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いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第一章 『ギフト』の国

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第3話 「残念」

 「ラプトル?」

 「はっきりとは分かりませんが、ラプトルの系統では?とのことです」

 「何それ、初めて聞いたわ」


 それはこっちだってそうだと言いそうになったが、ナラはその言葉を飲み込んだ。

 職員はドロマエ何とかの仲間……などと言っていたが、正直飲み込めていない。

 ナラにとってその手の生物はあまり馴染みがなかった。

 強いて言うならば幼い頃、家にあった図鑑に載っていたのを読んだことはあっただろうか。

 「こんな生物がいたんだなぁ」と感心した記憶はあるのだが、曖昧である。


 ━━穏やかな日差しが、心地よいはずの午後。

 剪定した庭木や花々が美しさを誇っている東屋にて。

 ナラと老婦人はお茶を口にしていた。

  彼女はナラの父方の祖母だ。

 お茶を口に運ぶ完璧な所作、威厳な顔立ち、そして彼女の夫が亡くなって以降、黒に統一されたドレス。

 どれもが祖母の人となりを表している。


 『ギフト』は、例外はあるものの、おおよそ家系によってある程度の傾向がみられるとされている。

 ナラの家系は、爬虫類系の『ギフト』を多く輩出している、アルケアの中でも古く由緒正しい一族であった。

 その中において、前当主の妻である祖母は、絶大な影響力を持つ存在であり、ナラにとっては畏怖の象徴だ。

 ナラは祖母にとって三男の娘にあたり、厳密に言うと本家筋ではないが、こうしてお茶やパーティーに呼ばれることが度々あった。

 それらはナラにとっては身構えてしまう時間でもある。

 ━━今日ナラが呼ばれた目的はきっと『覚醒の儀式』の結果について、だろう。

 ナラはお茶の席について早々、その話題に触れることにした。


 「どうやら肉食系の絶滅種のようで……あまり多くない『ギフト』だから、分かるまで時間がかかったようです」


 ナラが説明した瞬間、祖母は一瞬カップを持つ手を止めた。

 しかし、すぐに「そう」とだけ言って、再び紅茶を一口、口にする。


 「……それは残念ね」

 「え?」


 ━━木々のざわめきが、いやに反響して聞こえた。


 「嫁ぎ先で嫌がられるかもしれない」


 こちらの様子を伺うことなく、祖母は続ける。


 「……学園でしっかり制御する方法を学びなさい」


 全身が凍てつく感覚を、ナラは覚えた。

 正直、その後のことはあまり覚えていない。

 ━━確かに、この『ギフト』を与えられたことで、多少不安を感じてはいた。

 しかし、祖母からそういった判断を下されるものだとは思っていなかった。


 (……これは「残念」なもの、なの?)


*****


 ……嫌なことを思い出してしまった。

 ナラは帰宅し、夕食の後でさえ、晴れない気持ちを抱えたままでいた。

 自分の部屋に入って気分転換に手紙を書こうと机に向かうも、ペンは進まずにいる。

 そうしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。


 「ごきげんいかがかな?愛しのマイガール」


 整えられた髪に、センスの良い礼服。

 嫌味がなく、上品な時計などのアクセサリーを身に着けた紳士━━父だ。

 仕事で帰宅が遅くなることが多い彼であったが、疲れた様子など、どこにも見当たらない。

 むしろ朝出勤する前だと言われても、疑わないほどの余裕を持ち合わせていた。


 「君のママが心配していたよ、何だか元気がないってね。何かあったのかい?」

 「……別に、何もないよ」

 「さしずめ、『ギフト』のことだろう?」


 ギクリとして父に目をやると、彼は相変わらず余裕のある微笑みを浮かべていた。

 ━━この父に隠し事をするのは容易ではない。

 そう思ったナラの感情でさえ、手に取るように分かっているのだろう。


 「ハハハ、それじゃあ今度の土曜日、気分転換にパパと一緒にお出掛けしようじゃないか」

 「お出掛け?」

 

 ━━ナラは目を丸くした。

 


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