二十二話 円卓会議 其の壱
円卓会議、それは各国の迷宮の攻略具合や、新たな【遺物】の報告、それ以外のWDG内外から送られてくる改善点などなど、様々な問題に対して、各部門の代表達が集まり、討論をする物である。
始まりと同時に真っ先に手を挙げたのは永遠に悪態を突いていた、アルマンダインであった。
「とりあえず、今回の【因果の魔女】もそうだが、俺から議題を提供したい。ホシナミ・ツカサ、奴の存在について話すべきだろ。違反者が急に配信初めて、それが大バズり。真似するヤツが出てきたら、俺達が責任を取るんだぞ? それと風雅、お前、アイツを違反者として殺しに行った筈なのに、随分と肩を持ってたじゃねえか」
アルマンダインは指にはめてある指輪の一つを触りながら風雅に尋ねると彼女はそれに堂々とした態度で答えた。
「ツカサに関しては検察庁に全て一存されてる。アイツは俺が責任を持つ。だから、そこは今、議論する場所じゃないだろう」
「それで《ああ、分かりました、はい、そうですね》とはならねえんだよ。風雅、分かるか? ここに居るってのは責任を持つのは当たり前で、その責任が正しい責務として課されているのか、そうでないのか、そこまでを問わなきゃいけねえんだ。俺よりも強いお前を、俺は尊敬しているがこの仕事をするって面では軽蔑している」
アルマンダインの言葉に風雅は反論出来ず、黙ってしまうとそれを庇う形で永遠が口を開く。
「アルマンダイン、そこまでにしてくれ。ホシナミ・ツカサを何日か放置したのは私の判断で、ノアにも協力してもらって情報統制を行わなかった」
「責めるなら風雅以外も責めて、三人で責任を分担するってのか? 永遠、お前は腹は立つが頭は切れるし、俺の言う事が分かるだろう? 違反者に罰を与えず、【特例】を通してしたままだ。これが今、世界規模で活動する組織として許されていい行動なのか? それを尋ねているんだ」
技術庁局長サー・アルマンダイン、彼はその見た目とは裏腹に徹底的な管理と人事采配、そして、現代が持つ最新技術を存分に【迷宮】探索に費やして来た、WDG発足時から組織をまとめ上げている中心人物であった。
また、技術庁の人間達からも多くの信頼を寄せられ、円卓会議の中で最も常識人である。
真っ当な怒りを向けるアルマンダインの横でゆっくりとお茶を飲みながら、戦務庁長官ヴァルキュリア・ヴォーダインは彼の話に耳を傾けた。
(相変わらず、アルマンダインは真面目だ。激務と残業で気狂いそうなのに、あんなに元気なの凄い。私の意見としてはぶっちゃけ、面白いから、ツカサくんは放置してもいいと思うんだけどね)
ヴァルキュリアはそんなことを考えているとアルマンダインの矛先が彼女に向いた。
「ヴァル姉さん、アンタの意見が聞きたい。ホシナミ・ツカサへの罰、これは必要か?」
「んー、面白い、と思う」
ヴァルキュリアが面白いと言う時、その勘は大体当たる。
第六感の盲信などアルマンダインは行わないが、ヴァルキュリアのその勘は信用に値する物として、考えていた。
「チッ、そうか。この時点で俺の意見は通らなそうだな。ノアは永遠を庇ったから擁護派として、アダムさん、あんたはどうなんだ?」
「んー、僕はどっちかって言うと中立かな。アルマンダインの言ってることも分かるんだけど、ホシナミ・ツカサの配信での活躍を見て、罰を与えたメリットデメリットを考えたらデメリットの方が大きい。かと言って、君の意見を無碍にするほど僕も責任を担う者として間違っている。だから、どちらにも肩入れするし、どちらにもつかないことに徹しようかな」
アルマンダインの目をハッキリと見ながらWDG外事庁長官アダム・カルデアスは応えた。着崩しながら制服を着用する者が多い中、しっかりとスーツを着こなしており、彼らの中でも真面目さが際立っている。
外事庁は各国とのやり取りや、検察庁と手を組み、【迷宮】内で起きた問題を解決する部門でもあり、そんなアダムの意見を聞き受け、アルマンダインはため息を吐いた。
「俺は自分の意見は曲げない。だが、こんだけの人間が評価し、【特例】を認めている事実を認めないってのは道理じゃない。悔しいが、お前達の【特例】を今回は認める。が、しかしだ。俺の条件を満たしてもらう。それでいいか? 永遠」
ここまでのやり取りでアルマンダインは納得は行っていないものの自身の意見のみを押し通す、そんな場を乱すことは意味がないと判断していた。
故に、自身が納得できる条件を満たせるかで自分の気持ちに折り合いをつけようとし、その合否を永遠へと投げた。
「アルマンダイン、君の出す条件をホシナミ・ツカサに科すことを認める。君が納得してくれるか否かで話が多く変わるから君からそういった意見を出してくれて助かった」
「チッ、そんな世辞は良い。次の議題に入ろう。今回は【魔女】の信徒について話すんだろう。悪かったな、話のコシを折って」
アルマンダインがそう言うと永遠はツカサに関して、限りなく一番穏便に済ます事が出来たことに内心ホッとしていた。
そして、その会議を進めるために永遠は再び口を開く。
「それじゃあ、本題に入ろうか。【魔女】の信徒についてだ。動画には目を通してると思うが、あれは自身のことをアルコーンと呼んだ。これから奴のことをアルコーンと呼称する」
「動画、ありゃ規制するんじゃなかったのか? 【魔女】に関する情報は原則規制するとしていたはずだろう」
アルマンダインの言葉に円卓に置かれていた端末の画面が光るとそこに映った水色の髪を両側に分けて結びながら学ランの様な物に身を包んだ現ノアのアバターが彼女の口に合わせて、スピーカーから音声を鳴らす。
「それねー。私も規制しようとしたんだけど、合成獣の方に弾かれた。これで確信したんだよね。あの合成獣、『博士』の作った作品だって」
「『博士』だと? 何で違反者なんかが『博士』なんて知っていやがる?」
「分かんない。でも、WDG成立直後に作られた合成獣は『博士』が作ったヤツが多いからそれも原因かな」
ノアが音声を聞き、アルマンダインはまた、ツカサに対しての疑念が強まるもその流れを一旦、断ち切るために永遠が喋り始めた。
「まぁ、それは一旦、置いといて、今回の【魔女】の信徒の出現で彼らの尻尾をようやく掴めた。本部総長が【副都心迷宮新宿】の四階層で会敵した【火焔の魔女】の信徒、E国最大の迷宮イドで風雅が会敵した【原理の魔女】の信徒、そして、最初の迷宮エリュシオンにて、一人を除いて全ての生命を消し去った【因果の魔女】の信徒、アルコーン。これら全ては大型【迷宮】十階層以上で出会うことが出来る」
その言葉で空気が一気にヒリつくと最も雰囲気が変わったのは風雅であった。
「本当か? 永遠」
「ああ、本当だ。本部総長から送られてきたデータを参考に過去に会った二人の信徒と今回、新宿内でのアルコーンのデータを重ねた結果だ。十階層以降は【魔女】の信徒が持っているエネルギーが濃くなっている。仮称で【魔力】と呼ぶんだけど、新宿以外はこれが十階層以下で濃くなる」
それを聞き、風雅は次こそは必ずアルコーンを討つ覚悟を決めるとそんな彼女へとヴァルキュリアが話しかけた。
「風雅、力みすぎだ。それだと勝てる勝負にも勝てない。気になるなら、私が相手しよう」
それはヴァルキュリアなりの優しさであった。この円卓の中で風雅と同等以上に戦えるのは彼女のみであり、特級【探索者】と戦務庁長官、両方の地位を担っているヴァルキュリア・ヴォーダインだからこそ出来た提案であった。
ヴァルキュリアに気を遣われていることに風雅は自身が気付くと自身を落ち着けるために大きく深呼吸をする。
「ヴァル姉、すまない。冷静さに欠けた」
風雅が頭を下げるとヴァルキュリアは気にしてないと手を前にした。
「ん、いいよ。永遠、話を続けて」
「ありがとう、ヴァルキュリア。それじゃ、話を戻すね。その【魔力】を追って、【魔女】の信徒を狩る。それについて、これから話して行きたい」
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