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異世界狩人〜ダンジョンにて、狩猟する〜  作者:


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二十七話 狩人、試験に挑む 其の参

 迷宮(ダンジョン)探索開始より、1時間が経過した頃、アストラ三階層、そこに至ったのは現在、12人。


 その中でも前に進んでいたのはホシナミ・ツカサ、ゴトー・ミキヤのペア、3人でパーティー組んだ者達、そして、たった1人で進む者。


 其々、別のルートで進みながら迷宮(ダンジョン)の攻略に挑んだ。一階層から三階層まで、風景に変化はなく、壁と部屋、洞窟や、道、変わり映えのない【迷宮(ダンジョン)】でありながら徐々に魔物達のレベルは上がって来ていた。


個性装填(スキル・セット)千の砲撃(サウザンド・キャノン)


 片眼鏡をつけた髭を長く伸ばした男は空中に浮きながら、自身の茶色の髪を靡かせ、手に握る得物に力を込めると装飾のなされた杖のてっぺんより、幾つもの光線を放つ。


 放たれた光は魔物の頭を貫くと軍勢により近づいて来た幾つかの敵を自身の拳によって、殴り倒した。


「アベルの爺さん、やっぱりあんた強えな。ゴトーさんとかの勝ち馬以外ねえと思ったけど、あんたみたいな勝ち馬に乗れたことを光栄に思うよ」


 男の背後より、魔物達の死体に目もくれずに灰色の髪をツーブロックに整え、チャラチャラとした格好の青年と赤茶色の髪で動きやすいパンツを履いた少女が姿を現した。


「よく言うわい。お前の個性(スキル)があってこそ、魔物の数が一番少ないところから進めてるんだろうに、ウィンドベル」


「あはは! 爺さんさ、褒めるの上手いな、あんた。俺はそんなに強くないけど、()がいいんだ。まぁ、それ以上でもそれ以下でもないがね」


 ウィンドベルと呼ばれた青年は人差し指を立て、クルクルと手前で回すとその先から風が吹くとそれを地面に向けて放った。


個性装填(スキル・セット)風の導(ストーム・コンパス)


 風が何処からから吹き出すとウィンドベルはそこから今、自分達が何処にいて、何処に進めば労力をあまり使わずにゴールへと進めるのかを調べた。


「あー、そうか、そう言うことか。爺さん、あんたここの迷宮(ダンジョン)の特性を知ってるか?」


 するとそれに対して、アベルと呼ばれた老人では無く、そこにいたもう1人の少女が答えた。


「【生なる写鏡】アストラ。【迷宮(ダンジョン)】内部に入った人間を分析し、その記憶に眠る魔物を写し出す。しかも、魔物はこの迷宮(ダンジョン)内で最もレベルの高い人間に合わせられる」


「アベルの爺さんに聞いたんだが、急にどうした? シルバ?」


 シルバはアベルの前に立つと少しだけ誇らしげに胸を張った。アベルは彼女が何が欲しいかを理解するとすぐにポケットに手を入れ、飴玉を取り出した。


「シルバはなんでも知ってるな。飴ちゃんをやろう」


「へへ、アベルはいい人」


 シルバは貰った飴玉をウィンドベルの目の前に出し、自慢げに見せつけると彼はため息を吐きながら口を開く。


「孫と爺さんの会話を見せつけられても困るぜ」


「はは、そうかもな。ワシには孫は居ない。嫁は若くして死んでしまった」


「なーるほどね。そりゃ悪いことをした。まぁ、なんだ。さっき、シルバが言った記憶に眠る魔物を写し出し、今、迷宮(ダンジョン)内で最もレベルの高い人間に合わせられる。ここで一番レベル高いのは誰だと思う?」


 ウィンドベルは今、自分達が一番初めに三階層を突破出来る確信があった。しかし、それが良いことばかりではないことを知っていた。


「ふむ、ホシナミ・ツカサ、ヤツに合わされてるという訳か?」


「ああ、アベルの爺さん、あんたのレベルも相当だが、レベルだけならホシナミ・ツカサが一番高い。しかも、風が知らせてくれた情報はまだある」


 ウィンドベルは地面に絵を描き始めると今、自分達の位置とツカサ達との位置を精密に示した。


「なぁ、アベルの爺さん、あんたエリュシオンには入ったことあるか?」


「無いな。あそこは一級【探索者】でなければ踏み入ることは不可能。それがどうした?」


「四階層からエリュシオンでしか()()()様な魔物がうじゃうじゃ居る。本来であれば、一級【探索者】でしか入ることの出来ない場所の魔物が大量にだ。誰が原因なんだろうな?」


 ウィンドベルは指をクルクルと回しながらその問いの答えが出てくるのを待った。


 すると、シルバは自身の鼻をピクピクと動かし、何か()()を感じ取るとハッとした表情を浮かべ、口を開く。


「ホシナミ・ツカサ、ってこと?」


 シルバの答えに、ウィンドベルはこくりと頷いた。


「まぁ、個人の予想だがな。ただ、この三階層に届いた人間はボンヤリとそうじゃ無いかと考える奴らはいるはずだ」


「となると、ホシナミ・ツカサは()()()()な」


 アベルはそう言うと顎に指を置き、少しの間、情報を纏めるために考え始めた。


(入念に【迷宮(ダンジョン)】の魔物をすり潰しているにも関わらず、ワシらと同じ速度で前線を走っているのは恐ろしいことだ。他の者が踏破すればそれ以外の人間全てが不合格となる中で異常とも取れる行動でありながら、その速度を保っているのは実力が完全に飛び抜けている。ホシナミ・ツカサを狙って落とすのと前に進んで踏破するのを目指すのとではどちらが難易度が下がるのか)


 アベルの沈黙の中、シルバは辺りを見回しながらその()()がする方向に視線を向けた。


「ウィンドベル、お爺ちゃん、魔物が来るよ」


「そうだな、あまり長居してるとリポップする魔物に遭遇しちまいそうだ。爺さん、どうする? 今はあんたに指揮権を任せてるんだ。ここから進むか、三階層でホシナミ・ツカサを仕留めに行くか。動か、見か」


 迫り来る魔物の大群の中、アベルが下す判断は…。


***


 ホシナミ・ツカサ、ゴトーのペアは現在、4人の【探索者】達と対峙していた。


個性解放(スキル・セット)! 水槍(アクア・ランス)!」


個性装填(スキル・セット)! 暗愚の腕!」


個性発動(スキル・セット)! 強化(ブースト)III!」


個性発動(スキル・セット)! 遅延場(スロウ・フィールド)!」


 水を圧縮し放たれる槍の一撃、杖から召喚した黒煙の腕がツカサとゴトーへと迫る。


 残った2人は1人が放たれた攻撃の威力を倍増させながら、もう1人がツカサとゴトーの体の動きを鈍らせ、彼らを殺すための処刑場が展開された。


 音速にも至るほどの速さでツカサへと放たれる水の槍を、彼は必要最低限の動作で避けると壁に向けてワイヤーを放とうとした。


 槍を持った男はその視線によってツカサがワイヤーでの移動を試みたことを瞬時に把握し、彼がそれを放つのを待った。ツカサの袖より、ワイヤーが放つと壁に突き刺さった瞬間、男は槍をその方向へと向ける。


 しかし、移動すると思っていたツカサはそこには居らず、彼は真っ直ぐ男に向かって走り出した。


「良い読みだ! だが、甘い!」


 ツカサは男の顔目掛けて蹴りを入れるとすぐに男の背後に移動し、首へと腕を巻きつけ、首を絞めた。


「あ、ぁ、う、っっぐぅ!?」


 男は抵抗すら許されない力の強さでツカサに首を絞められ、ボンヤリと意識が遠のくも自身では勝てないことを悟り、その手に握る瓶を割った。


 割れた瓶より、光が放たれると次の時にはツカサの目の前から男の姿がいなくなっていた。


「む? 消えた。まぁ、良いか」


 すぐに次の得物へと視線を向けるとゴトーはたった1人で黒煙の腕を切り裂いた。


 刃から炎激る剣を振るい、迫り来る黒の腕をスパリと切断しながら攻撃を放った男の下に近づく。


「クソ! 来るな! 万年準一級の落ちこぼれが!」


 ゴトーに対してバカにするような言葉を放つも彼はそれに反応することなく、相手の手札を一枚、また一枚と切り捨てた。息を切らすことなく、術者を自身の間合いに入れるとゴトーは蹴りで彼の得物を手から離させ、首元に刃を近付ける。


「ヒィッ?!」


 ゴトーは無言で、その刃を当てるのみで男が瓶を割るかの選択を強いた。


「おい! お前ら、何で強化もデバフも、無いんだよ!?」


 男は叫ぶも既にツカサによって残っていた2人は逃亡を選択しており、その場にはツカサとゴトーのみとなっていた。


 そして、彼は今、自身が数の不利にいることを理解する。


「クソ、クソが! 万年準一級が! 何でソイツの味方すんだよ!」


「何でって、理由必要か? 俺はツカサさんに命を救われてるんだ。その人を信頼して一緒に探索に挑むのは同然だろ? お前達だってそうしてるんだから」


「ソイツのせいで、今回の【迷宮(ダンジョン)】探索が難しくなっているんだぞ!?」


 ツカサは自身が呼ばれたことで首を傾げた。


「それがどうしたって話だよね。今回の一級試験は一級【探索者】の質を上げるための物だって何で理解しなかったんだい?」


 ゴトーはそう言うと地面に剣を振り下ろし、地面を割った。ドゴンと言う音共に男はそれに驚き、戸惑う中で、ゴトーは顔を近づけ、彼の耳元でゆっくりと呟いた。


「万年準一級に負けたんだ。一級の器じゃ無いからサッサとリタイアしなさいな。でなければ、この後は死ぬ羽目になるから」


 ゴトーはにこやかに微笑みながら立ち上がると男から離れて行った。


「さ! ツカサさん、次に進もう!」


「おうさ! まだまだ、下があるんだろう! 楽しみだ!」


 ツカサとゴトーは戦意を喪失した相手に目を向けず、歩き出すと男はたった1人、その場に残された。


 見向きもしない彼らに悔しさを滲ませながらも自分1人ではこの【迷宮(ダンジョン)】を踏破できないことを理解し、男はポケットに入れていた瓶を地面に叩きつけるのであった。

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