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第34話「動揺」


そこにある光を喰らうかのように、闇が一筋の極光の様に放たれた。

続けざまに数発。銃口から放たれた一撃一撃がリャナンシーを襲う。


対して、リャナンシーも何もしないままではなかった。


後退しつつ、自らを喰らおうと伸びる闇を杯から無尽に溢れる流水で防ぎ、反らし、時に針へ、槍へ、水弾と撃ち出してアインスを執拗に狙う。


その攻撃を躱し、アインスは背後へと視線を移す。

アラン達とリーズィヒ級からは十分に距離を取った。


これで意味が分からないほどに、薄ら寒さを覚えるほどに執着を見せる妖精相手に十全に戦える。そんな中、リャナンシーは口を開く。


「私を仲間とリーズィヒ級から引き離した…………これで満足に戦えるかしら?」

「気づいていたなら、何故誘いに乗る?」

「そうしてくれないと困るから。リーズィヒ級(アレ)を壊さず、貴方達に回収させろと、勝手に出てきたところをすぐ、リーダーに釘を刺されてるの」

「どういう事だ?」


返しつつ、アインスは身体強化を脚に集中させつつ力場を展開した。


リャナンシーの言葉を待った。会話はただの誘導だ。自分には、長々とこいつの話に付き合うつもりなどない。


「さあ?どういうつもりかは私も知らないけれど。そんな事より――――」


言い切る前に、アインスは力場を蹴り砕いて加速。身体強化まで重ねた速度に、リャナンシーは目を見開き固まったが、構わずその黒刃を振り下ろした。


「―――――え?」

「クラークも言っていたろう?長々と話を聞いているほど、暇じゃない」


杯を落とし、縦に斬り裂かれたリャナンシーの間の抜けた声に耳を傾ける事なく、アインスはその身体へと再び銃を突きつけ、その身体を吹き飛ばした。


影一つ残すことなく消え去ったリャナンシー。しかし………、アインスの無防備な背を無数の冷たい水弾が襲う。


「ぐ………っ、が!?」

「ざーんねん。撃ち抜いたと思ったのに、ねえ?」


まともに水弾に直撃し、大きく吹き飛ばされながらも、どうにか受け身を取って声のした方をアインスは睨んだ。


竜巻の様に伸び、渦巻く水の流れを弾いてリャナンシーは心底残念そうに中から現れた。

ゆっくりと、こちらへ向けてリャナンシーは波の音を立てながら蠢く流水を引き連れ、にじり寄ってきた。


「――――穿刑!」


リャナンシーが近付くよりも早く、アインスは剣を振り抜き、刃が纏う闇の一部が無数の針となってリャナンシーを襲う。


リャナンシーは防ぎも、避けもしない。

飛沫を散らしながら針の弾丸はその身体を通り抜けた。

嗜虐心に満ちた笑み。しかし、キン、と金属同士がぶつかり音が響いた。


「ち、ぃ…………っ!」


慌てたように、針の一部が乾いた金属音を立てて杯を掠めるや否や、リャナンシーは不自然に杯を持つ手を引っ込め、距離を取った。

笑みは消え、瞳の奥に一瞬だけ、明らかな動揺が走った。


その一瞬で起きた現象をアインスは見逃さなかった。


「…………何かしら?」


僅かに焦りを滲ませるリャナンシーの笑み。

(ああ、そういう事か………)


水弾で受けた衝撃が抜けきったアインスは立ち上がり、武器を構え直し、纏う闇が膨張する。


まるで、アインスの心を現すかのように――――。



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