十六話 狩人、因果の信徒と相対する 其の壱
「姉ちゃん! こっちこっち!」
その言葉でハッとなり、彼女はその少年の背を目だけで追っていた。
「待ってくれ、風太」
少年の顔はボヤけていたがそれでも彼女は彼を追おうとしたその時、彼らを突然、暗闇が襲う。
暗転した先、目を開けるとそこには自身の目の前で少年が光の矢に貫かれる瞬間であった。
「風太?」
思わず呟いた一言で少年は彼女の方を向くと助けを乞うかの様な苦しみに満ちた表情ではなく、彼女を安心させる様な、いや、分からない。
分からなくなっていた。
少女が見たその顔は、表情は、全て全て光に呑まれていた。
最後に彼女が見たのはボロボロな自分とそれをゴミを見るかのような目で見つめる笠を被った男の姿。
それを前にして、彼女は虚空へと目を向けて、叫んだ。
「あ、ああぁぁぁぁぁ!!!!」
***
「風太!!!!!!」
自身の叫び声で目を覚ますとそこには何も残っていなかった。ただの夢境の最中の記憶であることを風雅は理解した。
「チッ、嫌な夢見たな」
【副都心迷宮新宿】、その一階層の【安置】で風雅は体を休めていた。
「そろそろ二階層か。ツカサに会えたら現状でも聞くか。後、バサラのおっさんもいるだろうし、あの人の【安置】で少しゆっくりするのありだな」
最近、E tubeでは三日月風雅の配信が再開したことでファンと視聴者達が盛り上がっていた。
復帰した動画はツカサの配信の勢いと並ぶほどのモノがあり、二人の配信時間が重なると視聴者はお互いの動画を行ったり来たりと大忙しとなっていた。
「嫌な予感がするな、予定よりも急ぐか」
風雅はそう言いながら身支度を整えると【星月夜】を腰に差し、【安置】から出ようとする。
その時であった。
【スマホ】から振動にすぐに気付き、画面を開くとそこには永遠からの着信があった。
「ん、だよ。タイミング悪いな」
少し悪態を突きながらも風雅は【スマホ】の画面をタップして、永遠からの着信に応答する。
「こちら風雅、何用だ?」
「風雅! 落ち着いて聞いてほしい。今、【副都心迷宮新宿】に第0特例警報を出した。
【因果の魔女】の信徒が来てる。討伐のために遺物の使用を許可する。風雅怒りに身を」
永遠の言葉が終わるよりも早く、風雅は電話を切った。
そして、【安置】から無言で飛び出すと、風雅の目には復讐の炎が燃え滾っていた。
***
「儂の名前はホシナミ・ツカサ! 儂に殺意を向けたな! 狩猟は成立した! 始めよう! 儂とお前だけの狩りを!」
ツカサの言葉に対して、不自然なまでに透明なピンクの髪を三つ編みに纏め、修験者の様な格好をした檻の主人は興味を示さず、ただ、自身に楯突いてきた彼を睨みつけるだけであった。
(人型で俺と同じくらいの背丈、服装はよくわからないがあの杖、あれがあいつの得物か)
相手を分析している際、ツカサの額から汗が垂れた。
それは得体の知れない何かが死、そのもの纏う存在であり、明らかにこの世の理から抜け落ちた、そんな空気を感じさせると緊張によって、冷や汗をかいていた。
そんな中、ツカサを睨みつける檻の主は突然、口を開いた。
「お前、魔女に呪われてるな」
「? 何だそれは」
ツカサが向けた疑問に檻の主人は機嫌が悪くなると錫杖の先を彼に向けた。
「チッ、何も知らないのか。なら、もういい。オレは【因果の魔女】信徒アルコーン。死ね」
光が錫杖に集まるとツカサ目掛けて放たれ、彼はそれを簡単に避けて、ナイフを手に取り、アルコーンと名乗るそれとの距離を詰めた。
ナイフに対して恐怖は無く、アルコーンは防御も無く、体を切り裂かれるも切られたそばからその部位がくっ付いた。
アルコーンはすぐさまツカサ目掛けて再び光が放つと彼はそれを避けるために背後にウェブシューターからワイヤーを放ち、自身の足と装置の巻き取る力で無理矢理避けた。
避けられた光は木にぶつかると次の瞬間、それは一瞬にしてツカサの目の前から無くなった。
どういう原理かは分からない。だが、その光が原因であることだけは理解しており、ツカサは出て来た情報をまとめるために彼の姿を分析した。
(光にぶつかった物はそこに存在が無かったかの様に消えた。ただ、光は早くないし、避けられる。問題はアイツの首を断っても死なないと言うことだ。不死身の人間、か。いや、違うな。あれは儂の攻撃が効いてないだけで狩る手段はあるはず。ならば、今持てるもの全てを使ってこいつの【狩り方】を見つけるのみ!)
考えをまとめ上げるとツカサの手には幻狼の牙の苦無を取り出した。
「小手調べと行こうかな!」
苦無は真っ直ぐ、アルコーンへと放たれるとそれらを避ける事なく、貫かれ切り裂かれる。
(遠距離での攻撃も意味なしか。ならば、次はこれだ!)
ツカサはウェブシューターを使い、縦横無尽に駆け回ると手にはベンジャミンの武器屋で買っていたワイヤーの予備を使い、それらを何重にも引っ掛けた。そして、準備が出来たのか、自分を目で追うアルコーンに対して、再び襲い掛かった。
アルコーンもツカサを落とすために錫杖の先を向け、光を放つもそれは簡単に避けられ、先ずは首元を切り裂かれた。
すぐに再生し、ツカサへと目を向けるもそこに彼はいない。一瞬にして消えたと思いきや、再び近くに現れると腕に切り傷が刻まれていた。
「何?」
アルコーンが声を出した時には足を切り裂いては再び消え、明らかに人間が目で追うには不可能な速度でツカサは移動し続けていた。
アルコーンは違和感すら覚えるツカサの速度の正体を明かすために辺りに目を向けるとそこには幾つもの細い線の様な物が薄らとだけ確認出来た。それにより、アルコーンはツカサが何故あそこまでの速度を出して動き回れているかをしり、思わず口を開いてしまう。
「チッ、そういう事か。小賢しいな」
ツカサの高速移動の正体、それはワイヤーを辺りに張り巡らせた結界による足場の生成。
立体的な移動はウェブシューターによって行い、宙には剛柔兼ね備えた特殊ワイヤーを飛び出す瞬間に蹴り上げる事で、普段よりも踏み込みを良くし、音すら置き去りにする程の速度を形成した。
再生が行われるよりも早く、ツカサは彼を刻み込むために動き回るとそれに対してアルコーンは苛立ちを見せる。
自身を本気でそれで狩れると信じ込んでいる頭の可笑しい狩人を前にして、全く意味がないと教えてやろうと考えていた。
しかし、光は当たらず、ましてや自身がこの場に現れた任務をいち早く終わらせるために敷いたはずの檻を解くのは面倒な事でアルコーンという信徒は一度行った行動を訂正することを嫌っていた。
そんな考えをしながらもアルコーンの体は一方的に刻まれており、ツカサは不死性を凌駕する程の傷を与え続けようと飛び回る。
ツカサに向ける鬱陶しい、目障りという感情。
そればかりが頭を過り、アルコーンはその怒りを極限までに露わにすると声を荒げてしまう。
「あゝ、もう面倒だ。殺してやるよ、お前」
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