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異世界狩人〜ダンジョンにて、狩猟する〜  作者:
1章 狩人、迷宮を駆る

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三十話 狩人、試験に挑む 其の陸

***


 一方、アベル、ウィンドベル、シルバの3人のパーティは八階層に至っていた。


「アストラは中型【迷宮(ダンジョン)】だし、今んところは俺達が一番早いな」


 ウィンドベルは自身の指輪に纏わり付く風からそれらを察知し、アベルとシルバに伝えた。


 ウィンドベルの【個性(スキル)】、(ウィンド)は自身の得物を通じて作り出す風を操る物。しかし、彼もまた、ゴトー同様にその能力を鍛え上げており、風を起こして迷宮(ダンジョン)内部の把握などを行える様にしていた。


「ふむ、アストラは八階層の中型【迷宮(ダンジョン)】だ。ならば、この階層にはボスがいるかもな」


 アベルがそう言うと彼らは巨大な扉を前にして、足を止めた。


「ふむ、予想的中と言った所かね。一番乗りと行こうかね」


「風を通さない部屋だからどんなのがいるか把握出来ないが、爺さん、シルバ、俺は戦闘では頼りならないからそこんとこよろしくな」


「任せて、ウィン、あなたが吹き飛ばされてもキャッチしてあげる」


「吹き飛ばされるのは前提なのかよ」


 そんなやり取りをしながら、巨大な扉に手を置くとそれは自動で開かれた。巨大な部屋に黒い影がドッシリと座り込んでおり、それは侵入者を見つけるや否や、ゆっくりと立ち上がると彼らの前に、その強大な身体を見せつけた。


 黒曜石のような鱗に部屋の凡ゆる場所へと届ける鋭い眼光、四枚の漆黒の翼を広げ、巨大な尻尾を振るった瞬間に、アベルはそれが何かを理解し、瞬時に杖を地面に向けた。


「これは…、行かんな。撤退だ」


 アベルはそう言うと杖に自身の【個性(スキル)】を込めた。


個性装填(スキル・セット)砲撃球(キャノン・ボール)


 地面に向けられた光の球は打つかると同時に爆発音と共に大量の砂煙を上げた。相手の視覚を惑わし、アベルはその場の誰よりも速く浮遊すると後ろに向かって飛んでいった。


「ナ! オイ?! マジかよ?! 爺さん!」


 ウィンドベルが声を上げるとシルバはそれに気づくと彼を抱き抱え、彼らもまた、全速力で扉に向かい、走り出した。


 扉は彼らを招き入れた直後であり、それが閉じようとするよりも速く、その部屋から逃走する。


 なんとか部屋の外に出られた、彼らであったが、シルバに抱き抱えられたウィンドベルは声を上げた。


「爺さん、ありゃ、何だ?! エリュシオンにも居ない魔物だろ!?」


 ウィンドベルはシルバから降りると興奮していたのか、少しばかり声を荒げた。それに対して、逆にアベルは冷静に顎に手を置きながらそれに応えた。


「あれがホシナミ・ツカサ、彼の頭の記憶から来ているとすれば、彼が見れば分かるのであろう。ただ、これだけはハッキリしている。あれは(ドラゴン)だ。大型【迷宮(ダンジョン)】でしか、発見されなかったはずの竜種、しかも、この世界では判明されていない、黒い(ドラゴン)


***


 ツカサ、ゴトーのペアもまた、八階層に到達しており、最後の部屋へと足を運んでいた。しかし、ツカサは突然、足を止めるとゴトーも同様に足を止め、彼に喋りかけた。


「どうした、ツカサさん」


 足を止めたツカサにゴトーはそう言うと彼は背後を向き、ナイフを構え、ある場所を睨みつけていた。


「オイ! (オレ)達を追っているのは知っている。出てこい」


 突然のツカサの怒号にゴトーは驚くもその視線の先を見つめた。そこには暗闇のみだけであり、ゴトーには何が起きているのかさっぱり分かっておらず、ツカサに再び喋りかけようとした。


 そんな時、暗闇から一つの影が伸びると白いローブを被った人が現れた。


「ふふふ、よくお分かりですね、ツカサ様」


 ローブを脱ぐとそこにはクリーム色の髪を長く伸ばし、翠色の眼を携えた女性が立っていた。デニムのショートパンツと黒いロングブーツを履いた彼女はツカサ達に敵意が無いないことを示すためにお辞儀をした。


「初めまして、ホシナミ・ツカサ様、ゴトー・ミキヤ様。私はメーガス・モリガンと申します、以後お見知り置きを」


 ニコリと微笑み、メーガスはツカサに視線を向けると彼は彼女が向ける視線から戦う気は無いことを察し、臨戦態勢を解いた。


 だが、自分達を隠れて追っていた事は事実であり、それを追求するためにツカサはメーガスに問いかける。


「七階層の途中から、何故、(オレ)達を追っていた?」


「丁度、私も同じ場所におりまして、背後からついて行けば、楽して八階層まで来れるかと考えました」


「ほう、それ程の実力を持ちながら楽をしたい、と?」


 ツカサはメーガスが嘘を言ってないことを見抜いていた。だが、それと同時に彼女の実力が底知れないことも理解しており、牽制の意味を込めて、その言葉を放った。


「ツカサ様はとても良い目をしてますね。ここまで1人で来ているので私もそれなりに知識の蓄えがございます。ですが、この最後の階層を突破するのであれば、あなた達と組むのが合理的と考えたのです」


 メーガスの言葉と視線、それには一切嘘が無い。ツカサは臨戦態勢は解いたが、感情の読めない彼女に対して、警戒心を解かずにいた。


(メーガスとやら、コイツも感情が読めない。バサラは善意によって読めなかったが、メーガスは逆に感情が透明すぎて、読めない。(オレ)が求めていた研ぎ澄まされた透明なまでの感情。何故、こうもこの世界の人は持っているのだろうな! (オレ)の欲しい物を!)


 メーガスはツカサが無意識のうちに自身に対しての興味を注ぐ様な力強い視線を向けていることに気づいており、ニコリと笑いかけた。


「ツカサ様、ゴトー様、悪い事は致しません。もう一度、お尋ねします。共に【迷宮(ダンジョン)】を踏破いたしませんか?」


 ツカサとゴトーは目を合わせる。

 それは合図であり、どちらが最初に口を開くかを彼らは無言で確認し合う。


 そして、先ず切り出したのはゴトーであった。


「まぁ、俺は別にあんたが着いてくるのは問題ない。一級【探索者】試験も別に協力するな、なんて事は一切言ってないし。なんなら、多分、そうして欲しいって言う意図もある気がするしなー」


「あら、意外ですわ。ゴトー様は意外と反対するかと」


 メーガスの言葉に対して、ゴトーは何かを見透かされるかの様な感覚に陥るも、それに抵抗するために口を開く。


「まぁ、普段なら反対するな。でも、今は誰であっても敵対しないのであれば俺は戦力として数えてもいいと思ってな。これは俺の判断だし、ツカサさんはどう思う?」


 ツカサはすぐにそれに応えた。


「ふむ、ゴトーが賛成なら(オレ)も賛成だ。メーガスとやら、お前の実力、見るだけでも分かる。ゴトーと2人での【狩り】もいいが、あまり無い機会を活かすのであれば、更に人数を増やした【狩り】を体験したいしな」


「ふふ、それは何よりです。ツカサ様、ゴトー様、改めて、メーガス・モリガン、不束者ですがよろしくお願いいたします。それでは今度は私が先陣を切りましょう。先ほどまでは皆様に頼り切りでしたので」


 メーガスはニコリと笑うと自ら、彼らの先を歩き始める。


 ツカサ、ゴトーのペアに八階層にて、メーガス・モリガンが仲間に加わり、一級【探索者】試験二次試験もまた、最終局面へと迫っていた。

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