十九話 狩人、因果の信徒と相対する 其の肆
アルコーンの首へと迫った刃は首の皮を切り裂き、骨に至った直前、彼の虚であった視線がハッキリと風雅を捉えた。
「あ、がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
首を断たれる寸前、右手に握っていた錫杖をぶつけ、アルコーンは何とか断頭を免れると
風雅に向けて、消失の光を放つ。
風雅はそれを避けるとアルコーンが振るう錫杖がぶつけられ、距離を取られた。トドメを刺せず、風雅は「チッ!」と舌打ちをして、抜刀の構えを取るとアルコーンもまた、右腕に握る錫杖を構えていた。
「何だよ、さっき迄はなーんもこの世に興味がねえみたいな顔してたのに。左上半身削られて死ぬが怖くなったんか?」
風雅はアルコーンを煽ると彼は普段ではあり得る筈のない手の震えを感じながらとそれに対して怒りを向けて答えた。
「違うな。この世に興味がないのは確かだが。お前の様な者に負けるのは違うと判断しただけだ」
「あー、そうかい。大層なこったなぁ! 【因果の魔女】の信徒さんは。自分は奪うのが当たり前で奪われるのは気に食わないってのは!」
「それは人間ではあれば、誰であってもそうであろう?」
「よく言うぜ。お前が人間な訳がないだろう」
その言葉を聞き、少しだけアルコーンは笑うと自身が彼らとは違うと言うことを知らしめ、刻み込むためにその口を開いた。
「第二級祝福起動。消失せよ、逆行せよ。因果の信徒が命ずる。因果は逆転し、世界は再び我の手に」
アルコーンが口を開くと同時に
風雅は【龍星】を放つ為に【星月夜】を鞘から走らせる。
「個性解放、三日月流、極技・龍星・白夜!」
碧い焔はアルコーンへと駆けるも気がつくと【龍星】が消えており、何故か【星月夜】を鞘に納まっていた。
「な!?」
何が起きたのかさっぱり理解が出来なかった風雅は動揺し、声を上げると目の前には失われたはずの左半身が完全に復活したアルコーンの姿があった。
アルコーンの背後には巨大な一つ眼ギョロギョロと不気味に辺りを見回しながらが宙に浮いており、それの周りを囲う様に幾つもの羽が広げていた。
「巻き戻せ、|十二枚の逆行する智天使」
アルコーンは興味がない様な視線を風雅に向けると彼女は彼を睨み返しながら声を上げる。
「何をしやがった」
アルコーンはそれに対して、応える必要が無いと判断していた。しかし、一介の人間に第二級祝福を起動させられことに苛立ちを覚えながらもその事実を噛み締め、仕方なく答えた。
「【因果】の【祝福】の応用だ。オレだけに範囲を絞り込んでオレの左半身を吹き飛ばしたと言う因果の元の一撃のみを消失させた、説明は以上だ。|十二枚の逆行する智天使よ、消失させた因果をアイツに撃ち返せ」
アルコーンがそう言うと
|十二枚の逆行する智天使はその巨大な眼の中心にエネルギーを蓄え始め、それは風雅へ目掛けて向けて放たれた。
その光は風雅の【龍星】がアルコーンの肉体を削り取ったと言う因果を消失させたことで生まれた仮想物質であり、その因果の大きさに比例して威力を上げ、全てを飲み込む閃光。
敵は遥か彼方の超常。
人が刃向かうことなどは断じて許されぬ、人理から外れたまごう事なき怪物であり、それを風雅は理解させられた。
放たれた光は彼女の存在を消失させる為に容赦無く降り注がれ、それが与えるのは敗北と言う名の結果のみを刻もうとする。
「舐めんなよ、クソ信徒」
しかし、三日月風雅は違う。
彼女も同様に人の理を外れし超常。
降り注がれる閃光に対して既に風雅の手は動いており、自身の特技である抜刀術で対抗しようとする。
「個性解放、三日月流、極技・龍星・白夜」
光速すらも捉えた人智を超える反応速度にアルコーンは目を見開くと風雅の刀より放たれた碧い焔と消失の閃光がぶつかり合った。
風雅の【固有個性】、九尾の剣聖は自身のTSPを1秒ごとに1ずつ消費する代わりに、敵の攻撃に対して全自動反射を行う。
それがどんな速度、どんな角度、どんな瞬間であろうと九尾の剣聖 を発動中は反応可能。
風雅はそれにより、光速の攻撃に対して、光速の反撃を行い、龍星・白夜を放った。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
雄叫びを上げながら風雅は今、持てる全ての力を【星月夜】へと込める。それに応じるかの様に放たれた碧い焔は猛り、閃光すらも打ち消すと|十二枚の逆行する智天使の巨大な眼を削り取った。
眼が砕け、その姿を保てなくなった
|十二枚の逆行する智天使は空の上で砕け散るとアルコーンは自身の【祝福】が二度も人間に完全に砕かれた事で、抱くはずのない感情を持ってしまう。
上位存在としての絶対が揺らぎ、恐怖にも似た何か。
本来であれば持ち得ぬはずの感情にアルコーンは動揺した。
そんな彼に対して、風雅は踏み込もうとするも彼女の眼に赤い警告が現れた。
「クソ! あと少しなんだ! 頼む! 持ってくれ!」
しかし、風雅の願望は届かず、彼女の髪色が徐々に金髪に戻り始めると九本あったはずの尻尾は一本となり、その真紅の双眸は蒼く染まってしまう。
(クソ! クソ! まだ、アイツを殺せてない! 俺はアイツを殺さないと、風太の記憶が無くなる前に殺さないと誰のために仇を取りたかったのか、分かんなくなっちまう! もう時間が無いのに!)
風雅は何とか抜刀の構えを取り、動揺して動けなくなっていたアルコーンを貫こうとするも、彼女は自身の腕が動かせないほどに重くなっている事に気づいてしまった。
【遺物】の使用による負荷と九尾の剣聖によって限界を超えた動作による疲労の二つがいっぺんに襲い掛かり、【狐火】での浮遊すらもままならなくなっていた。
「あと、一歩!」
視界が歪みながらも、そこに縋る様な恨みを込め、忘れて行く弟の姿を、あの日に見た地獄を再び脳裏に焼き付けるために風雅は叫ぶ。
アルコーンはそんな風雅に視線を向けず、壊れた機械の様にただ漠然と自分という上位存在の欠陥を読み込もうと必死になり、錫杖を彼女に向けた。
アルコーンはただ、そこにいる人間を処理するために集めた光を機械的に放つと避けることすら困難である風雅は悔しさを滲ませながら呟いた。
「ごめんね、風太」
光が風雅を飲み込もうとした直前、それは突然現れた渦の様な物から何処かへ消えると彼女の目の前には男物の着物に身を包み、手には【遺物】、【怒涛図】を握りしめた東バサラが立っていた。
「待たせたな、風雅」
そう言うとバサラは現れるや否や、アルコーンへと手に握る巨大な刺身包丁を振るった。
アルコーンは錫杖によって、その一撃を阻むも彼もまた戦意を失っており、バサラに目を向けず、一瞬にして姿を消した。
(俺とはやらないってか。と言うよりも、やる気が失くなっていたが正しいのか? 風雅がここまで追い詰めてだから何とかなったが、そんにしてもこりゃどう報告すればいいんだ?)
バサラはそんな事を考えながら満身創痍の風雅を抱き上げ、その空から姿を消すのであった。
二階層にて、起きた【因果の魔女】の信徒との決戦。
風雅の5年前の復讐の決着は付かず、ツカサは【狩り】を失敗し、アルコーンは自身の絶対性を失った。
三者三様に深い傷跡と変化を刻み、その決戦の幕を閉じる事になる。
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