三十一話 狩人、試験に挑む 其の漆
メーガスが先陣を切るもそこには敵は居らず、それを見て、ツカサは彼女がこれら事実を把握していたのでは無いかと疑っていた。
(メーガス、コイツはこの階層には敵がほぼいない事を何かしらの手段で気付いていたな)
ツカサがそんな事を考えているとメーガスは突然、後ろにいる彼らの方向を向いた。
「ツカサ様、何故、私がこの階層には敵がいない事を知っているのか疑問に思いましたか?」
ツカサはメーガスには後ろに目があるのか? と警戒するもそんな彼に対してメーガスは再び喋りかける。
「ふふ、そんなに警戒なさらないで下さい。そうですね、ツカサ様の警戒を解くために、私の【個性】の話でもしましょうか。ステータス」
メーガスは自身のステータスを表示させるとそれをツカサとゴトーに見せた。
――――――――――――――――――
【名前】メーガス・モリガン
【レベル】49
次のレベルまでの経験値「5000」
『HP』1900
『MP』200
『腕力』500
『耐久』300
『敏捷』600
『器用』75
『知力』120
『精神』400
【PP】0
【TSP】0
【個性】音波
【固有個性】心音看破
――――――――――――――――――
「私の【個性】音波は音を操ることが出来ます」
メーガスはそう言うと彼女は背中から二つの黒い筒がついた物を取り出した。
「それはジョンが持っていた武器か? いや、それよりは短いな、先が」
ツカサが見覚えのある武器に反応するとメーガスはニコリと微笑みながら応えた。
「多分、ライフルのことを指しているのですね。ですが、違います。私が持っているのはハンドガンと呼ばれる物です。オーダーメイドで銃弾では無く音を出す物ですが」
「なるほどな。それを地面とかに放てば、反響定位が出来るって寸法か」
「ええ、ゴトー様も察しがよろしくて。音は大きさから波長、高さまでも操れます。ただ、音を操れると言っても私の体から発される音は操れません。後は固有個性によって生物の音がよく聞こえます。なので、ある程度は相手の心が音で分かります」
メーガスとゴトーが話を進める中、ツカサは彼らの会話の中にある言葉が分からず、首を傾げる。
「ツカサさん、どうした?」
「ん、あ、えこー、ろけーしょん? とは何だ?」
ツカサの疑問に対して、メーガスは丁寧に返した。
「ご存知ないのですね。ならば、簡単に説明致しますわ。反響定位とは、音を発し、その反響によって物体の距離、方向、大きさなどを知ることができる能力です。分かりにくので試しに説明してみますか。ツカサ様、背後を向いて好きな数の指を立ててください」
「ふむ?」
ツカサは言われるがままに、背を向け、指を三つ立てるとメーガスは彼に対して、ハンドガンを向けて、その引き金を引いた。
一瞬だけ高い音がツカサに聞こえると彼はそれに危険を感じ、もう片方の腕で無意識の内にナイフを握りしめていた。
「指を三つ立てていますね。それとナイフを握りしめた。攻撃されたと思い無意識のうちに構えてしまったのですね」
メーガスは気にせずにツカサの今の姿を当てると彼はそのレクチャーによって反響定位が何なのかを理解する。
「なるほどな、その音で、儂達の位置や、状態を把握していたのだな」
「そうです。ふふ、ツカサ様も理解が早くて助かります」
メーガスは説明を終えると前を向き、歩き出した。
「私が八階層の前で、姿を現したのはの階層にいる魔物、迷宮主が待ち受けていることを【個性】で察したからです」
「なるほど、迷宮主戦ってなると人数がいた方が嬉しいしな」
迷宮主と言う言葉を聞き、ツカサはウキウキし始めた。
「ボス、か! 先生がよく使っていたな! 一番強いやつを指すんだろう!」
「ええ、そうです。そろそろ迷宮主がいる部屋に到着します。それと今、部屋の前には私達以外の【探索者】が3人いらっしゃいますね。彼らも仲間に出来たらしましょう。手を焼きそうな迷宮主が待ち受けているので」
そんな会話を交えながら八階層を深部に進むと一本道の先には巨大な扉があり、その前に、3人の【探索者】が座り込んでいた。
「ようやく来たな」
アベルはそう言うと彼らを待っていたのかその場に座っていた全員が立ち上がった。
「待ってたぜー、ホシナミ・ツカサ一行ー」
ウィンドベルの言葉からツカサは臨戦態勢に入るためにナイフを構えようとする。しかし、彼らの視線を確認するとそこには敵意はなく、一先ず、構えることはせずに様子を見るために、メーガスよりも一歩先に出て、声を上げた。
「儂はホシナミ・ツカサ! その部屋にいる迷宮主を【狩り】たい! どうすればいい!」
元気よく自己紹介をしたところで、それに対して、アベルも同様に口を開く。
「元気がいいことは良い事だ。ワシの名前はアベル・パティンソン。準一級【探索者】だ。ホシナミ・ツカサ、あなたとお会い出来て光栄だ」
「何故、会えて光栄なんて言うのだ? 儂はお前のことは知らんぞ」
「そうだな、あなたは知らないが、ワシらはあなたを知っている。【狩人】ホシナミ・ツカサ、【違反者】と呼ぶものも居れば、【超新星】と呼ぶものもいる。二律背反を併せ持つ【探索者】」
アベルは手を前にして、握手を求めた。
それは敵意がないことを示すものであり、ツカサ達と友好的な関係でありたいとするものであった。
「ワシにはあなたと戦う気はない。むしろ、協力したいんだ。この背後の部屋にいる怪物、黒い竜の討伐を」
黒い竜、その言葉だけでツカサは自身の記憶にいたとある怪物を思い出し、アベルの求める握手を無視して、呟く。
「殲滅黒竜、か」
記憶に鮮明に残る、自分の人生の中で最も過酷で、最も鮮烈な【狩り】。今でもあれを超える様な【狩り】は無く、ツカサはそれが本当に殲滅黒竜であるから不明であるにも関わらず、アベルの腕を掴んだ。
「アベルとやら、教えてくれ。その黒い竜の姿を。どんな翼を携えていた? 尻尾は? 鱗は? 眼は? 大きさは? 全て見たことを教えてくれ。それだけで儂はお前を信頼する」
ツカサの眼が先ほどとは打って変わって、近寄るとアベルは彼と言う存在の異質さを目の当たりにしながらもそれでも冷静に答えた。
「黒曜石のような鱗、鋭い眼光、四枚の漆黒の翼、全長凡そ30メートル前後、これで判断出来るか?」
「ああ、ありがとう、アベル。そいつは間違いなく殲滅黒竜だ。あはは! また、お前と【狩り】が出来るとはなぁ! ゴトー! メーガス! 勝手だが、儂はアベル達と手を組みたいと考える! お前達はどうする!」
ツカサはそう言うとゴトーとメーガスは互いに顔を合わせて、それに答えた。
「あんたが組みたいならそうしよう」
「ええ、私もそれで構いません」
ゴトーとメーガスから許可が降り、ツカサは燃える様な気持ちを抑える事なく、その熱意をアベル達に伝えために叫んだ。
「アベルよ、儂と一緒に黒い竜、いや、殲滅黒竜を狩ろう! あはは!!!! 6人もいる中での【狩り】だ! 大掛かりになるぞ!」
【迷宮】アストラ最終階層にて、待ち受けるのはホシナミ・ツカサが出会った最大の獲物、殲滅黒竜。
果たして、彼らは【迷宮】を踏破出来るのか!
感想、レビューいつもありがとうございます!
嬉しくて狂喜乱舞です!
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!




