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異世界狩人〜ダンジョンにて、狩猟する〜  作者:
1章 狩人、迷宮を駆る

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三十四話 狩人、試験に挑む 其の拾

 ゴトー・ミキヤはアベルの放つ光線が途絶えた瞬間、すぐにその翼に向かっていた。


 翼の破壊が出来なかったことを理解した時、ゴトーは自分が何をすべきかを考える間もなく、足を動かしていた。


(アベルさんが、失敗した! 失敗することも想定はしていたけど! 俺が出しゃばってどうにかなるのか?! いや、考えるな! 考えてどうなる! 今やることはアベルさんの分を、俺がやる事だ! ツカサさんが意識を割いてくれている! だから、今、動けるのは俺だ。二枚の翼を俺が落とす!)


 手に握る【遺物(アーティファクト)】の異能を解放するために、ゴトーは空を駆けながら声を上げた。


遺物解放(オープン)(かがや)け、【紅蓮牙クリムゾン・スティーラー】」


 一級【遺物(アーティファクト)】、紅蓮牙クリムゾン・スティーラー、それはゴトー・ミキヤが日本の大型【迷宮(ダンジョン)】、【阪急迷宮(ダンジョン)梅田】の十階層にて、手に入れた物。以前、新宿に持って来れなかったのはWDGへの登録申請に時間が掛かっており、持ち込む事が出来なかった。


 今回はWDGへの登録が完了しており、ゴトーが一級【探索者】試験に挑む覚悟の現れたのような物であった。


 ゴトーは既に【個性(スキル)】を発動しており、紅蓮牙クリムゾン・スティーラーとツカサの作ってくれた剣に炎を宿しており、殲滅黒竜(ファフニール)の翼へと迫った。


 吹き荒れる暴風と鳴り響く雷は辺りを飲み込み、全てを破壊するもそれでもウィンドベルとメーガスが付与してくれた防御のおかげで無傷のまま、駆け抜けるとの付け根へとゴトーは二つの刃を振るう。


烈火(バーニング・サン)!」


 【遺物(アーティファクト)】は階級毎に持っている異能の数が変わっていく。二~三級は一つ、一級は二つ、特級は三つとなっており、紅蓮牙クリムゾン・スティーラーは二つの異能を持っている。そして、今、その一つである【増長】の異能をゴトーは使用した。


 【火炎(フレア)】の【個性(スキル)】を【増長】によって、同じMP消費量でありながらも威力と効果を跳ね上げ、瞬間的な火力を生む。


 紅蓮牙クリムゾン・スティーラーの刃から湧き出る炎をもう片手に握る剣の刃にも載せ、双刃から盛る焔を殲滅黒竜(ファフニール)の翼の根元へとぶつけるとゴトーはバツの形でそれを切り裂こうとした。


 体の体温は跳ね上がり、肉体を焦がすような痛みが襲いかかるもそれでも尚、ゴトーは止まらない。


 ここで決めなければ次にすら進めない、いや、一番最初に先陣を切ってくれたアベルの頑張りを無駄にすることが、自分には出来ない、そう考えると限界を超えるために叫んだ。


「うおおおおおお!!!!!!!!」


 二つの刃がぶつけられた殲滅黒竜(ファフニール)の翼の付け根は肉を焼き切り、骨の一部をミシミシと音を鳴らしており、皮膚を簡単に裂く風と雷が常に纏わり付いているにも関わらず、ゴトーはその手を止めなかった。


 雄叫びと共に徐々に上がる体温は人の体では保たない程になり、ゴトーの体が燃え始めようとする寸前、殲滅黒竜(ファフニール)の翼の骨を彼の剣が切り裂いた。


「ギャオオオオオオオオオオ!!!!!?」


 業火に焼かれながら翼が絶たれ、その痛みに殲滅黒竜(ファフニール)は慟哭する。そんな中、ゴトーは燃え盛る自分の体を保たせるためにギリギリの所で声を上げた。


固有個性(ユニークスキル)! 冷華結晶(ブリザード・ローズ)発動(アクティベート)!」


 全身が炎に包まれる中、瞬時に肉体を冷やされ、"ジュウ"と音を立てながらその体温を下げていく。ゴトーの持つ、【固有個性(ユニークスキル)】、冷華結晶(ブリザード・ローズ)はTSPを消費することで上がり過ぎた体温を冷ますことが出来る能力。


 それによって【火炎(フレア)】を使った持続的な戦闘を可能としていた。しかし、今回の【火炎(フレア)】を【遺物(アーティファクト)】を使用した限界を超えた戦闘による処理は瞬時に全ての熱を排出出来ず、普段よりも長い時間を有する事になる。


 それが結果として、ゴトーの命を脅かす事になるとは知らずに。


(クソ、あたま、まわらん。処理が追いつかなくて、熱で体を自由に、うごかせない。次、また、俺が切らないと。そうしないと、みんなにつなげ)


 思考がまとまらない中、目の前に巨大な尻尾が迫っていた。殲滅黒竜(ファフニール)の尻尾、それはゴトーを振り下ろそうと振られた物であり、熱によって動けなくなった今の彼ではそれを防ぐ事は出来ず、なす術なく、その一撃を受けてしまう。


 "パチリ"とその広大な部屋に鳴り響いた。


 羽虫を軽く落とす様な音はゴトーを空から落とした音であり、彼は空から大地へと急転直下する。


 ウィンドベルの風の靴(ウィンド・ブーツ)によって空を浮くにも尻尾での一振りの威力は想像よりも高く、急転直下する肉体を持ち上がるほどの能力を備えていなかった。


(ああ、クソ。今になってようやく、頭が回り始めた。後、数秒あればもしかしたら避けれたかも知れない、な。ツカサさん、作戦通りにならなくてごめん。ウィンドベルくん、ありがとう。俺の配信を見てくれて)


 地上まで残り50メートルほど、その速度は徐々に加速し、地面にぶつかれば最後、自分の体は跡形もなく砕け散るであろうと考え、ゴトーはその目を閉じようとした。


「…トー! …トー!! ゴトー!!!!」


 そう、その声を聞くまでは。


***


(ツカサさん!)


「む?!」


 ツカサは殲滅黒竜(ファフニール)の気を引くためにそれの周囲を浮遊しながら、動き回っていると突然、頭の中にウィンドベルの声が響き、思わず声を上げてしまう。


(ツカサさん! あんたに話しかけてる! これは風の便り(ストーム・ポスト)って言う俺の能力だ! あんたに頼みがある! ゴトーさんが死にそうなんだ!)


 その言葉を聞いた瞬間、ツカサは殲滅黒竜(ファフニール)の翼を切り落とし、尻尾によって振り落とされたゴトーの姿を確認した。


(俺の風であんたを押し込む! 頼む! ゴトーさんを助けてくれ!)


「委細承知! 間に合わせる!」


 ツカサは空中を蹴り上げ、地面へと身を投げるとワイヤーを壁に向けて放ちながら何度も何度も加速を行い、音速に至るほどの速度でゴトーの近くまで現れた。


「ゴトー! ゴトー!! ゴトー!!!!」


 ツカサは叫ぶとそれにゴトーは気付いたのか目を開き、彼はツカサが自分を救うために来てくれた事に涙を流しそうになった。


「ワイヤーを! つかめ!」


 ゴトー目掛けてワイヤー飛ばすとそれを彼の腕に巻きつけた。


「うおおおおお!!!!」


 ワイヤーの巻き上げを使い、ゴトーを近づけるともう片方の腕にあるワイヤーを壁に向けて放つ。地面にぶつかるスレスレでツカサはゴトーを片腕で拾い上げるとスイングし、空に上げるとウィンドベルの風の靴(ストーム・ブーツ)によって浮遊が可能となったのか、彼らは地面への直撃を免れた。


 しかし、そんな彼らに向かって殲滅黒竜(ファフニール)は容赦無く襲い掛かる。


(ゴトーは瀕死、(オレ)1人を逃すのは出来てもゴトーは死ぬ。ならば! (オレ)ならコイツの一撃を耐えうると見込むか! あはは! 一世一代の取捨選択! 参ろうか!)


 ツカサはゴトーを宙に投げるとウィンドベルに向けて声を上げた。


「ゴトーを頼んだ!」


 その言葉を聞いた瞬間、ウィンドベルは風の出力を最大にした。ゴトーは自分だけがその場から避けられようとしており、ツカサも助けるために手を伸ばそうとするも彼は殲滅黒竜(ファフニール)にだけ目を向けており、それが放つ巨大な爪の一撃が直撃するのを目の当たりにする。


「ツカサ、さぁぁぁん!!!!」


 ゴトーの叫び声が部屋に響くも、ツカサから応答は無かった。


 殲滅黒竜(ファフニール)戦、その要であるホシナミ・ツカサを失う事になる。

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