表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第二章 庭と渓谷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/57

第11話 『ミミズ』の少女

 「水余ってるし、こっちの方も水あげよっか」


 そう言ってエメは、花壇の隣にあった畑の方へ近付いた。


 「あぁでもそっちは……」


 ナラが声を掛けようとしたところで。

 地面の中から、勢い良く手が飛び出した。

 ━━人間の手である。


 「うわぁっ!」

 

 エメは飛び上がってナラの腕を掴んだ。

 ナラも目を見開いて固まっている。

 地面から出たその手は伸びて腕となり、そこを起点にぼこぼこと人の身体が地面から現れた。


 「あ、どうも。こっち水は良いですよ」


 ━━女の子だった。

 制服を着ているので、この学園の女子生徒だろう。

 女子は制服に付いた土を払った。

 そして近くに置いてあったバッグから眼鏡を取り出し、バインダーに挟んでいた紙に何かメモをしている。


 「……えっと、何してるの?」


 エメがその光景を無視できず声を掛けると、女子は顔を輝かせた。


 「実験結果まとめてるんです!私ミミズの『ギフト』なんですけど、ミミズ体でどのくらい干渉するのが効率良く土を豊かにできるか、調べてるんです!」

 

 よくぞ聞いてくれました、とばかりに女子は語り出した。


 「つまり、今土に潜って土壌を豊かにしてた、ってこと?」

 「そうですそうです!ちなみにどうやって豊かにしてるかは、乙女の秘密ですからね!」

 「そ、そっか。研究熱心だね」


 あまり人に対して態度を崩さないエメが、動揺を隠せずにいた。


 「はい!私この『ギフト』活かしたくて!」


 それを気にする様子もなく、何かスイッチが入ったらしい女子は嬉々として話を続けた。


 「私、同じ『ギフト』の兄がいるんですけど、兄はもっと華やかなのが良かったってがっかりしてたんです。……でも、私の『ギフト』もミミズって分かった時、私はそういう風に思わなかったんです。だってミミズって、凄いじゃないですか!」


 最後の言葉に、ナラは目の色を変えた。

 女子は特に誇張しているようにも、見栄を張っているようにも見えなかった。

 心の底からそう思っているのだろう。


 「だから私、今から色々研究して、それで卒業後は農業ビジネス専攻して『億万百姓』目指そうと思ってるんです!そして兄も私のファームで雇ってやるんです!」


 『億万百姓』、ちょっと面白い響きだな、とナラは思った。

 エメは最初こそ戸惑っていたが、今では穏やかな表情で彼女の話を聞いている。


 「……そっか、応援してるよ」


 エメの言葉に、女子は拳をぐっと握った。


 「はいっ!それじゃあ私また土の中に戻ります!」


 土の中って気持ちいいんですよ、たまにモグラにつままれそうになるけど!

 ━━と、笑いながら女子は土の中へ戻っていった。

 嵐のような一時は過ぎ去り、再び穏やかな午後の光射す、静かな時間が戻る。


 「なんだか……初めて会ったけど、熱い子だった」


 二人残されたところで、ナラはやっと口を開いた。


 「うん、きっと常日頃から思ってるんだろうね」


 いつも胸に灯っている情熱が溢れ出ているんだろうと、エメが続ける。


 「そうだね。……凄いな、あそこまで自分の『ギフト』、ポジティブに受け取ってるの」


 女子が入っていった地面を眺めながら、ナラは呟いた。

 

 *****


 個別授業で、ナラはラプトルへの変化を試みていた。

 本日の授業もこれまでと何ら変化は見られない。

 上手く形を変えられなかったり、途中で意識が飛んでしまったりを繰り返していた。

 付き合ってくれる教師に申し訳ないと思いながら、何故過去二回上手くコントロールできたのか、ナラは考えた。

 オークションと、マーケット。

 共通していたのは、気持ちが昂ぶっていたこと。

 強い感情。


 いずれにしても、と思う。

 ━━あの、風を切る感覚、嫌いじゃないな、と。

 それを自覚したところでナラは、はっとなった。

 思うようにいかない、この『ギフト』にこんな前向きな感情を持っているなんて、自分でも知らなかった。


 そう思うナラの頭に、昼間の女子の姿がよぎる。

 ━━土の中に潜っていく彼女の瞳の煌めきが、ナラには強く印象に残っていた。


 


間隔が少し狭いですが、次は二話ほど幕間が入ります。

お付き合いください。

よろしければ、評価、ブックマーク、感想などおねがいいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ