第7話「狂神エンデ」
争いのないフィラトル。その歴史を終わらせたのは、中央都市の中心にそびえる天蓋の大樹。そこに落ちた一つの雷だった。
それはまるで無様に転げ落ちたような、そんな落ち方だったらしい。
当時のフィラトルの人間たちも
「雷でも転ぶもんなんだな」……そう思ったそうだ。
悪意なく、ただ笑う人々。
しかし、それが気に触ったのだろう。
空から降ってきた雷は不遜にも、自身を見上げ、嗤う愚かな人間たちに裁きを下したのだ。
◆◆◆
天蓋の大樹に落ちたのは雷ではなく、統合神界から降りてきた一柱の神だった。
いや、あれは■■■■■、と言ったほうが正しいだろう。
その神の名を、エンデ。統合神界、どのエリアにも所属しない唯一例外の神だった。
神が何の連絡もなくフィラトルに現れるなど、この地を管理する統治者たちもそうなることは知らなかったし、何をするつもりなのかも分からなかった。
雷が収まり、現れた一人の男。
その異様な光景を流石におかしいと当時のフィラトル人は思ったが、そう思うにはあまりにも遅かった。
放たれた神の一撃により、中央都市に住む多くの人間はその命を散らしたのだ。
それからは早かった。
フィラトルに顕現した神は単身で中央都市を圧し、無知なりに抵抗、戦うことを選んだフィラトル人を蹂躙し、それ以外の人間の大半は都市ごと支配下に置いた。
破壊と殺戮。
人類は、光の内に佇む神を見て滅亡を垣間見た。
被害を免れたのは中央都市から逃げた人々。または中央都市から離れた場所に暮らしていた人々のみ。
しかし、この時の抵抗があったからこそ、フィラトルの人々は魔導工学を兵器開発に転用、武器を生み出し、彼らなりに戦う術を鍛え上げた。
初めの戦いは見れたものではなかったが、意味のあることだった。
それがあったからこそ、今のフィラトルがあると言えよう。
しかし、ある時を境に人々はエンデと戦うことを止めた。
抵抗して分かったことがある。
このままでは何度戦っても、エンデには勝てない、そう悟ったからだ。
そうしてフィラトル人は彼らなりに戦う力を鍛え上げるべく、エンデの前から姿をくらました。
エンデは逃げた人間たちを嘲笑こそすれ、追うことはしなかった。
そうするより先に、片付けねばならない相手がいたからだ。
そう、この地の統治者である二人の少年少女である。




