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いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第一章 『ギフト』の国

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第1話 『ギフト』の国

 『アルケア現象』という言葉がある。

  閉鎖的な空間、環境において独自に進化、発展を遂げたことを示しており、その名の由来は、とある島国の名前であるという。


 その島国、アルケア王国。

 そのとある学園にて、少女━━ナラは、晴天の空を見上げていた。

 ワシ、ツバメ、ペリカン、ハチ、カブトムシ……様々な種類の空を舞うもの達が校庭の芝生の上に着地したかと思うと、それらは人の形へと変化する。

 ━━それを、誰も異様な光景だとは思っていない。

 近くの水辺に目をやると、カバが水辺に接する階段から上がり、ペンギンやサケがジャンプして陸地に上がり、最後にはシャチが勢いよく打ち上げられて、それも皆人間の姿へと変わっていった。

 ナラのように人の形をした学生が、校舎へ向かう姿も少なくはない。

 人間の形のまま、人の間を颯爽と縫っている者もいる一方、ウマやチーターがその中に混じって歩き、サルとガゼルが校門まで競争をしている。


 ━━これが、アルケア現象と呼ばれる所以である。

 まだ魔術も存在し、科学技術も発展しているこの世においても、生物の能力を取り入れることに特化した国は他に類を見なかった。


 目線を戻し、ナラが校舎内に入ろうとしたところで、ふと肩に水色の羽をした頭の黄色いセキセイインコが止まる。

 それはみるみるうちに、快活な女子の姿へ変化した。


「おはよ、ナラ!」

「おはよう、カレア」


 金髪でウェーブのかかった緩いツインテール、ライトブルーの大きな瞳、そしてカラフルなネイル。

 ナラがカレアと呼んだ少女は、来て早々にお喋りを始める。


「ねぇねぇっ聞いてっ!昨日の数学の課題分かんなかったんだけど!これっぽっちも!というかあの先生教え方、分かりにくいって!」

「うーん、確かにね……」

「これさー、絶対『あの子』の方が分かりやすく説明してくれるよね!もうっ!」

「それは、ありえるかも」


 などと、通学中の学生らしく他愛もない話をしながら二人は歩き出す。

 突如、ナラの背後に衝撃が走り、膝がガクンと崩れた。

 慌てて後ろを振り向くと、息の荒いハイエナがナラを睨み付けていて、やがてそれは目付きの鋭い少女へと変わった。


「ちょっと!また突っ込んで!危ないって言ってんじゃん!」


 カレアは声を荒げた。

 ━━ベージュの毛先が跳ねたショートヘア、雑に着崩した制服、こちらを睨むオリーブグリーンの瞳……。

 ハイエナの少女━━ミアはカレアの注意を全く意に返さず、ナラに啖呵を切る。


「見たぞ見たぞ!おまえ、転んだ子ども助けて、またお礼言われる前に逃げてた!意味不明だ、意味不明!」


 カレアは「え?また」という顔をしたが、すぐに気を取り直してナラを庇う。

 そうしていると「馬鹿アネキー!」と叫び声が響いた。

 ミアとよく似た顔立ちの少年だった。

 異なる部分と言えば、ミアほど鋭くはないダークブラウンの瞳の持ち主、といったところだろうか。

 彼はミアの双子の弟、ルゥである。

 ルゥは来て早々、姉の首根っこを掴んだ。


 「わりぃ、いつもごめんな。怪我してないか?」

 「……大丈夫」


 ナラが立ち上がってそう言うと、彼は安心したようだった。

 首根っこ掴んだまま姉に謝罪するよう促すも、そっぽを向いており何も話す気にはならないらしい。

 ルゥは溜息をつく。


 「本当ごめんな。その、あまり真に受けないでくれ」


 そう言うと、そそくさと去って行った。


 「……お礼言われなくてもそういうことできるの、ナラの良いところだと思うけどさ」


 双子がいなくなった後でカレアが呟く。


 「別に減るもんじゃなし、普通にお礼受け取っても良さそうだけどなー」


 ナラは言葉に詰まった。

 カレアはそれに気付いたのか、「今のなしね!」と笑顔を作り、別の話題を振った。


 「そういえば一限目って実技授業だったよね?ナラは……」

 「うん、まだコントロールできてないから、個別授業だよ」

 「そっか、難しい『ギフト』だからかな?早くコントロールできると良いね」


 善意で話すカレアに、ナラは「そうだね」としか言えなかった。


 (コントロールできたとしても……)


 喉元でつっかえたその言葉は、ずっとナラの胸元でぐるぐると駆け巡っていた。




ここまで読んでくださいまして、ありがとうございます!

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