三十五話 狩人、試験に挑む 其の拾壱
ツカサが殲滅黒竜の一撃により、生死不明となった。現在、残った面々は4人、彼らは殲滅黒竜がツカサに襲いかかった後、部屋の空中にある柱の裏に集まっていた。
(ツカサさん、アベルの爺さんが生死不明、か。流石に、潮時か? 今の俺たちじゃ、あれには勝てない。ゴトーさんもボロボロだし、メーガスさん、シルバで残り三枚を落とせるのか、否か。メーガスさんの実力は未知数、シルバと俺で一枚だけは落とせるとして、だ。この状況は不味すぎる。俺も奥の手を切ったとして、この場で殲滅黒竜を倒し切るのは無理だろう。クソ、判断に困るな)
ウィンドベルが思考する中、その横でゴトーは倒れていた体を起き上がらせる。
「おい、ゴトーさん、無理すんなよ」
「ゴトー様、ポーションがありますのでこれを飲んでください。」
メーガスがゴトーにポーションを渡すもそれを受け取ろうとせず、ウィンドベルの言葉も今の彼には届かない。ゴトーは殲滅黒竜だけを見ており、空な視線を向け、何かブツブツと呟いていた。
「これなら、いける。一枚、二枚は堕とせるか? 後は、俺がやらなきゃ、ツカサさんが、居ないなら、俺がやらなきゃ、もう、あの時みたいな失敗は出来ない。許されないんだ。だから、今度は俺が」
「オイ、ゴトーさん、聞いてるか? ゴトーさん!」
ウィンドベルが何度も呼んでもゴトーは反応を示さずに、今にでも殲滅黒竜へと向かおうとした。
その時、そんなゴトーの腕をウインベルが掴むと彼の視線を自分へと向けさせた。
「ゴトーさん!」
「ウィンドベル、くん」
「落ち着けよ。今、あんたがつっこんでも何かが変わる訳じゃ無いんだ。ツカサさんも、アベルの爺さんも死んだかどうか分からん。だから、背負いすぎるなよ」
「…」
その言葉を受けて、ゴトーは何も言えなかった。さっきまで、ツカサとアベルの意志を無駄にしないためにと様々なことを考えながら纏まらない考えに何とか答えを出そうとしていたが、ウィンドベルの「背負いすぎるな」と言う言葉が、それを軽くしてくれた。
今の自分の体は何とか立てているが、いつ倒れてもおかしく無いほど、体力も気力も消費していた。
燃え盛る様な肉体の炎は既に治っているが身体中に焼き痣がついており、腕を少し動かそうとするとギシギシと筋肉が痛む様な音を立てる。
満身創痍の中、それでもゴトーは覚悟を決めて、進むことを決意した。
何故、手を動かせるのか、足は進もうとするのかは分からない。しかし、そこには理解を超えた先に見える眩い何かが、ゴトーには見えていた。
「なぁ、ウィンドベルくん」
「何だ? ゴトーさん」
「こんな俺でも、まだ、視聴者だった君は俺を応援してくれるかい?」
ゴトーの目には先ほどとは違い、ハッキリとしており、ウィンドベルの目を真っ直ぐ見つめた。燃え盛る様な炎とそれを冷ます様な氷、両方の性質を併せ持ちながら、ウィンドベルにゴトーは尋ねた。
「当たり前だろ。俺はあんたがどんな風になろうとも応援するさ」
その答えを聞き、ゴトーは微笑むとウィンドベルに向けて再び喋りかけた。
「俺は何でも背負えるほど出来た人間じゃ無いし、君に全力でもたれかかってしまう。それでも、良ければ、頼みを聞いてくれるかい?」
「んだよ、覚悟は決まったって感じだな。はぁー、こっちも色々立て直そうと思ったけど、俺はあんたのファンだからな。直々の頼みを断れる様なやつじゃねえよ」
ウィンドベルはため息を吐きながらもゴトーに直接頼られたことが嬉しかったのか、少しだけ笑いながら答えた。
「ありがとう。それじゃあ、俺に君の【個性】、全てを載せてくれ」
***
殲滅黒竜はツカサを爪で捉え、地面に叩きつけたことをその手に残る感触で理解していた。それでいて、ツカサを確実に殺すために地面へと降りるも彼を見つけることが出来ず、辺りを見回しながら三つの翼で嵐を生んだ。
「ギャァァァァァオオオオオオオン!!!!!!!!!!!」
ツカサが見つからず、殲滅黒竜は眼をグリグリと回しながら彼を何としても見つけようとしており、上空にいるゴトー達に目もくれなかった。
「そうだよな。俺なんて見ないよな」
ゴトーはそう呟くと殲滅黒竜の遥か上より、それを見つめていた。だが、今はそれが良いと、それだからこそ、一矢報いる事ができると確信する。
「ウィンドベルくん、頼んだ」
そう言うとゴトーは空から自身の体を投げ、殲滅黒竜へと一気に距離を詰めた。
最後の最後まで握りしめていた紅蓮牙とツカサから貰った剣を構え、ゴトーは新たな一歩を踏み出すために声を上げる。
「固有個性、冷華結晶、発動」
ゴトーは落下しながら紅蓮牙に自身の【固有個性】である自身の体温を下げるための冷却の能力を注ぎ込んだ。
ツカサから貰った剣には既に炎を宿させ、煌々と輝かせているが、もう片方の紅蓮牙の刃には未だにその能力が付与されていない。
それでもゴトーは諦めなかった。
紅蓮牙の紅の刃に全てを注ぎ込み、今、出来る全力で自分がやるべき事をやり遂げるためにゴトーは最後まで食らいついた。
「紅蓮牙! 俺の全てをくれてやる! だから! 今ここで! 限界を超えろ!」
殲滅黒竜まで、残り20メートル、ゴトーの叫びに紅蓮牙は…
彼の覚悟に、応えない。
紅蓮牙は知っていた。自身の使い手であるゴトーに足りない物、それはやり遂げる覚悟。しかし、それは既に満たされており、故に、応える必要などは無く、只ひたすらに力を注げば良いだけ。
紅蓮牙の紅の刃が徐々に白く染まり、その刀身は冷気を纏う。
紅蓮の炎と凍てる氷、二つの性質を併せ持ちながらゴトーは殲滅黒竜へと迫る。
嵐の中を掻い潜り、ゴトーは白い刃を携えた紅蓮牙 を殲滅黒竜の翼の付け根にぶつけると、その上からをツカサから受け取った剣の刃より放たれる紅蓮の炎を重ね合わせた。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
殲滅黒竜の翼の付け根は急激な冷却が行われたと思った次の瞬間、炎によって温度を上げられ、その部位の物質の体積は大きさを乱高下させられる。
ゴトーが狙うのは熱膨張。急速的な冷却からの高温による物質の膨張を行う、化学反応。今、ゴトーは自身が持ち得る全てを注ぎ、その一撃の策に全てを投じた。
しかし、翼に変化は起きない。
高温と低音、両方の耐性を兼ね備えた殲滅黒竜にとって、それは全く意味がなさい。
(まだ、まだだ! 燃やし続けろ! 俺の魂も! 俺の全てを! この一撃に込めて!)
それは全く意味の意味行動になる筈であった。
ゴトーが粘った数秒が、彼が投じた全ては、今、この瞬間に芽を生やす。
「固有個性、|全は一、一は全《One for all, All for one》! 発動! 個性装填! 光磁砲撃!」
ゴトーの背後から現れたのは生死不明であったアベル・パティンソン。
翼に向けて放たれた光の魔弾は黒曜の鱗を砕くと、ゴトーの炎と氷が急激にその翼の内部へと変化を与える。
「いけええええええ!!!!」
ゴトーの叫び声と共にミシミシと骨が軋み始めるとそれはある一定値を超えた瞬間、熱による膨張が行われ、翼の内部より、ひしゃげた。
翼ら"ドォォン"と言う音共に地面に落下する。
二つの翼が落とされた事に殲滅黒竜は地面に向けていた体をお越し、ゴトーとアベルに襲い掛かろうとした。
しかし、その瞬間を待ち望んだかの様に、息を潜めていた狩人が殲滅黒竜の翼に飛び掛かる。
「もう一枚の翼、貰い受ける!」
そう言うとナイフをその付け根へと振り下ろした。
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