十七話 狩人、因果の信徒と相対する 其の弐
第0特例警報、それは迷宮内で【魔女】の信徒が現れた際に敷かれる最大警報である。
そして、【因果の魔女】の信徒は5年前、この世界に最初に生まれた【迷宮】エリュシオンの中に放り込まれた人々を突然、たった一人を除いて全て消失させ、以来、彼は姿を消していた筈であった。
しかし、そのアルコーンとツカサは今、対峙していた。
アルコーンは怒りを露わにした後、高速移動による強襲を続けるツカサを止めるために錫杖を構え、声を上げた。
「因果の檻・解」
その言葉に応じて、争いを続けていた【百年軍隊】と過激派を覆う、檻が消えると錫杖の杖上部の輪っかが12個に増えた。続け様に、アルコーンはその錫杖を両手で握り、叫んだ。
「因果の蛇」
凝縮した光を蛇の様に変え、高速移動するツカサを追わせると彼を迎撃するために錫杖を構えた。背後に迫る攻撃に対して、ツカサは一切、目を向けず、ようやく構えたアルコーンに目掛けて飛び掛かる。
錫杖とナイフの二つが火花を散らし、アルコーンはその瞬間に自身の得物に力を込めて、ツカサを弾き返した。そして、アルコーン自身が今度は踏み込むと背後より迫り来る蛇と自身でツカサを挟み撃ちしようとする。
その挟撃に対して、ツカサは動じることなく背後を向くとワイヤーを飛ばし、蛇に目掛けて、飛び出した。
そして、そのナイフの刃を蛇に向けるとワイヤーを巻き取りながら勢いよく、切り裂き、アルコーンから距離を取った。
アルコーンは蛇を殺したツカサを追わずに、留まると彼が持つナイフを見た。
(あれは【遺物】か。オレの【祝福】では【遺物】は消せない。それで居て、あの身のこなし、グチャグチャ考えるのは割に合わない、全てすり潰す)
アルコーンが何かをしようとしたことに気付くとツカサはすぐに近づくもそんな彼に目を向けず、空に飛んだ。
「チッ! 脚ごと切り落としたとしても止まらないか!」
ツカサはアルコーンが次に何をするのか考え、急いでワイヤーを放ち、木の上に登ると彼は手に握る錫杖を前にする。
「第三級祝福起動。消失せよ、逆行せよ。因果の信徒が命ずる。闊歩する絶望を、この地に顕せ」
錫杖の上部にある12個の輪っかがその言葉に応じて、光を灯し、姿を消した。そして、それと同時に新宿二階層の端から巨大な影が覆った。
「踏み鳴らせ、|十二体の消失させる座天使」
50メートルほどの巨大な反転したT十字の木に、両手両足を拘束され、幾つもの羽によって顔を覆われた人型が縛り付けられた、この世ならざる物が突如として【迷宮】に現れる。
十二体のそれらには移動するために必要な大きな車両がT十字の木の両端に付けられており、統率の取れた軍の様に整列し、「踏み鳴らせ」と言う命令通りにその車輪を動かし始めた。
禍々しさと神々しさ、その二つを兼ね備えた
|十二体の消失させる座天使は自らの意思ではなく召喚者の意志により、その歩みを始めると動く瞬間に辺りにあった木を一瞬にして消失させる。
一方、【百年軍隊】と過激派の戦闘は止まる事なく継続された。
「おい、何だあれ!」
|十二体の消失させる座天使の姿を確認した兵士が指を差した瞬間、人々は得体の知れない怪物に慄き、背を向けようとするも次の瞬間、過激派の一人が背を向けた兵士に杖による射撃をした。
「こんな時に、何をしてんだ!」
一人が上げた声により、そこにいた全員が再び自身が今置かれている戦地に戻され、|十二体の消失させる座天使を横目に再び争奪戦を始めてしまう。
恐怖で体が震えながらも、自身が今、行っている行為に、正当性を見出すために、ひたすらにその手に握る得物に力を込めて振るうと戦場は最悪の混沌を齎した。
「バカな奴らだ」
アルコーンはそんな人間達を空の上から彼らを見下ろすととある一人を探すために目を動かした。
アルコーンがホシナミ・ツカサを、自身を【狩る】と言い放った男を見つけた時、それは樹の中を高速で移動しながら
|十二体の消失させる座天使へと向かっていた。
「更なるバカがいたな」
アルコーンへと目を向けず、ツカサは
|十二体の消失させる座天使へと駆ける。
(あれは"死"だ。巨人が死を纏って迫り来る! 儂は幸福者だなぁ! 一つ目巨人以来の巨人狩り! あはは! 心も体もまだまだ、やる気十分!)
その手には自分のナイフとベンジャミンから買ったナイフの二つを構え、迫り来る巨人へ立ち向かった。
「いざ、参らん! 巨人狩り!」
アルコーンが|十二体の消失させる座天使へと向かうツカサを目撃した時、彼の目には未知への恐怖では無く、未知への興味、挑戦、純粋なまでの殺意であった。
ツカサはウェブシューターより、ワイヤーを放ち、それを巻き取ると同時に空中で回転しながら勢いよく|十二体の消失させる座天使の足にナイフを突き刺し、駆け上がる。
(何?! アイツ、|十二体の消失させる座天使に近付いても消失しない、だと? チッ、どの【魔女】の呪いかは知らないが厄介なヤツに目をつけられたな)
アルコーンがそんなことを考えているとツカサは両手に握るナイフは足に刺さし、同時に上半身を目指し、回転させた。電動ノコギリの様な回転攻撃はツカサの体に負荷をかけるもそれよりも|十二体の消失させる座天使を、巨人を狩らんとする渇望が彼の体を動かした。
(足を切り裂いても声すら出さんとは! いいなぁ! 狩りてえなぁ!)
ツカサは回転しながら上半身すらも切り裂き、空を飛び上がると再びワイヤーを放ち、|十二体の消失させる座天使の体を回転しながら駆け巡る。
それはあまりにも無謀としか言いようがない攻撃であり、巨人に対して170センチほどの背丈の青年が喰らい付くと言う異常な光景が広がっていた。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!」
ツカサは叫んだ。
自身の持てる全てを使い、巨人を殺さんとするために。回転する速度を落とさず、むしろその速度を無理矢理上げ、引きちぎれようとする腕を何とか持たせながらツカサは
|十二体の消失させる座天使の一体を攻撃し続ける。
「だぁぁぁぁぁ!!!!」
幾分して、傷だらけの巨人に異変が起きた。切り裂かれた体を繋ぎ止めいたはずの筋肉が音を立てて、崩れ始めると車輪も同様にこの世界に存在を保つための楔が崩れ落ちた事で崩壊を始めた。
「はは! やったか! 次だ!」
ツカサはは震える腕を何とか動かし、崩れる巨人の上半身へとワイヤーを放つと機械によってそれを巻き取らせた。同時に自身の足で駆け、彼は空へと上がり、次の得物へと目を向ける。
その時、彼の頭上に浮かぶ者がいた。
"ゴン"と鈍い音が鳴り、ツカサの頭に錫杖が振り下ろされた。
完全に巨人だけを目に入れていたツカサはアルコーンに不意を突かれると遥か上空より、地面に叩きつけられてしまう。
「がっ、は!?」
地面に叩きつけられたツカサは自身の体から鈍い音が鳴り、肉体の一部が損傷した事を感じ取るもそれでも尚、彼は巨人へと目を向けていた。
「まだ、まだだ。儂は! まだ!」
狂気とも呼べる執念を前にして、ツカサの背後に立ったアルコーンは彼にとある疑問を投げかけた。
「何故そこまでしてお前はオレに刃向かう?」
体内から咽せ返るような痛みを感じ、立ち止まれば最後、動けなくなる、そんな気がしたがツカサはあえて、その問いに答えた。
「お前が儂に、ゴホッ、ハァ、はぁ、目を向けた、から、だ」
ツカサは最後にアルコーンを視線を向けた。その視線には必ずお前を狩ると言う執念を感じ取れる熱が籠っており、アルコーンは初めて人間という存在に恐れを抱いた。
しかし、その言葉を最後にアルコーンの姿がこべりついた視界が黒く染まり、ツカサは地面へと倒れてしまう。そんなツカサを見て、アルコーンは初めて自身が人間に恐怖という感情を刻んだツカサと言う人間に怒りを覚え、錫杖を振り翳した。
「死ね」
錫杖を怒りの身を任せて振り下ろすアルコーンに対して、ツカサと彼の間に黄色い閃光が開いする。
それは手に握る刀でその一撃を弾き返した。
「今度は何だ」
アルコーンは自身の一撃を阻まれた事で更に怒りを向けるもその怒りを遥かに勝る怒りを向けるも者がそこには立っていた。
【原初の刃】三日月風雅、彼女は無言で現れるとアルコーン、彼に対しての憎悪と殺意、それら全てを"怒り"という感情でブレンドした物を打つけるためにその口を開く。
「5年ぶりだな、【因果の魔女】の信徒。もう、お前の好きにはさせんぞ」
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