二十三話 円卓会議 其の弐
「永遠、【信徒狩り】はまだ、早い気がする」
【魔女】の信徒を狩ると言う永遠の提案に対して、最初に反応したのはアダムであった。
「何故、そう思うんだい? アダム」
「そうだねー、これはあくまで僕の主観での戦力図の話だし、間違っているかもだけど。つい先日あった【因果の魔女】との戦い、風雅がトドメを刺す直前までに至った。けど、直前だ。この差は大きい。ああ、別に風雅を責めるわけでも文句がある訳じゃない。アルマンダインも君の戦いは賞賛に値すると評価していたしね」
アダムは風雅に対してフォローを入れると再び口を開く。
「まぁ、何が言いたいかって言うと、僕達の持つ戦力で現状、倒し切れるのかってことだ。6人の特級【探索者】、20人の一級【探索者】、それ以外の【探索者】は無駄死になるに等しいとして、考慮しないで【魔女】の信徒と戦おうとしよう。僕達に勝ち目はあるのかい?」
「五分五分、かなと僕は思っている」
永遠の解に対して、アダムは甘いと考え、今の状況をしっかりと見据えてもらうためにあえて、意地の悪い言葉を選んで喋り出した。
「そうか、じゃあ、整理をしよう。特級【探索者】達で今、まともに戦力になるのはヴァルキュリアと風雅の二人だけ。バサラさんと総長は呼べば来てくれるがあの人達を戦力として当てにするには今、やってもらってる仕事を放棄して貰わなければならない。そのリスクのがデカい。残り2人は行方不明。これで五分五分かい?」
「アダム、結局、君は反対と言いたいのかい?」
「そうだね、総合的に見たら反対だ。この中では賛成の方が少ないんじゃないかな?」
アダムが周りに目を向けるとアルマンダインとヴァルキュリアの2人が手を挙げて答えた。
「俺はアダムの意見に賛成だな。意見が真っ当すぎる」
「そうだね。別に【魔女】信徒を倒しに行ってもいいけど、私と風雅だけじゃ荷が重すぎる」
WDG外事庁長官アダム・カルデアス、円卓の6人の中で最も堅実で、自身が持つ誠実さでその地位に至った男であり、永遠は彼の説得が一番必要であるのを理解していた。
(ここまでは予想通り。アダムは説得する材料さえあれば納得してくれる。彼は真面目で、公平だ。だったら、ここで切るカードは最初から決まってたさ)
永遠はそう考えながらアダムを説得するカード、ホシナミ・ツカサと言う変数について話し出した。
「なら、その均衡を僕はホシナミ・ツカサと言う変数で壊そうと思うよ」
ホシナミ・ツカサの名前が出た時、アダムもまた、それが出てくる事を考えていたが、永遠の出方を見るため、あえて、反応を示す。
「変数ね。たしかに変数なのかもしれない。史上最速の【新宿】二階層到達、【博士】の合成獣持ち、アルコーンとの対峙で風雅以外の生存者。これだけでも変革を齎したと言っても過言ではない。だけど、僕はね、彼にそこまでの可能性を見出せてないんだ。永遠が何故、彼にそこまでの価値を見出しているのか、教えてくれないかい?」
「ああ、良いだろう、アダム、君のその他人の意見を聞き入れて、公平性を持って判断を下す、その性格。それら全てを理解しているからこそ、ぼくは示そう。ホシナミ・ツカサの可能性ってヤツを。ホシナミ・ツカサは異界人だ」
異界人、その言葉を聞いた瞬間、ノアと風雅以外の3人がザワついた。
「オイオイ、永遠ァ! お前、それはもっと早く報告すべきだろう! 迷宮の真奥に関わる部分だ! 世間にバレたら、俺達で庇い切れねえぞ!」
アルマンダインはそう言うとそれに対して、スマホの画面に映る、ノアから音声が発された。
「それに関しては私がぜーんぶ、事実を作り上げてるから安心して! 私が彼にこの世界で生きていくための地位も、記録も、戸籍も勝手に作って与えておいた。ホシナミ・ツカサは今の【迷宮】配信の星、簡単は潰させないし、今後もドンドンコンテンツを盛り上げてくれる。だから、そこら辺はWDG広報庁局長 現ノアにお任せあれ⭐︎」
責任を既に持ち、行動で示されたことでアルマンダインは何かを言えず、不満そうな顔しながら渋々、納得させられるとアダムはそれらを持ってしてもまだ、公平性を担保出来てないからこそ、永遠へツカサについて尋ねた。
「異界人、君が出してきたカードの中で一番の驚きだ。異界人と言う特異性から妙に配信活動や、カメラへの視線なんかを一切気にしないところに説得感が出てきたよ。正直、面白い。だけど、それだからと言って僕は【信徒狩り】が彼によって成されるとは思えない。まだ、何かあるのかい?」
「ああ、あるに決まっているだろう。アダム、君は今、特級遺物が幾つWDGの管理下に置かれているのか覚えているかい?」
「勿論だよ。WDGが【迷宮】で見つけた特級【遺物】は8本、2本が本部で保管、6本が特級【探索者】のみに渡されている。それがどうしたんだい?」
「ホシナミ・ツカサは9本目の特級【遺物】を持っている」
アダムは思考が一瞬だけ停止した。
国家すらひっくり返す事ができる未知のエネルギーを持った人工物、それを異界人であるホシナミ・ツカサが握っていると言う事実に常に思考を続けるアダムの脳をショートさせるほどの衝撃があった。
「ん、それはとっても面白い、と思うな」
ヴァルキュリアが永遠が示した情報に面白いと判断を下し、彼女はそれによって勝利を確信する。
「どうだい? アダム、【信徒狩り】に信憑性が出てきただろう?」
永遠はアダムに対して最後の詰めを行うためにそう問い掛けると彼は少しの沈黙の後、思考を巡らせた。
(9つ目の特級遺物。これだけでも十分だと言うのにあえて、最後に出す事でホシナミ・ツカサと言う人間の価値を底上げしてる。WDGの利益、そして、何よりこの今の混沌した世界に齎す希望。これらから公平性を求めるなら、僕が出す答えは…)
沈黙の後、その重い口をアダムは開けた。
「認めよう、ホシナミ・ツカサの変数としての特異性、そして、【信徒狩り】の計画を。ただ、永遠、【信徒狩り】はまだ、時期じゃない。それだけは言っておきたい。今すぐにこれまでの貸しを返しに行きたいと言う君達の意見は分かる。だけど、それ以上にこの計画はもっと入念に円卓会議の中で話を深めるべきだ」
アダムの言葉は尤もで、永遠はそれを理解している。そして、それだからこそ、今ここで自身が持っている、いや、彼女がWDG 事務総長より、伝えられていた計画全てを円卓に座る同志6人に喋り出した。
「ああ、もちろん。それが今日の会議のアジェンダさ。さて、ようやく、計画に全員が納得行ったと思うから、始めようか。【信徒狩り】、その全貌を」
円卓会議はまだ、始まったばかり
永遠が計画する【信徒狩り】、そして、その背後に潜む【魔女】へと迫るための一歩を踏み出すために。
彼らは互いの意見を出し合うのであった。
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