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【完結】いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第二章 庭と渓谷

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幕間 イリス③

 下宿先にて。

 イリスは怒っていた。


 (セルディアスの奴らめ!)


 ━━淑女たるもの、感情に任せて乱暴な言葉を使ってはなりません。

 母のその教えは、遠い昔に海の底へ沈めていた。

 というのも、留学先の学園にてイリスが何かする度に、


 「あらまぁ、イリス様はセルディアスのマナーがお上手なのですね」

 「言葉もお上手ですわ」

 「魔法も使いこなされて素晴らしいですわね、オホホホ……」


 と、クラスメイトは褒めちぎるのである。

 その裏には「異国人なのに」という見下しがチラついているのを、イリスはひしひしと感じていた。


 (こっちは物心ついた時から、叩き込まれてますけど!!)


 心の中で叫びつつ、手元が暗くなってきたのでデスクライトのスイッチを押した。

 しかし、ライトは、ちかちかと点いたり消えたりを繰り返している。

 投げ出したい衝動を抑えながら、イリスは部屋を出た。

 隣接する談話室には、グレイが控えていた。

 いつもだったら近寄りもしないが、興奮が抑えられないイリスは構わず迫った。


 「すみません!ライト切れそうなので電球を取り換えたいのですが!」


 グレイは最初面食らっていたが、気を取り直して答える。


 「……それは俺の仕事ではないだろ」

 「グレイさんが一番近かったので!大家さんいないみたいですし!」


 そう言われて、グレイは渋々ライトを受け取った。

 しばらくライトを回してあちこち見ていたグレイだったが、あることに気付き、ぼそりと呟く。


 「……電球取り換えたところで、これつかないぞ」

 「え、どういうことですか?」

 「このライト、『魔鉱石』で動いてる」

 「『魔鉱石』?」

 「こういう『魔道具』の原動力になる鉱石のことだ。……今は採取されてないから、もう使えない」

 「『魔道具』?……って、使えないということですか!」


 よく分からない単語が出てきたが、それより使えないことがショックでイリスは頭を抱えた。


 「……大家さんが帰ってきたら別のライトに交換してもらいましょう。……はぁ、とりあえず課題は談話室の方でやることにします」


 とぼとぼと部屋に戻ったイリスだったが、ふと良いことを思いついたとばかりに課題を手に取って、談話室へ走った。


 「すみません、課題付き合ってください」


 一度話してしまえば怖いものはないと、イリスは突っ立っているグレイに声を掛ける。


 「……それは俺に言っているのか?学友にでも付き合ってもらえば良いだろう?」

 「そんなの、いたら頼まないでしょう?」


 グレイは何も言わなかったが、目だけは強く訴えかけていた。


 「何ですか、その哀れむような目は!……まぁ、気を取り直して、この魔法の杖の振り方なんですけど」

 「……俺は無魔力者だ。魔法の使い方なんて知らない」

 「えぇっ、それじゃあこれは一人でするしかないか……じゃあ、魔法ではない課題を」

 「……ちなみに、学校も行ってないからな」

 「ぐっ!だから、そういうのは早く言ってくださいって!……もう、それじゃあ練習台にこの木を持って…」


 もはや意地だとばかりに、イリスは魔法の課題で浮かせる木の枝をグレイに差し出した。

 そうしたところで、何も反応が返ってこなかったので、イリスはグレイの顔を見た。

 顔半分しか見えないが、彼は無言でイリスを見つめていた。


 「何でしょう?まだ何かありますか?」


 顔をしかめるイリスに、グレイはためらったように答える。


 「……普通、アンタのような身分の高い人間は、無魔力者で無学の人間を差別する。……近寄りもしなくなるんだが……」

 「……はぁ?」


 予想していなかった答えに、イリスは信じられないとばかりに声を荒げた。

 

 「そんなセルディアスの事情を当然の様に言われても困ります!何なんでしょうかね、そんなの知るわけないでしょう!どうでも良いわーー!」


 「セルディアスの奴らめ!お前達の基準がスタンダードだと思いやがって!」

 と、イリスは心の中で叫んだ。

 グレイは面食らったかのように、イリスを見ていた。

 イリスはそんな彼に再度、木の枝を差し出した。


 「で、はい。この木持ってもらっても良いです?」

 「え、あー……あぁ」


 グレイは言われるがまま、枝を受け取った。


 ━━その後、帰宅した大家。

 彼は、嬉々として木の枝に魔法をかけて飛ばす少女と、床に落ちた枝を黙って拾う大柄の男……

 という、異様な光景を目にすることとなった。


基本イリス編はこういった空気感です…

さて、次から本編に戻ります!

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いつもやってくれている方、本当にありがとうございます、励みになっています!

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