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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第1章 若き召喚士、伝説の入り口に立つ(いきなりやらかしすぎです)
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14/50

第14話 王宮からの呼び出し・・・ブチ切れですよ!

 数日後。


「……また、ここですか」


 王宮へ続く長い廊下を歩きながら、フロウベルが呟いた。


「また、ここね。でも、一般人はなかなか来られないわよ」


 隣を歩くリンナも苦笑する。


 二人は再び、王宮へ呼び出されていた。


 もちろん理由は――。


「ベヒモス、ですよね?」


「たぶんね」


 リンナが答える。


「たぶんじゃなくて、間違いないと思います」


「じゃあ、なんで聞いたのよ……」


 フロウベルは少しだけ肩を落とす。


「せっかく冒険から帰ってきたのに……」


「いや、ベヒモスなんて召喚したんだから、呼ばれるでしょ」


「そういうものですか?」


「そういうものよ」


 やがて二人は、謁見の間へと通された。


「よく来たな、フロウベル」


「お久しぶりです、陛下」


 そこには国王と宰相。


 そして――。


「お久しぶりです、フロウベルさん」


「……!?」


 フロウベルが固まる。


「どうしました?」


 穏やかな笑顔を浮かべるミレイア。


「いえ……なんでもありません。」


 視線を逸らすフロウベル。


 リンナが横目で見る。


「……またか」


「何のことでしょう?」


「別に」


 フロウベルは咳払いをして誤魔化した。


 挨拶がすむと、国王から早速聞かれた。


「今回、そなたを呼んだ理由は分かっているな?」


 国王が尋ねる。


「なんで呼ばれたんでしょうか? ただ、来いとしか招集状には書かれていなかったので」


 あくまでも、しらばっくれるフロウベル。


「ほぉ……あくまでもわからないと?」


「……申し訳ございません、ベヒモスの件ですね」


 しらばっくれるのは得策でないと、すぐ、方向転換するフロウベル。


「その通りだ」


 宰相が書類を手に取る。


「報告によれば、リーフェン近郊の森でグラン・ボアと交戦。その際、新たな召喚獣を召喚したとある」


「はい」


「それが――」


「ベヒモスです」


 フロウベルが答える。


「……」


 室内が静かになる。


「本当に、ベヒモスなのだな?」


「はい、本人が事あるごとに『我はベヒモスだからな』と言っていますので。」


 フロウベルは即答した。


「しゃ、しゃべれるのかベヒモスは?」


「人の言葉、しゃべりますね。リンナさんも聞いていたから思念とかではないと思いますよ?」


「国王陛下、フロウベルの言う通り、ベヒモスはしゃべりました。私も聞いて、ツッコミ入れたくらいです」


 リンナが声を発する。


「なるほど」


 宰相が苦笑する。


「だが、問題はそこではないのだよ」


「?」


「なぜベヒモスを召喚できた?」


 『なぜ、できた』――答えは明白である。


「理論上可能だからで……」


「それ禁止って言ったよね!」


 リンナがすぐさまツッコむ。


 フロウベルはふくれっ面になりながら、


「グラン・ボアより強そうな召喚獣が必要だったので」


「……」


「それで?」


「相手が豚なら、牛みたいな召喚獣なら、もっと強そうかなと」


「……」


 リンナが額に手を当てる、『こいつ言いやがった…』


「何か問題あります?」


「問題しかないと思う」


 リンナが小声で呟いた。


 ミレイアが口を開く。


「フロウベルさん。ベヒモスを召喚する際、特別な術式を使ったわけではないのですね?」


「はい。いつもの召喚魔法です」


「召喚対象を、ベヒモスに限定したわけでも?」


「私は普段、あまり限定して呼び出したりしないので」


「限定で呼び出さない?」


「こういう魔獣の研究をしたいなぁとか、この魔方陣ならどんな魔獣がくるのかぁとか」


 たんだん、自分の考えに没頭していき、えへえへとゆるんだ顔になっていくフロウベル。


 全員、ドン引きである。


「……こほん。では、召喚時に何を意識していたのですか?」


「さっきも言いましたが、グラン・ボアより大きくて、強い牛を、と」


「…………」


 ミレイアが黙る。


「それだけ、ですか?」


「はい」


 ミレイアは深く息を吐いた。


「……本当に、規格外ですね」


「そんなに褒めなくても……」


「褒めているわけではありません」


「そうですか……」


 少し残念そうなフロウベル。


「しかし」


 国王が話を戻す。


「一つ確認したいことがある」


「なんでしょう?」


「ベヒモスを、ここで再び召喚することは可能か?」


「……」


 フロウベルが王宮内を見回す。


「ここでですか?」


「ああ」


「やめたほうがいいと思います」


「なぜだ?」


「大きいので」


「……」


 リンナが頷く。


「それは本当にそう」


「たぶん、王宮が壊れます」


「たぶんじゃなくて、確実に壊れると思いますよ」


「それほどですか……」


 ミレイアは残念そうに答えた。


 残念そうなミレイアを見て、フロウベルが提案する。


「では、別の召喚獣なら?」


 ミレイアが尋ねる。


「別の?」


「ええ」


 ミレイアは国王を見る。


「ベヒモスと同じ四大魔獣の一体なら、どうでしょう?」


「四大魔獣?」


 リンナが聞き返す。


「そうです」


 ミレイアが説明を始める。


「この世界には、特別な力を持つ四体の魔獣が存在するとされています」


「四体……」


「ベヒモス。猛牛――大地の番人」


「バハムート。古龍種――空の覇者」


「リバイアサン。大海蛇――大海の王」


「そして、カーバンクル。栗鼠――癒しの極致」


「……栗鼠?」


 リンナが首を傾げる。まぁ、気持ちもわかる。最初の3体がすごいのに1匹だけ栗鼠なのだから。


「はい」


「それ、かなり小さくない?」


「身体は小さいです」


 ミレイアが頷く。


「ですが、四大魔獣の『大』は、身体の大きさを意味しません」


 ミレイアは静かに続ける。


「その力の大きさを示すものです」


「なるほど……」


 フロウベルが頷く。


「つまり、小さくても四大魔獣なんですね」


「その通りです」


 ミレイアが微笑む。


「カーバンクルの力は、癒し」


「どの程度ですか?」


「瀕死の者であっても、正常な状態まで戻せると言われています」


「それは……すごいですね」


 フロウベルの目が輝く。


「では、そのカーバンクルを召喚してみましょうか?」


「え!?できますか?今初めて聞いたんですよね?」


「イメージはできたので、やってみます」


 フロウベルが手をかざす。


「――我が魔力に応えよ」


 床に魔法陣が浮かび上がる。


「その力をもって、我が前へ!」


 魔法陣が光に包まれる。


 そして――。


 ぽんっ。


「……?」


 光の中から、小さな生き物が現れた。


 栗鼠。


 小さな身体。


 ふさふさとした尻尾。


 そして額には、小さな宝石のようなものが輝いている。


「……」


「……」


「……」


 その場にいた全員が、言葉を失う。


「カーバンクルです!成功ですよ、成功!」


 自信もってフロウベルが嬉しそうに言う。


「……本当に召喚できた」


 ミレイアが呟く。


「あれ、本物なの?ただの栗鼠じゃないの?」


 まだ、リンナは信じられない顔する。


 周りをみると、国王と宰相、貴族たちもポカンとしている。


 カーバンクルはフロウベルの肩へと軽く飛び乗った。


「きゅっ。ども、召喚に応じてきたよ、主」


「かわいい……」


 フロウベルの顔が緩む。


「ベヒモスさんとは大違いですね」


「……」


 リンナが微妙な顔をする。


「いや、比べるところじゃないでしょ?」


「そうですか?リンナさんはベヒモスさんのほうが好きですか?」


「あ、ごめん、わたしもカーバンクルで……」


 国王もカーバンクルを見つめる。


「これが……四大魔獣か?」


「はい」


 ミレイアが頷く。


「この小さな身体に、四大魔獣と呼ばれるほどの力を秘めているのがわかります。」


 カーバンクルが小さな前足を上げる。


「きゅっ。お姉さん、わかるんだ、すごいね」


「カーバンクル様、有難うございます」


ミレイアがお礼を言うと、


「ねぇ。主。なんか、力を見せた方がいいんでしょ?ちょっと力を使っていい?」


「何するの?」


 フロウベルがカーバンクルに問いかける。


「このお姉さんの呪いを解いてあげるの」


「「「え、呪い?!」」」


 そこにいる全員、ミレイアも含めて驚く。


「え、え!?私呪われてるの?」


「うん、なんか、ほんとうに単純な呪いなんだけど、お姉さん、異性に避けられること多いでしょ?」


 プライベートでデリケートな部分をこともなげいうカーバンクル。さすが魔物。


 顔を真っ赤にし、俯くミレイア。ちょっとニヤつくフロウベル。


「あんた、今、すごくあくどい顔してるわよ。」


 すかさず、小声でツッコむリンナ。


「きゅ。なんか、異性を遠ざける呪いがかかってるみたいだから解呪してあげる。」


「へぇ、癒しの力って解呪もできるの?」


 フロウベルがカーバンクルに聞く。


「きゅきゅ。基本、治癒、解呪、状態異常解除なんかは、全然できるよ。じゃあ、やるね」


 その瞬間。


 カーバンクルの身体から淡い光が広がった。


「これは……」


 宰相が目を見開く。


「・・・癒しの力です」


 まだ、俯いているミレイアが答える。


「きゅ。お姉さん、解呪出来たよ。これで、そのボディならモテモテだね」


 見た目はかわらないが、たぶんドヤ顔してると思われるカーバンクル。


「チっ。ほんとに解呪したんだ」


「フロウベル、心の声が漏れてる」


 ツッコむリンナ。


 その時、その場にいた貴族の一人が口を開いた。


「それほどの力があるのであれば――」


 貴族が国王を見る。


「軍事利用を検討すべきではないでしょうか?」


「……」


 フロウベルの表情が変わる。


「ベヒモスを軍に配備すれば、戦力として――」


「ああ!?今なんつったジジィ!?」


 いきなりブチ切れモードのフロウベル。


 周囲も突然の豹変に、ポカンとしてしまう。


 貴族が振り返る。


「なんだ貴様! 無礼だぞ?!」


 その貴族の言葉を遮り、


「今、私の召喚獣を軍事利用って言ったんか、ああ!?」


「あ、いや、これほどの召喚獣を扱えるのであれば、当然――」


 フロウベルの勢いに気圧される貴族。


「当然じゃねぇんだよ。」


 フロウベルの声が低くなる。


「私は召喚獣を、戦争の道具にするつもりなんか、さらっさら無いんだよ!」


「しかし、国を守るためには――」


「国? 知ったこっちゃない! それなら、私に頼まないでくれ」


 フロウベルが言い切る。


「私はね、誰かを傷つけるために召喚魔法を使っているわけじゃないんだよ。

 自分の夢のために召喚獣を研究しているんだ。人殺しの道具にするな!」


 室内の空気が変わる。


 リンナも黙ってフロウベルを見る。


 いつものフロウベルとは違う。


 怒っている。


「ベヒモスも、カーバンクルも、兵器として扱おうっていうなら、この国を出ます」


 言い切ったフロウベルは肩に乗ったカーバンクルを見る。


「そこまでだ」


 国王の声が響いた。


 貴族が口を閉じる。


「そのような話をするために、フロウベルをここへ呼んだのではない」


「しかし陛下――」


「下がれ」


 国王の声は静かだった。


 だが、拒否を許さない強さがあった。


「召喚士が自らの召喚獣をどう扱うか。それは本人が決めることだ」


「……」


「ましてや、本人が望んでいない軍事利用を強要することなど許さん」


 宰相も続ける。


「今後、フロウベル嬢へ軍事利用を目的とした接触をすることを禁じます」


「……承知しました」


 貴族は渋々頭を下げる。フロウベルは貴族を睨みつけ、こっそり中指を立てた。


「フロウベル」


 そんなフロウベル見て苦笑しながら、国王が呼びかける。


「はい」


「不快な思いをさせてしまったな」


「陛下が謝ることではありません……私も大人げなかったです。ただ、言ったことは本気です」


 フロウベルは少しだけ考えてから答える。


「そうか」


 国王が微笑む。


「ところで……」


 ミレイアがカーバンクルを見る。


「フロウベルさん」


「はい?」


「その子は、どうするおつもりですか?」


「どうするって?」


「召喚を解除するのですか?」


「……」


 フロウベルは肩の上を見る。


「かわいいので、しばらく一緒にいます」


「ですよね……」


 ミレイアが苦笑する。


「必要なときだけ呼ぶんじゃなかったの?」


 リンナが呆れたように言う。


「ベヒモスさんは大きすぎますけど、この子なら問題ないですよ」


「……基準がそこなのね」


「もちろんです」


 フロウベルは満面の笑みを浮かべる。


 肩の上では、カーバンクルが、


「きゅっ、宜しくお願いします、ご主人様」


 と小さく鳴いた。


 こうして――。


 フロウベルが四大魔獣を召喚できることは、王宮にも知られることとなった。


 そして同時に。


 彼女の召喚魔法を、軍事目的で利用することは許されない。


 それが、王と宰相によって明確に定められた。


 フロウベルは知らない。


 この日、新たな召喚獣を得たことが――。


 これから始まる冒険に、どのような影響を与えることになるのかを。


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