第4話「潜り込んだ2人・後編」
「――――――ぁ」
時間がゆっくりと進んでるかのようにロジャーの投げた投擲物が回転しながら魔族の方へと吸い込まれていった。
そしてそれが、開発班が担当して作った特殊な投擲爆弾だと理解し、慌ててロジャーの方へと飛び込むのはすぐだった。
「くっ!!」
『あ、ぎゃあぁぁああああ!!!?』
アランが地面に転が込んだ瞬間、電子音と共に爆音と無数の金属が弾け飛ぶ音が響き、敵の断末魔が重なる。
「アラン、無事か!…………いってぇ?!」
「死ぬとこだったよ!何であんなもの投げ込んだ!?」
「殴ることじゃねえよ……って、うぉ!?」
本気の拳をガツンとロジャーの頭頂部に叩き込み、涙目で罵倒しながらアランは擬態兵装を解除してからロジャーの手を引っ張って逃げ出す。ロジャーもそれに倣って擬態を解除した。
擬態を解除して姿を現したのは、野戦服に身を包んだ二人の人間だ。
年齢からして20代前後だろうか。
穏やかな風貌の青年と、快活そうな雰囲気の青年だ。
同年代くらいの二人はお互いに擬態を解除した姿を見て、やっと安堵した。
「まさか見破られるとはな……、他の奴にも通じねえのかな」
「あの言い方だとそう思う。まあ、目の前で爆発が起きる状況が1個でも減るのは嬉しいことさ」
「まだ言うかよっ、悪かったって……!」
状況的に仕方なかったとはいえ、生物反応のある方向へ爆発と無数の小さい鉄塊を撒き散らす方向指定型の爆弾の餌食になりかけたと思うだけでもぞっとする。
あと少し遅ければ魔族と人間の合い挽き肉になるとこだったのだ。
バディを組んではや数年、一向に改善されない同僚の殺意の高い危うさ……。
そろそろセラにバディの交換か単独活動を打診しようと心に誓いながら廊下を走る。
「っ、隊長……!」
「ちっ、逃げられたか。無事な連中は格納庫へ行け。追わなくていい。あいつらでリーズィヒ級のテストを行う!」
むこうも爆発から無事生き延びたのがいくらかいたらしい。
遠くで何か指示をしてるらしいが、アラン達にそれを聞き取る余裕など無かった。
「それにしても、随分と嫌な里帰りだよな!!」
「ああ、まったくだよ……っ」
ロジャーの溢した言葉に、アランは無意識に返す。
彼らの故郷であり、今は乗っ取られてしまった中央都市アンファング。
世界樹と呼ばれる巨大な大木を囲うように円状に広がる都市。その外壁である6つのブロックで囲う様に展開されている外壁、ゼクスリングの一部に彼らはいた。
敵の宿舎、迎撃拠点として改造されてしまったブロックの一つを破壊する為に。
侵入という形で戻り、故郷の一部を自分達で破壊しなければならないアランとロジャーが複雑な想いを抱くのは、無理のない事だった。
しかし、やらなければならない。アランは無意識に窓から覗く、世界樹の前に立つ高い塔を睨みつけた。
この状況を生み出した者がいるであろう、忌まわしい塔を。
が、それを遮る様に凄まじい揺れが2人を襲った。
その揺れはまるで、巨大な生き物が動き出すような……そんな動きだった。




