ましい胸を。


 リンナは嫌な予感しかしなかった。


   ◆


 シャンティはギルドの中央へ視線を向けた。


「では、一つ確認させてもらえるかしら?」


「はい!」


「命令してみて」


 フロウベルは500匹のスライムを見る。


「みんな!」


「ぷるっ!」


 500匹が一斉に反応する。


「並んでください!」


 ぞろぞろぞろぞろ……。


 スライムたちが整列する。


 ギルド内が静まり返った。


「……」


「……」


「……すごい」


 誰かが呟いた。


 フロウベルは嬉しそうに笑う。


「次は、待機!」


 500匹がその場で止まる。


「右!」


 ぞろっ。


「左!」


 ぞろっ。


「私のところへ!」


 500匹が一斉にフロウベルのもとへ集まる。


 ある意味スライムのマスゲームである。


 シャンティはしばらくその光景を見ていた。


「……なるほど」


 そして、ぽつり。


「問題は、あなた自身ね」


「え?」


「あなた、500匹のスライムを従えていることを、普通だと思っているでしょう?」


「はい!」


 即答。


 リンナは天井を見上げた。


「……やっぱりね」


 シャンティは小さく息を吐いた。


「王都から聞いていた話より、少しだけ深刻そうね」


「?」


 フロウベルは首を傾げる。


 こうして、新しい街での最初の揉め事が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。