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いきものたちの国〜生き物に変身できる国で、ラプトル少女とハチドリ少年が出会った話〜  作者: きろみりぐらむ
第一章 『ギフト』の国

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第8話 マーケット

 待機していた御者は慌ててウマへと変化した。

 三人が馬車の中に乗り込むと、そのまま本家を後にする。

 揺れもなく、空調が効いた快適な馬車の中にて。


 「二人ともごめん、気を悪くしなかった?」


 開口一番にナラは謝罪した。


 「別に……」

 「ボクも何ともないよー、ああいうご令嬢のあしらい方は慣れてるし。それより、疲れたー!」

 「ちょっと、ここで靴脱がないで!」

 「だーって、ずっと猫被ってたんだよー。ちょっとくらい許して」


 そう言ってすっかり猫を脱ぎ捨てたエメは、靴を脱ぎ、靴下も脱ぎ、素足をさらした。

 素足は流石に、とナラは注意しようとしたところで、


 「それより……ナラ、あのご令嬢のこと、もしかして苦手だったりする?」


 いきなり核心に迫る質問をされ、ナラは言葉を飲んだ。


 「……昔は憧れていた人だったんだけどね……」


  口に出す言葉を時間をかけて選んだ後、答えるナラに、エメは「そっか」と話す。

 「なんと言うか、ナラって、色々抱え込んでるんだね」

 「かもね……だから私は『神様』とはほど遠い存在だよ」


 ━━かつてエメから言われたその単語。

 到底なれるはずがないと、ナラは目を伏せた。


 「それはどうかな?というか、何か気分もモヤモヤするし、気分転換しないと!」

 「えっと……渓谷に行くってこと?」

 「それは今度!それより二人とも、付き合ってよ!」


  エメはニヤッと笑い、二人に提案した。


*****

 「うわぁすごい!いっぱい食べ物いっぱい!」

 「なにこれ変な魚!」

 「見てこの刺繍、可愛い!」


 エメ曰く、ストレス発散には街に繰り出すのが一番!とのこと。

 という訳で、三人は近場のマーケットに来ている。

 到着してからというもの、エメはずっとテンションが高い。

 テオも興味がない風ではあるが、目線がずっと動きっぱなしである。


 「ねぇ、あれは何?」

 「あれは小麦粉を練って焼いたおやつ。あそこの店だと、中はカボチャとか、キノコとか、挽肉とかが入ってる」

 「それじゃあ、あっちは?」

 「揚げドーナツに砂糖まぶしたおやつだよ」

 「えーっ、どっち食べよう、迷うー!」


 心底楽しそうなエメに、ナラは少し微笑ましくなった。

 そして、こういう時は━━と先程紹介したおやつを全種類購入する。


 「シェアするのが一番」


 三等分したおやつをエメに差し出すと、いつもの彼には見られない、子どもの様な笑顔で喜んでいた。

 テオにも渡してあげると、「別に良かったのに……」と言いつつ、早々に口の中に詰め込んでいる。

 

 「……そうだ、ちょっと寄りたいお店があるんだけど、いい?」


 そう言ってナラはマーケットの更に奥の方へと、迷いなく入っていく。

 しばらく歩いた先で足を止めたのは、蜂蜜を取り扱う露店だった。


 「おやおや、お嬢さん久しぶり。今日はまたえらい別嬪さんと一緒だねぇ」


 見知った仲なのだろうか。

 店主であろう老人が、ナラに気付いて声を掛ける。


 「今日は別の友達と一緒に来ました。すみません、いつもの二つお願いします」


 「はいよー」と言いながら、店主は紙袋に商品を詰めた。


 「いつものお嬢さん達にも、よろしく伝えといて」 

 

 そう言いながら渡された袋を、両手で受け取り、ナラは大切そうに抱えながら店を後にした。

 


 「何買ったの?」


 店が見えなくなったところで、エメがナラに尋ねた。

 ナラは抱えていた紙袋から中身を取り出して、エメ達に見せた。

━━個包装された琥珀色の飴が詰め込まれている、透明な袋が二つ。


 「カレア、歌を歌うんだけど、ここの蜂蜜飴が喉に良いって来る度買ってたから。最近がんばってるみたいだし。……あと、留学した友達もこの飴好きだから贈りたいなって思って」


 そう言って歩いていたところで、ふとナラの足が止まった。

 ヘアアクセサリーが並んでいるテントでじっと商品を眺めている。


「何か気になるのあった?」

「ううん……このヘアゴム、カレアに似合いそうだなって思っただけ」


 ナラが指差した先を見ると、確かにカレアに似合いそうな花のアクセサリーがついたヘアゴムがある。

 「でもなぁ何もないのにプレゼント渡すのもなぁ……次の誕生日まで残ってるかなぁ……」などと、眉間に皺を寄せながら、うんうんと唸っている。

 ━━少し考えた後、エメが口を開いた。


 「ナラってお嬢様だけど、このマーケットにけっこう詳しいよね。カレア達とよく来てたの?」

 「うん、シェアしたら良いっていうのもカレアが教えてくれた」


 なるほど、とエメは呟く。


 「そっか、ナラはカレアも、その友達も好きなんだね」

 「うん、二人とも昔から私に良くしてくれた……だから大切」


 そう言うとナラは笑った。

 いつもはあまり笑顔を見せない彼女が、心から笑っているようだった。

 エメは目を瞬かせて、それを見ていた。


 「……ちなみにナラってお礼言われるの避けてるとこしか見たことないけど、その二人には普通にあげてるの?」


 ふと思いついたエメの質問に対して、ナラは何故か得意気に答えてみせる。


 「こういうのはメモと一緒にバッグに忍ばせとくかな。誕生日プレゼントは、毎年使用人のマイヤに頼んで届けさせてもらってるね」

 「あ、やっぱりそこはそうなんだ……」

 「カレアは、その後さりげなく『この飴のおかげで喉調子ずっと良いわー』とか、前バレッタあげた時は『見て、このバレッタめちゃくちゃ似合うでしょ』って言ってくれてた」

 「え、なにそれちょっとかわいい」

 「?……カレアは可愛いよ?」

 「もちろん、カレア『も』可愛いね!うん!」


 エメが何を言いたいのか、意味が分からずナラは首を傾げた。

 対して、エメは相変わらず上機嫌で鼻歌を歌っていた。


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