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異世界狩人〜ダンジョンにて、狩猟する〜  作者:
1章 狩人、迷宮を駆る

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二十八話 狩人、試験に挑む 其の肆

 四階層へと至ったツカサとゴトーは積極的に魔物を討伐しながら【迷宮(ダンジョン)】を駆け回った。


 ゴトーはツカサの強さが背中を預けるにはあまりにも大きすぎて、自分の弱さが、ツカサの足を引っ張っていないかが心配で、先ほどの戦闘での言葉を思い出ししまう。


(万年準一級の落ちこぼれ、か。ツカサさんの前じゃ、しっかりやれてたせいで、錯覚してたんだろうな、俺は)


 悔しさや、負けたく無いという気持ちはあった。しかし、その自分に放たれた言葉は紛れもない事実であり、万年準一級で燻っている落ちこぼれであることはゴトー自身が誰よりも分かっていた。


 そんや中、ツカサはワイヤーによって移動し、走っていた一角獣(ユニコーン)の跨り、その首にナイフを添える。


 一瞬にして、その首元から血を溢れ出させると真っ白な馬体が赤く染まり、ツカサはそれを見て、嬉しそうにしていた。


「何だか、(オレ)のいた場所の魔物ばかり出てきて嬉しいなー! ゴトーよ! ユニコーンの肉を食べたことあるか!? 美味いぞ!」


 ツカサが見せる無邪気な笑顔にゴトーは悩んでいることがバカらしくなってきたのか、近くに魔物がいないことを確認し、剣を鞘に収めると彼がいる方向へと歩き出した。


「無いよ、ツカサさん。そんにしてもあんたすげえな。普通は【迷宮(ダンジョン)】の魔物なんて食べようとしないよ」


「む?! そうなのか?!」


「普通は食べない。【迷宮(ダンジョン)】内で殺された者は勝手に処理される。【迷宮(ダンジョン)】には掃除屋(クリーナー)って呼ぶシステムがあって、死体とかは時間が経つと勝手に綺麗にしてくれるんだよ」


「そうなのか。(オレ)の獲物を勝手に綺麗にするのは気に食わんな」


 ツカサは一角獣(ユニコーン)の体を捌き始めるとその立派な一本の角を取り除いた。


「ふむ、良いな! ゴトーよ、(オレ)が武器をプレゼントしてやる! 【安置】に向かうぞ!」


「さっきは肉を焼くと言ってたのにもう目的が変わったのかい?」


「肉も焼く! 武器も作る! あはは! こう知ってる人間と共に【狩り】をするのも良いものだな! 行くぞ! ゴトー!」


 ゴトーはため息を吐きながら彼が捌いた一角獣(ユニコーン)の肉を拾い上げ、彼らは近くの【安置】へと足を運んだ。


 【安置】の扉を開くとそこには誰も居らず、ツカサは部屋にある水辺で体を洗い始めた。


「はぁー、シャワーで体を洗いたいな」


 以前の自分であれば想像も出来ない発言であったが、それほどにこの世界の利器がツカサにとって素晴らしいものと感じていた。


 体を一通り洗い、ツカサは体を拭くタオルがないことに気づくとゴトーは彼に必要なものが何かを理解しており、それを手渡した。


「む、準備がいいな!」


「まぁな、【迷宮(ダンジョン)】に潜るには必要な物は纏めとくから今度、ツカサさんに渡すよ」


「何と! ならば、ベンジャンミンの下で揃えねばな!」


 ツカサは受け取ったタオルで体を拭くと彼はすぐに作業に移り始める。


 ツカサが取り出したのは自身がよく使うナイフとこれまで拾ってきていた魔物の皮や、【新宿】二階層で取っていた木であった。


 ツカサは一角獣(ユニコーン)の立派な角をナイフで削りながら、研磨していくと、いつの間にか、彼の腕には立派な片刃の刃が生まれていた。


「俺達と一応、試験中なんだよな?」


「そうか、そうだったな! あはは! 忘れていた」


「マジかよ、ツカサさん」


 ゴトーはあまりにも自由なツカサに少しばかり今後の心配をした。しかし、彼の視線に気づいたツカサはそれを吹き飛ばすために声を上げる。


「なーに、そんなに心配しなくていいさ。(オレ)もこの試験に合格しなければ、【新宿】に挑めなくなるらしくてな。(オレ)もただ、【狩り】のために来てる訳ではない」


 一角獣(ユニコーン)の角の刃を皮と木でしっかりと固定し、片腕で持てるほどの剣が完成させると調整を加え、完成するとツカサはその完成品をゴトーへと手渡した。


「これ、は?」


一角獣(ユニコーン)の角によって作った剣だ。ゴトー、お前の【狩り】は正直、【新宿】二階層に居た奴らと遜色無い、いや、それ以上だと(オレ)は感じている。巧みな剣捌きに冷静な足取り、どれをとっても迷宮牛(ミノス)などに負けるような者では無いはずだ」


 手渡された一角獣(ユニコーン)の剣をゴトーは眺めていると刃に反射された自身の顔が映り込んでいた。そこには不安や、希望を持てない、その様に感じる自身の頼りの無い表情が映っており、少しだけ気分が沈んでしまう。


「どうした? 何故、そんな表情をする?」


「あー、いや、その。はぁ、ツカサさん、あんた勘がいいな。そのさ、あんたは俺のことを買ってくれてるが、俺はそれに見合った様な人間じゃないんだよ」


 そう言うとゴトーはツカサに貰った剣を返そうした。


 ゴトーは自分という人間を理解している。万年準一級、そう呼ばれるのは仕方なく、肝心な所でミスをしてしまう人間である、と。


 ()()()()、そうであった。

 自分が初めて中型【迷宮(ダンジョン)】に挑んだ時。


 記憶が徐々にゴトーの脳内を蝕もうとするも彼に対して、声がした。


「? 何故、(オレ)に返す?」


 ホシナミ・ツカサは頭を傾け、ゴトー・ミキヤの目を見ており、その視線には純粋なまでの疑問のみが向けられていた。


「何でって、そりゃ、これに見合った人間じゃないから」


「何故、そう思う?」


「…」


 ツカサの視線を浴びると無性に自分という存在の追い詰められる、そんなことを感じながらもそれでも彼の問いに答えた。


「さっきも言っただろう。俺はあんたの評価に見合った人間じゃ…」


「そんな訳ないだろう!」


 ゴトーは自身の言葉を遮れたこととツカサが想像よりも大きな声を出されたことに少しだけ驚いた。


「そんな訳ないだろう、ゴトー! お前は(オレ)にここでの生き方を教えてくれた。(オレ)はお前に知識を教えて貰えなければ、ここでも(オレ)(オレ)の生き方しか出来なかった。だが、あの時の教えのおかげで、(オレ)はここでの生き方を知れたのだ。そして、それらは全て今の、(オレ)の血肉になっている。(オレ)はお前を救ったとは思っていないが、(オレ)はお前に救われている。これだけでも少なくとも(オレ)にとっては信頼に見合った人間だと考えているぞ」


 ツカサはそう言うとゴトーの渡してきた腕を無理矢理彼の胸元に移動させ、あまり見せないような優しい笑顔を見せる。


 胸元に置かれた剣の柄は手作りでありながらもしっかりと嘗められた皮によって滑らなくなっており、ゴトーの手に合う様な形をしていた。


「なぁ、ツカサさん。もし、俺があんたの前で逃げたらどうする?」


「策があって一旦、退いたと考えるな。(オレ)(オレ)のやる事を、【狩り】をするまでよ」


 ツカサの眼は真っ直ぐとゴトーを見ており、そこには一切の混じりのない本心であることが見て取れた。


 ゴトーは、その一直線な視線に再び気圧されそうになりながら、それでもその期待に少しでも応えたいと感じ、口を開く。


「あんたがそこまで信じるなら、あんたの信じるゴトー・ミキヤを俺は信じようと思う。だけど、そんなに期待するなよ」


「期待、そんな物するに決まっているだろう! 何たって(オレ)の作った剣をゴトーが使うんだからな!」


 そして、アストラ四階層【安置】で彼らは少しだけ休むとすぐに探索へと戻って行った。

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