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【完結】いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
番外編

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女子会!(前編)

 イリスの通う学園が長期休暇に入った。

 アルケアに帰国したいと思っていたものの、実家とは軋轢があるイリス。

 それをナラに相談したところ、ナラの家で過ごしては、ということになり、現在ナラ家で寝泊まりしている。

 そんな休暇中の一時。

 巷で人気のカフェでナラとイリス、カレアは目当てのものを心待ちにしていた。


 「わぁぁぁ」


 それがテーブルに乗せられた時、女子達は歓声を上げた。

 二段重ね、三種のパンケーキ。

 その上にたっぷりのナッツソース、種類豊富なフルーツ、生クリームにキャラメルソースが彩りを添えている。


 「どれも美味しそう……」

 「そだねー。はいナラ、あーん」


 見惚れるナラに、カレアは一口大に切ったパンケーキをナラの口元に運ぶ。

 吸い寄せられるようにそれを口にしたところで、イリスのあ然とする視線に気付き、はっとなった。


 「違う、違うのっ!」

 「ちがうんだよねー、いつも彼氏から『あーん』されてるから無意識でやっちゃったんだよねー?」


 真っ赤になって顔を隠すナラに、カレアはにやにや笑いながら顔を覗き込もうとしている。

 イリスは呆れつつも、「あぁ…」と呟き、納得したようだった。


 「それはそうとして、イリス今何して過ごしてるの?」


 カレアがイリスの方へ顔を向けると、イリスは少し考えた後で答えた。


 「『ギフト』の扱い方の指導を受けているの。向こうで翻訳のアルバイトをして貯めたお金で、家庭教師雇ってナラの家まで来てもらっているの」

 「へぇ、『ギフト』上手く扱えるようになりたいの?」

 「自己防衛の手段はたくさんあっても損はしないでしょう?」


 「へぇー」と感心しながらカレアは自分のパンケーキを頬ばった。


 「上手くやれてるの?」

 「進捗自体は悪くないのだけどね……」


 言葉尻をにごしながら、イリスはちらりとナラの方へ目線を配った。

 

 「その、ナラの彼氏?彼が毎日毎日ナラの家に入り浸って、ずっと……ずーーーっと四六時中ナラにくっついているのが時々気になってしょうがないの……」

 「あぁー」


 容易に想像ついたらしいカレアが遠い目をした。

 一時学園から姿が消え、その後戻って来た彼━━エメの様子はそれはそれは一言では言い表せないものであった。 

 以前はナラの側にいるものの、余裕のある態度で周囲の生徒達と接していた。

 それが今は母親から離れない幼児並みにぴったりくっつき、生徒達に必要以上の愛想を振りまかなくなっていた。

 それに最初は抵抗していたナラもやがて慣れたのか疲れたのか、全て受け入れ状態になっている。


 「家族にも馴染み過ぎているようだけど、まさかロマンス詐欺ではないよね?」

 「まさかまさか!」


 いぶかしむイリスに全力で否定するナラ。

 詐欺ではないけど、スパイだったんだけどな……と思いつつそれは心の中に留めておくことにした。


 「そう言えばさ、イリスも彼氏ができたんじゃなかったっけ?」

 「え?…まぁ」

 「ナラ見たことあるんだっけ?私も知りたーい。どんな人なの?」 


 きらきらと期待の眼差しを向けるカレア。

 イリスは足下に置いていたバッグから写真を取り出しテーブルの上に置いた。


 「身長高っ、イケメンっていうか、男前な感じ?」


 それを手に取り、カレアは隣のナラに見せながら写真を眺めた。

 そこに写っていたのは椅子に腰掛けるイリスとその椅子に手を添える男性の姿だった。

 男性は緊張しているのだろう、表情が堅い。


 「私さ、てっきりイリスは同じ階級の人と恋愛せずに婚約して結婚パターンかと思ってたよ」


 写真をテーブルに置きカレアがまじまじと言うと、イリスは苦笑した。


 「私は実家と縁を切る予定だから。恋愛も結婚も自分の意志で決めたいと思っているの。家のために婚姻しろと言われたら手切れ金突きつけて以後関わらないつもり」


 「相変わらず意志強いねぇ。それで、彼はどんな人なの?結婚するかどうかまだ分からないだろうけど、どんな感じ?」


 「それは……」と話すイリスの表情はどこか曇っていた。

 意外な反応が返ってきたことに驚くカレアはナラと顔を見合わせる。

 イリスの話に詳しく耳を傾けた。

 ━━イリス曰く、彼は寡黙で自ら愛情表現をする人ではないらしい。

 あまり進展がなく、最近ようやく手を握ったら握り返してくれるくらいにはなったとのこと。

 告白したのはイリスで、自分は恋人だと思っているが、向こうから返事はおろか何も言ってこないため、不安になっているようだ。


 「……お付き合いしていると思っているのは私だけで向こうはそうとは思ってないのかもしれない……」


 そう話すイリスは憂いを帯びていた。


 「でも、ほらっ。確かこの前、家に彼氏さんから手紙来てたよね」


 ナラが元気付けるために話を振ると、「でもあれは……」とイリスは言いながら再びバッグの中を探った。

 そうやって差し出された白い封筒の手紙をカレアと二人で開く。

 二人は目を丸くした。


 「えっと……『◯月×日、ジェニスに頼まれ仕事に行く。無事終了』……『◯月△日、部屋の電気が切れたため、交換する』……」


 終始このような文章が続いていた。

 ━━報告書か日記だろうか?


 「これ、手紙書き方分からないけど、何か書きたいから書いたって感じのやつじゃない?」


 カレアが神妙な顔つきで文字を眺めている。


 「そう、なの?」

 「あまり感情出さない人なんでしょ?一生懸命書こうとしたんじゃない?」


 そういうものなのか、とナラは思った。

 手紙に再び目をやる。

 綺麗に整った文字の中に数回ほど『〜〜の蜂蜜飴を買った』と書いてあった。

 それはイリスの好物だ。

 それを見たところで、ナラは何となくカレアの言っていることが理解できた気がした。


後編は夜9時頃投稿します!

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