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【完結】いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第三章 花まつり

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第17話 『オニヤンマ』少年の事件簿(後編)

 オニヤンマの男子は『妖精さん』の正体を聞いたその足で、ナラがいるクラスを訪れた。

 そこで初めてナラの姿を目にして、男子のボルテージは最高潮に上昇した。

 声のイメージと同じで、慎ましやかで奥ゆかしそうだ。

 ━━しかし、彼女の周りは派手めなクラスメイトが囲っているのである。

 特に、恐ろしいほどの美人が常に彼女の隣にいて、腕を組んでいた。

 非常に、非常に!声を掛けにくい!

 まごまごしていると、日は無情にも過ぎていった。

 男子は何度もナラのクラスの様子を伺っていたところで、友人達と離れ彼女が一人で歩み出していたのが見えた。

 それを後から追っていた男子は、どぎまぎした気持ちを抑え、こういう時は勢いだ!と彼女の前に飛び出した。


*****


 友人達と離れ、ナラはいつものように個別授業の教室へ向かっていた。

 もう少し手前の教室なら良いのになぁ……と思いながら歩いていると、突然目の前にもの凄い勢いで見知らぬ男子が躍り出た。


 「すみません!『妖精さん』ですよね!?」

 「ひぃぃっ!」

 「ごめんなさい、驚かせてしまって!『妖精さん』ですよね!?」

 「違いますっ!!」


 これは関わっては、いけない人間だ!

 ナラはパニックになっていた。

 その瞬間、背後から勢い良く四足歩行の獣が前に出た。

 ━━ハイエナだ。

 それがルゥの形に変化する。


 「なんだ、オマエ……」


 今まで聞いたこともないドスの聞いた友人の声に、ナラは一瞬心臓がヒヤリとした。


 「ナラ、どうかしたの?」


 更に背中を軽く叩かれ、エメが現れた。


 「この人知り合い?」

 「ち、違うよ!」

 「ふぅーん?それじゃあ何か用なのかなぁ?」


 そう言って、エメはにこにこと男子を見た。

 軽い口調ではあるが、その笑顔に圧を感じる。


 「違うんです!先日自分、体調悪くて……その時に彼女から水貰ったんです!そのお礼がどうしてもしたくて!これ、その時のボトルです!」


 「ありがとうございました!」と言いながら男子はナラに紙袋を差し出した。


 「……あ、あの時の……」


 多少心当たりがあったナラが紙袋を受け取ると、中には確かに自分のボトルと小さなお菓子が入っていた。


 「よろしければ……その、お友達になれたらなぁーっと……」


 もじもじしながら男子は言った。

 それを怪訝そうな目でルゥが見ている。

 エメは、少し悪い笑顔になって言った。


 「そんなこと言ってー、下心あったりするんじゃないのー?」

 「……」

 「あ、あるんだ」

 「ちがうちがっ!今のナシです!無し!」


 必死に首を横に振る男子。

 またルゥの雰囲気が凶悪になりかけているのを察して、ナラは前に出た。


 「あの、こっちが勝手にやったことなので、お礼は良いです。……あと、このことは内緒にして欲しくて」

 「え、何で?」

 「あんまり人に知って欲しくないんです」


 男子はポカンとしていたが、やがて自分の中で納得したらしく、「なるほど」と呟いた。


 「……友達が増えるのは嬉しいんですけど。でも私なんか…」

 「本当!?やったー!!」


 ナラの言葉を最後まで聞かず、男子は喜びの声を上げた。

 ルゥは隣で舌打ちをしていた。

 それには気付かず、男子は嬉々としてナラに近付く。


 「というか、人助けだけじゃなくて、人の恋実らせたり、痩せるの手伝ったりするんですね!そういう『ギフト』?」

 「……え?」


 一瞬にして小宇宙に引き込まれたナラに、エメが不敵な笑いを浮かべる。


 「ふふふ、そうだよ。恋愛成就、合格祈願、家内安全、何でも叶えてくれるんだ。君もナラに祈りを捧げると良いよ」

 「ちょっ、ちょっと」

 「うわぁぁぁ、なんかありがたい気がしてきたぁぁ!」

 「何で!?」


 誤解を解く前に予鈴が鳴り響き、再びパニックになりながらも、ナラは教室へ急いだ。


*****


 「なにそれー!ナラ『妖精さん』になっちゃってるんじゃん、面白すぎるって!」

 「笑いごとじゃないよ……」


 ランチの時間になり、カレアやミアも加わってオニヤンマの男子の話をすると、カレアはお腹を抱えて笑い出した。


 「というか、おまえら何で別れた後すぐこいつ助けられたんだ?……ずっと見てたのか?気持ちわりぃ」


 ミアが真顔でそう言うと「たまたまだし!」と

ルゥは動揺し、エメは「ひどーい」と大袈裟に傷付いた素振りを見せた。

 

 「こーら、あんま言い過ぎないねー」


 それをカレアが止めた上で、ルゥとエメに向き合う。


 「でもさ、要は自分らの推しにファン候補が増えるようなもんでしょ、独占欲拗らせるより喜べば良いのに」


 急に何の話をしているのだろう、とナラは思ったが、カレアは更に続ける。


 「仮に拗らせるにしてもさ、エメは良いよ、分かる。でもルゥはアウトでしょ。ちょっとは反省しなね」

 「なっ!」


 その言葉にとどめを刺されたらしい。

 うなだれるルゥを尻目に「おまえもけっこう言うよな」とミアが呟いた。

 エメは満足気にしている。


 「あのー……さっきから何話してるの?」 


 ナラが話の輪に入ろうとすると、カレアは笑って答えた。


 「いいのいいの、気にしない!」


 ルウの背中をばしばしと叩きながら「これ、いじめじゃないからね」と言った。


 「それよりさ、ナラ最近元気なかったでしょ?ちょっとは気分転換になった?」


 ナラはほんの少し動揺した。

 ナラの感情の機微に、カレアはいつも聡い。


 「……どう、なんだろうね」


 答えた頭の隅で、テオの顔がちらついていた。

 ━━気にかけてもらっているのは、ありがたい。

 そう思いつつも、ナラは複雑な気持ちになった。


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