第33話「処刑者 対 妖将」
「アインス!僕達は怪我人を運ぶ。それまでの間、頼めるかい!?」
「ああ、任せろ」
動けない隊員を肩に担ぎ、離脱を図るアランに短く返すアインス。
その目の前で、斬られたリャナンシーの身体がそんな事はなかったかのように繋がり、元通りになった。
「アインス…………貴方はそういう名前なのね。そう、アインス………」
うっとりと、まるで手にした玩具を触り、感触を確かめる様な視線と言葉を投げかけるリャナンシーを、アインスは無視した。
(やっぱり、気のせいじゃなかったか……)
ドライマウアーより向こう、都市の中央部からの敵襲を警戒しすぎ、ツヴァイに高く飛ぶよう指示したせいでリャナンシーの攻撃を防げなかったのは自分のミスだった。
しかし、高く飛びすぎた程度で真下にいる敵の気配に気付けないなどあり得ない。
あの時も、リャナンシーと初めて交戦した時もそうだった。
初めは幻術による気配操作を疑ったが、再び相対してそれは違うと確信した。
悪意と、今も水を操る為に魔力を動かしている形跡から、リャナンシーは目の前にいる。
だというのに、リャナンシーからは感じるべき気配を感じない。
そして、何故かは知らないがそれは自分が散々葬ってきた魔族や妖精の群れに感じてきた物と同質のものだった。
奴には………バアルには感じなかったものだ。
「あら、何かしら?」
アインスからの視線に頬を染め、照れたように笑うリャナンシー。しかし……
「――――――――っ」
背後、足下から感じた殺気を咄嗟に感じ取り、アインスは真上に飛び退いた。
その自分がいた空間を無数の水の針が埋め尽くすように伸びた。あと少し回避が遅ければ串刺しになっていた事だろう。
落下しながら腰の銃に空いた手を伸ばすアインスに、リャナンシーは残念そうに肩をすくめる。
「あーあ、残念。もう少しで貴方を捕まえられたのに」
「殺そうとしておいて、何が捕まえるだ」
「あら、漸く口を利いてくれた」
落下する勢いのまま、アインスはリャナンシーの上空から斬りかかるが、リャナンシーは後退してそれを避ける。
が、アインスはすかさず手にした銃を向け、引き金を絞った。
リーズィヒ級を貫いたものと同じ………リャナンシー目掛け、銃口から黒い闇が放たれた。




