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いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第一章 『ギフト』の国

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第2話 『覚醒の儀式』

 友人と別れナラは一人、個別授業の教室へと向かう廊下を歩いていた。

 開いていた窓からは、生徒達の賑やかな声が聞こえてくる。

 ふと目をやると、ヒグマとゴリラが組み合っているのが見えた。

 授業前にじゃれ合っているのだろう。

 ナラは何となくいたたまれない気持ちになり、目を反らした。


 (……コントロールできたとして、)


 先程、友人に返すことができなかった言葉が、脳裏をよぎる。


 (何になるんだろう)


 そう思いながら、ナラは『ギフト』を受け取った日のことを思い出していた。


*****


 アルケアの国民は全て、一つの生物の能力、特性を有し、その生物に変化することもできる。

 その能力を、この国では『ギフト』と呼んでいた。

 『ギフト』が判明するのは個人で様々であるが、十五歳を迎える誕生月で『覚醒の儀式』を行い、その後の進路を決める者が大半であった。

 ナラも例に漏れず十五歳になり、伝統的な白い衣服をまとって『ギフト』の研究施設へと向かう。

 入ってすぐに案内された広間に足を踏み入れると、その異様な光景にナラは驚きを隠せなかった。

 前方には、祭壇があり、その上に白い花や植物の葉、果物や穀物、干した魚や肉などが供えられている。

 更に目を引いたのが、祭壇の後方にある巨大なタペストリーだ。

 そこには実に様々な、抽象化された動物の姿が刺繍されていた。

 ━━まるで知りうる全ての動物を入れ込んだような。

 ほどなくして、儀礼的な衣服を身にまとった人物が二人、広間に入って来る。

 一人は祭壇に向かい古い言葉で歌のような祝詞を上げ、一人は歩きながら一定のリズムで太鼓を打ち鳴らしていた。

 ━━とても厳かで、神聖な儀式だったと思う。

 施設の外装は近代的。

 その中で古い宗教色の濃い儀式が行われているのかと、ナラは不思議な気持ちになった。

 儀式が終わると、白衣を着た職員が別の部屋に案内する。

 今度は打って変わって━━というよりは、元の雰囲気に戻って、白いこじんまりとした部屋に大きな鏡がどんと構えている異様な部屋であった。

 部屋の手前に小さなテーブルと、その上に白磁のカップが置かれている。

 ……そのカップの中の薬を飲んで、鏡の前で待機する、ということらしい。

 職員は、隣の部屋で待機してるので自分の良いタイミングで鏡の前に立つよう説明し、ナラは一人部屋の中に取り残された。

 意を決して薬を飲み干し、鏡を覗きこむ。

 口に広がる薬の苦さと、耳に残っている儀式の太鼓の音。

 緊張がピークに達した時、鏡に映った像にナラは言葉を失った。

━━それは思いの外、大きくはない、大型犬サイズの生き物だった。

 羽毛のような毛に被われ、尾は長く、二本脚で立っている。

 腕は飛ぶには小さい翼があるようだったが、鳥には思えない。

 手足には鋭く長い爪が見える。

 嘴はなく、どちらかと言うと顔は爬虫類に似ているような……。

 ━━それと目があったところで、ナラは意識を失った。


 ナラが目覚めると、そこはベットの上だった。 身体が重たい。

 鈍い頭痛に頭を押さえると、布が巻かれていることに気付く。


「目が覚めたかな?」


 そう言って現れたのは、先程ナラを案内した施設の職員だった。

 何を話していいのか分からず声を発せずにいると、それを察してかナラの近くに寄って穏やかに話し始めた。


 「君は無事『ギフト』を覚醒させたのだけど、どうやら暴走してしまったようでね。変化した後、部屋から出ようとして壁にタックルし始めたんだ。やむを得ず催眠ガスを流し込んだんだけど、体に不具合はないかい?」


 気だるさと頭痛がするが、それ以外は大丈夫そうだと答えると職員は微笑んだ。

 そして念のため医者に診てもらおうと話した後、スッと姿勢を正す。


 「君の『ギフト』についてだが……申し訳ない、まだはっきりしていないんだ。私も長いことこの仕事に携わってはいるが、記憶を辿る限りどの事例にも当てはまらなくてね……」

 「そうなんですか?」 


 不安そうにしているナラに職員は「大したことはないさ」と笑ってみせる。

 そうして癖なのか顎に手を当て、少し考えるような素振りを見せた後に、何か閃いたのだろうか、ナラの目を見た。

 

 「……君のファミリーネームはヴェイルだよね?ヴェイルと言ったら、あのヴェイル家の?」

 「……はい、おそらく想像した通りのヴェイル家だと思います」

 「そうかそうか、なるほどなるほど……」

 

 そう言うと、職員はしばらく自分の世界へと入り込んでいた。

 やがて世界巡りに満足したらしい職員が口を開く。 


 「もしかしたら、これは珍しい事例なのかもしれないね」


 職員の声色は、嬉々としたものが混じっている。

 冷静な態度に努めているようではあるが、意図せず幸運が降ってきた様な、何か良いものを見つけたような、そういった感情が見え隠れしているようだ。

 ━━ナラは布団の端を強く握りしめた。

 




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