三十八話 狩人、試験に挑む 其の拾肆
殲滅黒竜討伐直後、ツカサ達は地面に降りた。そして、ツカサはウィンドベル達に目掛けて頭を下げる。
突然、ツカサが頭を下げたことでその場の全員が戸惑うもそれに対して、彼はしっかりと理由を話した。
「コイツをこの短時間で狩れたのはお前達のおかげだ。この人数での【狩り】の経験は初めてで、どうなるか常にハラハラしたが、それすらも心地良かった。儂の狩りに共に挑んでくれたことに感謝したい」
お辞儀をしているツカサに対して、真っ先に答えたのはウィンドベルであった。
「ツカサさん、そりゃ俺達の方もだぜ。最初、俺はあんたのことは疑っていて、1人で何でもやってしまうんじゃないかと思ってた。蓋を開ければ、あんたの指示は的確でいて、どんな状況でも柔軟に対応してくれた。ありがとうな」
ウィンドベルの言葉を聞き、ツカサは再び笑顔を浮かべる。
「そう言ってもらえるとはな。あはは! 何だか照れるな!」
そう言うとツカサは殲滅黒竜に目を向けて、それへと近付いた。
「ツカサさん、何するんだ?」
ウィンドベルが尋ねるとツカサが何をするのか気付いたゴトーだけが頭に手を置いた。
「む? 折角の大物を狩ったのだから、コイツを解体して、行くぞ!」
「「「「…は?」」」」
「今日は美味い飯が食えそうだ!!!! あはは!!!! 皆で味わおうじゃないか!」
ウィンドベル、メーガス、アベル、シルバはツカサが何を言っているのか分からず、頭を傾けるもその言葉の真意をすぐに理解させられる羽目になった。
***
殲滅黒竜討伐より、2時間、二次試験開始より、15時間ほど経過していた頃。
ツカサ達一行は殲滅黒竜を捌き、その肉で焼肉を行っており、異様とも光景がそこには広がっていた。
「案外行けるもんだな」
片腕の骨全てが折れており、それをこれ以上悪化しないようするための応急処置を施されたウィンドベルは最初、一番殲滅黒竜を食べることに反対していた。だが、いの一番にそれを口にしたシルバによって、無理矢理に口に突っ込まれ、飲み込むと竜の肉という未知の味わいに驚くも今では自分から進む様に食べていた。
「偶々、塩や胡椒を持ってきて良かったがなかったら案外、味気なくはあるな」
アベルも最初は戸惑っていたが、ツカサの手捌きを見て、物は試しかと考え、口に放り込むとその肉肉しさに少し戸惑いながらも箸を進めた。
「そうですね、赤身が基本なので脂身が少ないのは胃には優しいと感じます」
メーガスは串焼きにされた赤肉を口元を手で隠しながら、頬張った。
そんな中、焼かれた肉を淡々と食べ進める2人の姿があり、それを眺めていたゴトーは若干、彼らに引いていた。
「もっちゃ、もっちゃ、ツカサ、あれ取って」
「ん、これか」
「ありがと、代わりにこれあげる」
「オイ、シルバ、これ焦がしてるでは無いか」
「違うよ、ちょっと黒くなっちゃっただけだよ」
「はぁ、仕方ないな」
シルバのツカサの2人は殲滅黒竜の肉を一心不乱に食べ漁り、口周りをその肉汁で赤く染め上げた。
「すごいな」
「だな」
「シルバは、意外とあれが気に入ったのか?」
そんなやり取りの後、ある程度、頬張り終わったのか、ツカサは殲滅黒竜の肉を袋に詰めるとシルバはそれを幾つか貰い、腰につけた。
「ウィンいいでしょ」
「へいへい、よーごさんしたね」
「食べたいって言っても分けてあげないから」
「いらねえよ」
そして、ツカサ達は準備が整うと部屋の奥にある扉の前に集まった。
「さて、ようやくか」
「ゴール目前で急にバーベキュー始めたしな」
「いい思い出にはなりましたね」
「あはは! 良かっただろう!」
「最高だった、また、やってツカサ」
「あはは、でも、まぁ、何となって何よりだよ」
全員は会話を交えながら、代表者であるアベルが扉に手を置くと、それは重い音を立てながら閉ざされた部屋への入り口を開いた。
黄金色が輝く部屋には様々な宝石、大量の財宝が残されており、そこが【迷宮】の終着地点であることを1人を除いて理解する。
一同がその部屋に入った瞬間、全員の目の前に突然、モーダルが開き、そこにとある文字が刻まれていた。
「迷宮攻略成成功」
「む」
ツカサは突然、視界に音も無く現れたモーダルに対して、無意識に攻撃するとその場の全員が驚くもゴトーがすぐにそれを宥めた。
「ツカサさん! それは別に攻撃じゃねえよー!」
「そうなのか? 目の前に出てきたから、つい」
ツカサをゴトーが落ち着ける最中、続けてシルバが喋り出した。
「こう言うお宝とかはどうするのー?」
「そこら辺はWDGが采配する。踏破後の【迷宮】はWDG本部と転移が可能となって、全て持って帰れる。だが、踏破したパーティのメンバーから等分し、20%をWDGに納めることになってる」
アベルが応えるとシルバは少しばかり不満を漏らした。
「結構取る。腹立つ~」
緩やかな時間が経っていたその時、部屋に突然、試験官であるサー・アルマンダインが現れるとツカサはそれに対して、ナイフを構えた。
「ふん、いい判断だな。ホシナミ・ツカサ」
「アルマンダインか。突然、現れたから構えてしまったぞ」
出会ってから数秒で、ツカサとアルマンダインは火花を散らす。ただ、アルマンダインは自分の役割を果たすために、その場に来ており、睨みつけてくるツカサを無視して、その場にいる全員に向けて声を上げた。
「アベル・パティンソン、シルバ・ドラニアス、ウィンドベル・ヴォーダイン、メーガス・モリガン、ゴトー・ミキヤ、そして、ホシナミ・ツカサ、以上6名を二次試験合格者とし、それ以外を失格とする。三次試験が最終試験となる。明日、追って連絡する」
それを伝え、アルマンダインは背を向けると彼らを戻すための大きめな瓶である緊急脱出道具を割ろうとした。
だが、その直前に、彼は再び口を開く。
「お前達は中型【迷宮】の中でも、最難関であるアストラを踏破した。誇れ、WDGの歴史の中でも、きっての成果になった。お前達は俺にその実力を見せた。三次試験、必ず乗り越え、ここまで登って来い」
それを残し、瓶を割ると一瞬にしてツカサ達はWDG本部へと飛ばされた。
***
二次試験終了後、三次試験の通達があるまではWDG本部で過ごす必要があり、6人はその場で解散すると各自に準備されていた部屋に向かった。ツカサは殲滅黒竜との狩りで興奮を抑えられず、狩猟に出向けないことに不満を覚えながらも片腕のウェブシューターのワイヤーが切れてしまっていることを思い出し、ベンジャミンのいる武器屋へと足を運んでいた。
「ベンジャミン! いるか!」
武器屋の扉を勢いよく開くとベンジャミンの目の前に、真紅の長く伸ばした髪を一本にまとめながら、金の眼を携え、一本の剣を腰に差した男が彼と話をしていた。
ツカサよりも遥かに背が高く、白いロングコートに身を包んだ男は扉が開かれたことで、その方向を見るとツカサを見て、彼に喋りかけた。
「ん、ああ! ごめんな、ホシナミ・ツカサ。ここに来るのは今だったか。ちょっと予想よりも早いな」
ツカサは自身をホシナミ・ツカサであると紹介してないのに自分を知っていたことで、少しばかり、その男に警戒した。
「ジーク様の予想が外れるとは珍しいこともあるのですね」
「多少はズレる時もあるさ。まぁ、気にするほどじゃ無いけどな。ベンジャミン、邪魔したな! ツカサも、また、明日!」
男はそう言うと武器屋を後にし、残ったツカサは彼が何者であるかをベンジャミンに尋ねることにした。
「あれは何だ? 馴れ馴れしいが全く底が知れなかったぞ」
「ふふふ、あの方は誰にもそうなのです。ジーク・ヴァン・オルステッド様、WDG現事務総長であり、常に先を奔る特級【探索者】になります。彼の予知により、貴方が来るのは知っておりました。ワイヤーを直しが必要なのでしょう?」
「何故、それを?」
ツカサは何も喋っていないのにベンジャミンが全てを知っていたことに訝しむも彼はそれに丁寧に答えた。
「ジーク様の【個性】である未来予知です。明日の三次試験には間に合わせるので、お渡しください」
WDG事務総長ジーク・ヴァン・オルステッド、彼の突然の来訪。
ツカサの一級【探索者】試験にどの様な影響を齎すのか? 最後の試験の幕が上がろうとする。
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