↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第1章 若き召喚士、伝説の入り口に立つ(いきなりやらかしすぎです)
PR
15/51

第15話 新たな依頼・・・新たな大騒動への予兆

 王宮から戻ってきた翌日。


「さて……」


 フロウベルは冒険者ギルドの依頼掲示板を眺めていた。


「今日は何を受けましょうかね……」


「おはよう……依頼を受けるの?」


 隣に立ったリンナが声をかける。


 そこで、ふと、リンナが質問する。


「そういえば、フロウベルってどこで寝泊まりしてるの?あれだけのスライムと?」


「あ、言ってませんでしたっけ?研究所を間借りしてます。あれだけのスライムですから、宿屋には泊まれませんし。」


「なるほどね……研究所の人たちは、それで大丈夫なんだ。」


「ええ、いい研究材料として、スライムさんたちを調べてますし。」


「……謎多いもんね、あのスライムたち」


「そうですか?ただの『スライム?』ですけどね」


 リンナはこの微妙な違和感でモヤモヤしている。


「そういえば、カーバンクルは?」


「あそこです」


 ぶすっとした表情で、受付の方を指さす。


 そこには、愛想を振りまき(そう見える)受付嬢たち、特にイリアにかわいがられてるカーバンクルがいた。


「ずっと、ああなんですよ。私の召喚獣なのに」


「意外とあざとかったな、カーバンクル」


 リンナもちょっとだけ、フロウベルに同情した。


「で、何か依頼受けるんだろ?」


「そうでした」


「やっぱり、冒険者は冒険しないと!」


「はいはい」


 リンナは適当に返事をしながら、依頼掲示板を見る。


 そこには様々な依頼が貼られていた。


「薬草採取……」


「普通ですね」


「魔獣の討伐……」


「これも普通です」


「商人の護衛……」


 リンナが依頼書を一枚、手に取る。


「これなんてどう?」


「護衛ですか?」


「ええ。王都から近隣の町まで商人の荷物を運ぶ護衛。街道を使うから、それほど危険でもないみたい」


 フロウベルが依頼書を覗き込む。


「報酬も悪くないですね」


「でしょ?」


「これにしましょう!」


「決めるの早っ!」


「普通の冒険ですから!」


「……まあ、確かに」


 リンナは苦笑した。


「今回は普通に終わるといいわね」


 遠い目になるリンナ。そしてこの一言を口走ったことを後悔することになる。


「何を言ってるんですか?」


「……何でもない」


 二人は受付へ向かった。


「護衛依頼ですね」


 カーバンクルを可愛がっていたイリアが依頼書を確認する。


「はい。これを受けたいです」


 ぶすっと答えるフロウベル。胸とカーバンクルの可愛がりが気に食わない。


「分かりました」


 イリアが依頼書に目を通す。


「王都セレナから、近隣の町まで商人の方と荷物を護衛する依頼ですね」


「そうです」


「今回の依頼は、護衛対象の方と一度顔合わせをしていただきます」


「分かりました」


 イリアが少しだけ微笑む。


「ちなみに、今回はベヒモスさんは?」


「呼びません」


「……」


「大きすぎますから」


「そうですよね」


 イリアがほっとしたような顔をする。このほっとした感情も後で後悔する。


 皆、まだ、フロウベルをわかっていない。


「それに、今回は普通の護衛ですから」


「……」


 イリアは一瞬だけリンナを見る。


 リンナも同じような顔をしていた。


「何ですか?」


「いえ、何でもありません」


 イリアは笑顔に戻る。


「それでは、護衛対象の方を呼んできますね」


 しばらくして。


「お待たせしました」


 イリアの後ろから、一人の男性がやってきた。


 四十代くらいだろうか。


 少しふっくらとした体型で、身なりの整った商人風の男性だった。


「今回、護衛をお願いする商人のグレイスと申します」


「フロウベルです。召喚士です。冒険者ランクFです。」


「リンナです。Cランク冒険者です」


 二人が挨拶する。


 そこで、イリアが口を挟んだ。


「フロウベルさん、すみません。あなた、特別処置でCランクまで上がってます。まだギルド証の書き換えが済んでませんでした」


「へ!?この間、登録したばっかですよ。なんで?」


「ベヒモスを召喚する冒険者をFランクなんて低ランクに置いておけないと、ギルドマスターの判断です」


 リンナは、苦笑。グレイスはドン引きしてる。


「イリアさん、なんですか、そのおとぎ話のベヒモスを召喚するって」


 グレイスが尋ねる。


「先日、ベヒモス召喚にそこのフロウベルさんが成功しているんですよ。」


「……え、まさか。四大魔獣ですよね?」


「きゅ。うちも四大魔獣のカーバンクルだけど」


 他の受付嬢にいじくられてたカーバンクルがフロウベルの肩に乗り話しかける。


「え!?栗鼠がしゃべった!?」


「栗鼠じゃないわい!」


 カーバンクルが応戦する。


「見た目は栗鼠でしょ」


 リンナが小声でツッコむ。イリアが何事もないように、


「なので、Cランク冒険者、しかも特殊能力持ちがついていきますので安心してください」


 イリアに言われ、グレイスは顔を引きつらせながら、


「お二人とも、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 グレイスが二人の後ろを見る。


「……ところで」


「はい?」


「あちらの……大量のスライムは?」


 グレイスの視線の先。


 ギルドの入口付近には、いつものように500匹のスライムがいた。


「ああ、あれも、私のかわいい召喚獣です」


「……」


「一緒に行きます」


「……何匹ほど?」


「いっぱいです」


「500匹です」


 リンナが横から訂正する。


「500……」


 グレイスが固まる。


「500匹ですか?」


「はい」


 フロウベルは何でもないことのように答えた。


「荷物運びもできますし、周囲の見張りもできます。とても役に立ちますよ」


「そ、そうですか……」


 グレイスは500匹のスライムを見つめる。


 そして、もう一度フロウベルを見る。


「……頼もしいですね」


「でしょう?」


 フロウベルが笑う。


「では、よろしくお願いします」


「はい」


 グレイスは苦笑しながら頭を下げた。


「では、準備ができ次第出発しましょう」


 グレイスがそう言う。


「はい!」


 フロウベルが元気よく返事をする。


「荷物はもう積み終わっていますので、あとは馬車に乗っていただければ大丈夫です」


「分かりました」


 フロウベルが振り返る。


「みんな、出発しますよ!」


「ぷるっ!」


「ぷるぷる!」


「ぷるっ!」


 500匹のスライムが一斉に動き始める。


「……」


 グレイスが、その光景を呆然と眺める。


「本当に500匹いるんですね……」


「はい」


 フロウベルは自信満々に答える。


「数えたんですか?」


「召喚したときに分かりました」


「なるほど……」


 グレイスはそれ以上、何も聞かなかった。


 王都セレナを出る。


 馬車が街道を進み始める。


 御者席にはグレイス。


 荷台には商品。


 その周囲を、フロウベルとリンナ。


 そして――。


 500匹のスライムが、ぞろぞろと後ろをついてくる。


 フロウベルの肩にはカーバンクル。


「なんだか、久しぶりに普通の冒険って感じがしますね」


 フロウベルが嬉しそうに言う。


「……そうね」


 リンナが答える。


「王宮に呼ばれることもないし、巨大な魔獣もいない」


「ベヒモスさんもいません」


「うん」


「今回は本当に普通ですね」


「……」


 リンナは後ろを振り返る。


 500匹のスライム。


 その先頭を歩くフロウベル。


 肩には四大魔獣カーバンクル。


「……まあ」


 リンナは小さく息を吐いた。


「これを普通って言えるなら、もう何も言わないわ」


「何か言いました?」


「何も」


「そうですか」


 フロウベルは前を向く。


 馬車はゆっくりと街道を進んでいく。


 目的地は、王都セレナから数日ほど離れた近隣の町。


 今回の依頼は、商人の護衛。


 特別難しい依頼ではない。


 魔獣の討伐が目的でもない。


 危険な場所へ向かうわけでもない。


 ただ、商人を目的地まで無事に送り届ける。


 それだけの――。


 ごく普通の護衛依頼だった。


 少なくとも、この時のフロウベルはそう思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。