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【完結】いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
最終章 風邪の先

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第32話 再会と別れ

 ナラやテオの容態も落ち着いた頃。

 ヴェイル家、そして身内が失態を犯したセルディアスの支援があり、テオの寿命問題は取り組まれることになった。

 研究所との連携もとれて、やはりテオはセルディアスの技術をもって『ギフト』を消失させることが最善だという結論に落ち着く。

 何をしでかすか分からないテオの父から避難することも含め、テオは母と一緒にセルディアスへ移住する運びとなった。


 ━━港にて。


 「……ナラ!」


 そわそわとしながら待っているナラに、友人が声を掛けた。


 「イリス!」


 久々の再会に、二人は顔をほころばせる。


 「色々手配してくれたのに、わざわざお迎えまで……ありがとう。大変だったよね?」

「ううん、あんなことがあった後だし、知らない人間だけで迎えに来るのは不安でしょう?とにかく、なんとか話がまとまって良かった」


 そう話すイリスは、ナラに微笑んで見せた。

 イリスの様子に、ナラは胸を撫で下ろす。


 「……イリスは元気だったかな?向こうの生活は?」

 「何も変わりはないよ。生活はどうにか慣れてきたかな?ナラは……」


 イリスは言い掛けたところで、ナラの変化に気付いたようだ。


 「雰囲気変わった?何か……」


 少し驚いているイリスに、ナラは微笑んで見せた。


 「色々、あったからかな。イリスも雰囲気変わった気がする……なんだか柔らかくなった?」

 「私も色々あったから」


 ナラはイリスと離れていた期間、起こった出来事を思い返して感慨深くなっていた。

 イリスもきっと自分と同じ様に、価値観が変わる何かがあったのだろう。


 「カレアも呼べたら良かったね」

 

 ここに呼べなかった友人のことを思い、ナラが残念がる。

 それにイリスは穏やかに答えた。


 「うん。……でも大丈夫、近いうちにまた帰って来るよ。その時にまた三人で話そう?」

 「そうだね」


 ナラは微笑んだ。

 イリスがこの国を去った時、何となく二度と会えなくなるような気がしていた。

 それを、また会ってくれると話してくれている。


 「っ!ごめんなさい、私達だけで盛り上がってしまって本題を忘れるところだった」


 そう話すと、イリスは後ろに控えていた二人に声を掛けた。


 「紹介するね、こちらが外交官のジェフ・ジェニスさん。今回色々手配をしてくれた方で……」

 「お会いできて光栄です!」


 食い気味にジェフが挨拶したので、ナラの肩は跳ね上がる。

 それに気付いたジェフが咳払いをして、恥ずかしそうに謝罪した。


 「……そして、こちらがグレイさん。今は訳あって休職中だけど、私の護衛を担当してくれている人」


 そうイリスが紹介すると、グレイはナラに一礼をした。

 少し距離があっても威圧感のある彼に、ナラは圧倒されていた。

 けれどイリスが彼に向ける視線を目にして、ナラも一礼を返す。

 ━━きっと、イリスとグレイは悪い関係性ではないのだろう。


 「それでは、こちらも。お二人共、こちらが私の母で、あと……」


 今度はこちらの番だと、後ろに控えていたナラの母と、テオ親子の紹介をした。

 ナラの母は優雅に挨拶し、イリスに「久しぶりね」と声を掛けていた。

 テオ親子は緊張していた。

 その二人にジェフが話しかける。


 「お話は伺っています。この度は我が国の者がご迷惑おかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます」


 そう言って深々と頭を下げた。


 「その償いと言ってはなんですが、我が国が責任を持ってお子様の治療と、お二人のセルディアスでの生活の支援を行いますのでご安心ください」


 テオの母は最初慌てていたが、ジェフの言葉を最後まで聞いた後、自身も頭を下げた。

 テオも、その後に続く。

 彼女はイリスにも頭を下げた後、ナラ達の方へ向き合った。


 「……息子だけじゃなくて、私のことまで……何から何まで、本当にありがとうございました。このご恩は決して忘れません」


 一段と深くお礼を言う彼女に、ナラの母は言葉を掛ける。


 「恩なんて忘れて良いの。新しい土地で一からやり直すのは何かと大変ですもの」


 あくまで穏やかに、母は続けた。


 「もう一人でがんばろうとしては駄目よ。テオのためにも」

 「……はい、必ず」


 彼女の返事を聞いたところで、ナラの母はそっと彼女を抱き締めた。


 「恩は忘れて良い。でも、遠くから貴方の幸せを願っている友人がいることは、忘れないでちょうだいね」


 テオの母は、一瞬言葉を失っていた。


「……はい!」


 しばらくして、かすれた声で答えた彼女の目は、赤くなっていた。

 名残惜しそうにしていた一行だったが、乗船開始の時間になり、乗組員が案内を始めていた。


 「それじゃあ、お元気で。テオも、元気でね」


 ナラはテオに別れの挨拶を告げた。

 テオは何も言わず、目を反らしている。


 「こら、テオ!」

 「あ、怒らないであげてください。私は大丈夫ですので」


 テオの母は息子の態度を注意したが、それをナラは引き留める。


 「手紙送るから、気が向いたら返事書いてね」

 「……」


 目線をテオに合わせ、話しかけるナラ。

 相変わらず、テオの返事はない。

 少し寂しくもあったが、否定はされなかったから良いかとナラは思うことにした。


 「そろそろ乗らないと。……それじゃあナラ、またね」

 「うん、楽しみにしてるよ」


 最後にイリスとナラは言葉を交わす。

 ナラとナラの母を残して、一行はセルディアス行きの船へと乗り込んだ。


 「みんな、元気に暮らせると良いね」


 皆の姿が見えなくなった後、ナラは呟いた。


 「えぇ、私も心から願っているわ」


 母は震えるナラの肩を、抱き寄せていた。

次幕間なので、また夜9時頃投稿します。

今更ながら幕間多いと思いますが、テオ視点の最後の短めの話の為、どうぞお付き合いください。

また、明日も今度はイリスの幕間(前後編)を同じ時間帯で投稿しようと思います。


お手数ですが、評価やブックマークなどもやっていただけると幸いです!

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