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第39話「ヤクト商会」


『間違いなくリャナンシーよりも強い。それに、下手をしなくてもオレより強いかもしれない』


「………向こうは一先ずは大丈夫みたいだよ」


無線から聞こえてくるアインス達の会話を聞き、リーズィヒ級の足元まで戻ってきたクラークは一緒にいる仲間にそう伝えた。


無線内容を聞く限り、安心はしていいようだ。

だが、肩の力までは抜く事は出来ないでいた。


クラークもまた、敵の攻撃によって発生したクレーターを見て呆然とするレジスタンス達を眺め、先程とは違う意味で息を吐いた。


「クラークさん?」

「いや………まあ、無理もないよね、って。あそこまで酷いとさ」

「それは………まあ、はい」


心配する仲間に苦笑交じりに返す。

四魔将の一人、リャナンシーとアインスの戦い。そしてあの妖精の撤退を援護した長距離狙撃は、今のレジスタンスの認識では異次元という他なかった。


地形が変わるばかりか、瞬く間にこちらの戦力は一瞬にして無力化された。


同じだけの規模の破壊を彼らがやろうとするならば、それこそどれだけの人員に準備、装備、がいることか………。いや、そもそも自分達にそれだけの事が出来るだろうか?


そして、今後これだけの規模の戦いが当たり前となっていく?

そこに絶望を抱くのは仕方ない事だった。しかし、問題はそれだけでもない。


クラークは仲間から視線を外し、リーズィヒ級の巨体へと視線を投げる。


「どうするかな、これは…………」


死傷者は出ていないとはいえ、リャナンシーの反撃がもたらした被害も無視ができない。

跳ね返された銃弾による人員の負傷、更には、流れ弾で牽引用ワイヤーと車両の一部破損。


運転メンバーに関してはどうとでもなるが、車両とワイヤーに関しては修理や交換の必要がある。


更には此処は敵地のど真ん中。敵の部隊がこちらに来る可能性もあれば、新たな四魔将が現れる可能性も考慮しなければならない。


現在は負傷者をツヴァイが守る様に陣取っているが、形勢的に不利な事は否めない。

クラークは黙考し、結局は一つの決断へと至る。


「総員、撤退の準備を。敵の襲撃の可能性もある。速やかに――――――」

「あれぇ、いいんですかぁ?折角の魔導機兵を回収もせずに帰るなんて」


「なに………!」

「なっ、誰だお前!?」


無線の仕掛けを起こし、撤退指示を始めるクラークを遮る様に気の抜けた返事が背後から響き、全員がそちらへと振り向きざまに銃を向けた。


「ちょ、待ってくださいよ……!敵じゃないんだからっ。折角、手伝いに来てるんですよ。く、ふふふふ………」

「……………名前は?何処の誰だい」

「おー、これは失礼……!私、ヤクト商会リーダー、ローグと申します。以降、お見知りおきを。クラーク殿」


「……ヤクト商会だって?」


背後から現れた者。怪しげながらも仕立てのいい服を着た男は大仰な所作で礼をした。

一応は味方側の名前。クラークは自分の周りにいる仲間の銃を下げさせた。


「何のために出てきたのか、聞いても?」

「ええ、ええ。勿論お答えしますとも!貴方がたが我々との取引場所に運び込もうとした、この新型の魔導機兵……これの回収のお手伝いをしに出てきたわけですよ。ほれ、お前達。回収の準備をなさい」


いつの間にか、自分達の真後ろに現れたローグ。


彼が何やら無線で指示を出すと、予め待機でもしていたのか、遠くの方から無数の車両群が姿を現した。


そして、この異様を感じ取ったのか、無線からロジャーの声が響く。

「失礼」とだけ断りを入れて、クラークは無線に応答する。


『おい、クラーク!大丈夫かよアレ、なんかそっちに大量に向かってるぞ!?』

「ああ………取り敢えず問題ない。ヤクト商会の車だ。オレ達の代わりにリーズィヒ級の回収にあたってくれるそうだ」


それだけ返し、クラークは一度無線を閉じた。

何処かこちらのやり取りを満足そうな笑みで眺める男に、クラークは慎重に聞く。


リーズィヒ級の回収の手伝い、普段から取引をしている商会のリーダー、と言っても、それだけで警戒を緩めるに値しなかった。


「信用しても?」

「勿論です。言ってしまえば、これは我々ヤクト商会と貴方がた、ハウンド・ソードとの取引の一つですから。そ・れ・に、この状態では貴方がただけでは回収など不可能でしょう?」


ねぶるようにローグの視線が、リャナンシーの攻撃で傷ついた隊員や車両へ、千切れたワイヤーを見渡す。

クラークは暫し沈黙した後、更に質問を投げかける。


「こちらはどうすればいいかな?」

「このままお帰りいただいても。予備の車も用意しております。差し上げますので、後は…………我々にお任せを。私どもにしても、アレは貴重な情報資源ゆえ」

「一応、感謝するよ。ありがとう」

「いえいえ。ファータ様、セラ様にもよろしく言っておいてくだされば。く、ふふふふふふ…………」


再び、不気味を笑う男を背に、クラークは再度無線にて撤退の指示を出し、彼もまた仲間と共にこの場を去る支度を整えた。


「新しい装備はなるべく早く用意しておきます。皆々様はどうか、1日でも早く、フィラトルに平和を取り戻してくださいませ」


クラーク達の背に、ローグの得体のしれない雰囲気を乗せた声が届くも、クラークは今度は反応せず、逃げるようにその場を去った。





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