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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第1章 若き召喚士、伝説の入り口に立つ(いきなりやらかしすぎです)
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第11話 新たなる召喚獣

 森の奥。


 フロウベルとリンナは、木々の間を慎重に進んでいた。


 先ほどから聞こえていた地響きは、少しずつ大きくなっている。


 ズシン。


 ズシン。


「……近づいてきてるね」


「そうですね」


 フロウベルは周囲を見回す。


 五百匹のスライムも、すでに二人の周囲へ集まっていた。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぷるぷる。


「みんな、気をつけてね」


「ぷるっ」


 その直後だった。


 ――バキバキバキッ!!


 目の前の木々が、一気になぎ倒された。


「来る!」


 リンナが双剣を抜く。


 そして森の奥から姿を現したのは――。


「……大きい」


 巨大な獣だった。


 体長は五メートルを超えている。


 太く頑丈な四本の脚。


 全身を覆う茶褐色の毛。


 そして、口元から伸びる巨大な牙。


「グラン・ボア……」


 リンナが呟く。


「これが、今回の依頼にあった魔物ね」


 グラン・ボアが二人を睨みつける。


 その巨体から放たれる威圧感は、並の魔物とは比べものにならない。


「グルルルル……」


「リンナさん」


「なに?」


「倒せますか?」


「倒せる……と言いたいところだけど」


 リンナが双剣を構える。


「正直、かなり難しそう……」


 リンナの顔に冷や汗が垂れる。


「そうですか」


「……ああ」


 グラン・ボアが前脚で地面を掻く。


 土が舞い上がる。


「来るよ!」


 次の瞬間。


 ドドドドドドッ!!


 グラン・ボアが突進してきた。


「っ!」


 リンナが横へ飛ぶ。


 巨大な牙が目の前を通り過ぎる。


 ドゴォォォン!!


 そのままグラン・ボアは大木へ突っ込んだ。


 木が大きく揺れる。


「……あれ、まともに受けたら危ないね」


「これは、まずいですね!?」


「フロウベル、何かできる?」


 考えるフロウベル。そして、


「もちろんです、新しい召喚獣を呼びます」


「……え?」


 リンナが固まる。


「新しい召喚獣?」


「はい」


「今?」


「今です」


「……いやいや、間に合うんかい?!」


「なんとかなりますよ。

 召喚までリンナさんガンバ!」


「アンタ、やっぱり私には厳しい!」


 フロウベルは少し考える。


「……なるほど」


「わかってくれた?」


「では、強い召喚獣を呼びましょう」


「全然わかってない!」


 フロウベルは気にせず、魔力を集中させる。


 地面に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「……何これ」


 リンナは、グラン・ボアを引きつけながら呟く。


 魔法陣がどんどん大きくなっていく。


 光が森を包む。


「フロウベル!」


リンナが叫ぶ。


「はい?」


「この規模、大丈夫なの!?」


「理論上は大丈夫です」


「その言葉、前にも聞いた気がする!」


 フロウベルは集中を続ける。


「――我が魔力に応えよ」


 魔法陣が強く輝く。


「その力をもって、目の前の敵を打ち倒せ!」


 光の中から、巨大な角が現れた。


「角……?」


 続いて、巨大な頭。


 太い首。


 隆々とした四肢。


 大地を踏みしめる蹄。


 そして――。


 ズンッ!!


 巨大な獣が、森の中へ姿を現した。


 グラン・ボアよりもさらに大きい。


 牛やバッファローを思わせる巨体。


 全身から、圧倒的な威圧感を放っている。


「グオオオオオオオオオオッ!!」


 咆哮が森全体を震わせた。


「……」


 リンナは、しばらく言葉を失っていた。


「……すごい」


 フロウベルは目を輝かせ呟く。


「何が?」


「成功ですよ、成功!」


 フロウベルにとって大事なことなので、二度言った。


「いや……」


 リンナが巨大な獣を見上げる。


「成功っていうか……」


「?」


「これ……ヤバイやつだよね?」


「そうですか?」


「そうだよ!」


 巨大な獣が、ゆっくりとグラン・ボアへ顔を向けた。


「……貴様」


 低く響く声。


「このブタが、我に逆らうか」


「……」


 フロウベルが首を傾げる。


「自分は牛のくせに……」


「そこ!?」


 リンナが思わず叫ぶ。


 巨大な獣がフロウベルを見る。


「我は牛ではない」


「でも、見た目は牛ですよ?」


「……」


「……」


「……ベヒモスだ」


「牛じゃなかったんですね……」


 残念がるフロウベル。


「我を呼び出しておいて、酷いな」


「そうですか?」


 フロウベルの召喚に応じたベヒモス。それが運の尽きである。


「我はベヒモス。この地に正義をもたらす者」


「正義?」


 リンナが聞き返す。


「弱き者を虐げる者を、我は許さん」


「……」


 リンナがフロウベルを見る。


 フロウベルは何も気にせず頷いている。


「いいですね、さすが私の召喚獣」


「そこはちょっと残念だったが?」


「なんか言いました?」


 どうやらフロウベルの召喚獣は、召喚主の性格までしっかり受け継いでいるらしい。


 ベヒモスがグラン・ボアへ向き直る。


「貴様が森を荒らしているのか」


「グルルルル……!」


 グラン・ボアが牙を剥く。


「ならば――」


 ベヒモスが一歩踏み出した。


 ズンッ。


「我が裁きを受けろ!」


 グラン・ボアが再び突進する。


 ドドドドドドッ!!


「遅い」


 ベヒモスが身を沈める。


 そして――。


 ドォォォン!!


 正面から、グラン・ボアの突進を受け止めた。


「えっ!?」


 リンナが目を見開く。


 グラン・ボアの巨体が止まっている。


 ベヒモスは、びくともしていない。


「グオオオオッ!」


 ベヒモスが力を込める。


 ズズズズズ……。


 地面が削れていく。


 そして――。


 ドンッ!!


 グラン・ボアの巨体が宙を舞った。


「ええええええ!?」


 リンナが叫ぶ。


 グラン・ボアはそのまま地面を転がり、動かなくなった。


「……」


「……」


 森が静まり返る。


 ベヒモスが鼻を鳴らす。


「弱い」


「……」


 ただ呆然と見ているリンナ。


 フロウベルはベヒモスを見上げる。


「すごいですね、さすがは私の召喚獣!」


「当然だ」


 ベヒモスが胸を張る。


「我はベヒモスだからな」


 そのとき。


「ぷるん」


 後ろから、何かが聞こえた。


「……?」


 ベヒモスが振り返る。


 そこには――。


 五百匹のスライム。


 ぞろぞろ。


 ぷるん。


 ぷるぷる。


「…………」


 ベヒモスが固まった。


「どうしました?」


 フロウベルが不思議そうに尋ねる。


 ベヒモスは、しばらくスライムたちを見つめていた。


「…………」


「ベヒモスさん?」


「……いや、あれ、いや、彼らも召喚したものか?」


 ベヒモスが聞いてくる。


「そうですよ、かわいいでしょ?」


「……先輩方」


小さく呟く。


「?」


 フロウベルが首を傾げる。


「何か言いました?」


「何でもない」


 ベヒモスは、なぜかスライムたちから目を逸らした。


 リンナも不思議そうにスライムを見る。


「……何なんだろう?」


「さあ?」


 フロウベルは首を傾げる。


 五百匹のスライムは、いつもと変わらない様子でぷるぷるしている。


「ぷるん」


 そして、その横では――。


 新たな召喚獣、ベヒモスが誕生していた。


 圧倒的な力。


 正義感。


 そして、少しだけ残念な頭脳。


 こうしてフロウベルの旅に、また一匹――。


 いや、一頭の仲間が加わった。


 ただし本人だけは、五百匹のスライムを見ながら、こう思っていた。


 ――あの方々には、逆らってはいけない。


 ぷるん。

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