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【完結】いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第五章 禁足地の影

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第27話 港での出会い

 ナラが再び通学するようになって、明らかな変化が見られるようになっていた。

 ナラの周囲ではざわめく生徒が増えているのだが、その原因はエメだけではない。

 相変わらず人助けは続けているが、隠れなくなったナラはじんわりと周りに認識され始めていた。

 とはいえ、まだ礼を言われることには慣れていない。

 戸惑いながら、はにかむナラの反応がかえって良いのだと、一部の女子から話題に上がっている……らしい。

 ━━変化はもう一つ。

 

 「……おまえら、最近おかしい」


 ナラとエメを交互に目で追いながら、ミアが言った。


 「前は四六時中ベタベタしてたのに、最近微妙に距離ある」

 「そんなことないと思うけど」


 ナラが否定したが、ミヤは納得しなかった。


 「いや……あぁ、オスとメスって感じか」

 「「えっ!?」」


 やがて合点がいったのか、一人うなずくミアに、ナラとエメが声をハモらせる。


 「ちょっ、それ言ったら弟死ぬって!」


 カレアが咄嗟にミアをツッコんだが、時すでに遅し。

 ルゥは「そうだよなぁ、ははは」とぶつぶつ呟きながら、遠い目をしていた。


 「えーやだなぁ、ボク達前と何も変わんないよー」


 そう言ってエメは後ろからナラを抱き締めた。

 しかし、それをナラはやんわりと離す。


 「……うん」


 耳まで真っ赤になって顔を伏せるナラに、エメやカレアは固まった。


 「あははーそうだよねー」


 エメは言いながら、自身も顔を赤く染めていた。


 「……アオハルやー……」


 カレアは呟き、ルゥは白目を剥いていた。


*****


 その日の夜、異国の友人から届いた手紙を読んだナラ。

 読み終えるなり、エメの部屋を訪れた。

 ナラの様子に驚いたエメが何事か訊ねると、興奮気味にナラは答えた。


 「私の友達…セルディアスに留学してる友達ね、その子にテオのことについて相談したんだけど」


 開いた手紙をエメに差し出しながら、ナラは続ける。 


 「そしたら、セルディアスの権威ある貴族の人が役に立てるかもしれないから、一度こっちで会って詳しく話をしたいって!」

 「え、本当?」


 ナラから手紙を受け取って、エメは内容を目で追った。

 じっくりと時間をかけて読んだ後に、「確かに……」と呟いた。


 「とりあえず、お父様達にも話そうかな!?」

 「あ、待って!」


 すぐにでも部屋を出ようとするナラに、エメが待ったをかける。


 「これ、本当に大丈夫かな?興味だけで何も進展しないこともあるかもよ?」

 「え、わざわざこっちに来るのに?」

 「そうなんだけどね。……でも、解決しなかった場合、がっかりするでしょ?とりあえずナラだけ話聞いてから、他の人達に話すか判断しても良いんじゃないかなぁ?」

 「うーん……そんなものなのかなぁ?」


 あまり納得はしていないナラだったが、エメの言い分も一理あるかと思い、受け入れることにした。


*****


 約束の日になり、ナラは友人に会って来ると家の者に話し、港に向かった。

 どうせ後ろから護衛が付いてきているだろうが、それでも構わないと思いつつ、船の到着を待っていた。

 しばらく待っていると、大型船が港に着岸した。

 船から人が一通り捌けていったところで、明らかに上層階級であろう男性が、数名ほど人を従えて出てくる。

 ━━高級感を漂わせている礼服に、距離があっても整っていると分かる顔立ち。

 そんな紳士が美しい姿勢で、真っ直ぐナラの方へ向かって来ている。


 「ごきげんよう、ナラ嬢でしょうか?」


 穏やかな口調で声を掛けられ、ナラは戸惑いながらも答えた。


 「はい、ヴェイル家のナラと申します。……その、失礼かもしれませんが、よく私だと分かりましたね」


 緊張しながらカーテシーを行った後、ナラが訊ねると、紳士は微笑んで答えた。


 「写真を貴方のご友人から見せてもらっていましたので。……おっと、申し遅れました」


 紳士は帽子を取り、一礼する。


 「セルウォース侯爵、ルシアンと申します」

 

 そのあまりにも優雅な振る舞いに、たじろぐナラであったが、テオのためにも無礼のないようにと、気を引き締める。


 「食事は済ませましたか?よろしければこちらに……」


 そう言いながら、食事ができる場所へ案内しようと後ろを振り向いたナラであったが、目線の先に見覚えのある二人を見つけ、言葉を失った。

 ━━エメとテオだ。

 二人とも片手に飲み物らしき物を手にし、こちらへ向かっている。

 ふと、エメが通行人にぶつかったのが見えて、ナラは思わず駆け出した。


 「大丈夫?」

 「へーきへーき、これもこぼれなかったし」


 そう言ってエメは、自慢げに手に持っていたレモネードをナラに見せた。


 「お腹も減ってたし、美味しそうだったから買っちゃった。ねぇ、テオ」


 テオはレモネードを飲みながら、黙って頷く。

 

 「それは良いんだけど、何で二人がここに……」

 「すみません、私が呼びました」


 後ろから来ていたルシアンが、にこやかに声を掛け、ナラは目を丸くした。


 「ナラが出掛けた後に速達で連絡が来てて。テオ本人とも話したいっていう内容だったから、とりあえず追ってきたんだけど……」

 「申し訳ございません、混乱させてしまったようですね。しかし、御本人の様子も伺いたいと思ったものですから……」


 急な展開と説明とで、ただ戸惑うしかないナラにルシアンは更に話した。


 「それと、これは私の我儘ではございますが、せっかくアルケアに来たからには、かの有名な渓谷をひと目見たいと思っておりまして。ナラ嬢はヴェイル家の方だとのことで、よろしければ案内していただけたら、と。……是非とも」

 「え?」


 またも急な申し出に、ナラはいよいよ困惑してしまった。


 「実は馬車もすでに用意しております。詳しい話は移動しながらできたら、と思っているのですが」


 上手く考えがまとまらずにいるナラに、エメが耳打ちをする。


 「手紙にもそのこと書いてて、ここまで来るのに乗ってた馬車、もう帰しちゃってるんだよね」

 「えぇぇ」

 「一応、警護の人は控えてもらってるんだけど……」


 ひそひそと話をする二人。

 その様子を見たルシアンが、申し訳なさそうに声を掛ける。


 「私もあまり時間が作れなかったものですから。ご迷惑をおかけしますが、いかがでしょうか?」


 時間が作れなかった、との言葉にナラは揺れ動いた。

 ナラは横目でテオを見た。

 ━━この機会を逃してしまったら、次の機会は訪れるのだろうか?


 「……分かりました、セルウォース侯爵。私で良ければ、案内させていただきます」


 意を決して、ナラは差し出されたルシアンの手を取った。


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