第2話「忠告」
「竜の鳴き声が一度聞こえたら周りを見渡せ。二度鳴り響いたら、そん時は仲間の事なんざ気にせず、ひたすら全力で逃げろ」
そう言ったのはとある前線部隊の一人、トカゲに近い異形の姿をした小隊長だ。
その言葉だけがいやに響く。
その言葉に、新人であるこれまた異形の姿の者は気の抜けた返事を出す。
「あの、それはどういう……」
「意味が分からない」と、新人の言葉にはそれが隠す事なく表に出ており、魔族の男と相方らしき魔族は顔を見合わせた後、醜く顔を歪める。
「おいおい、俺達エンデ軍…………『フェアニヒター』の間じゃ常識だぞ。命が惜しけりゃ、それくらいは知っとけ」
「す、すいません」
「そうそう、おっかない奴にゴミくずみたいに殺されちまうからよ」
「おっかない………、奴………」
それには少し心当たりがあった。
しかし、確証を得る為にもわざととぼけると、向こうはこちらが何も知らないと思ったのか、脅かすように笑い合いながらその単語を口にする。
「処刑者、だよ」
機械音と魔族の声が混ざり合う基地内に、異形の者が発した言葉だけが、また強く響いた。
更に彼は続ける。
「竜の鳴き声と共に、アイツはやってくる。それが確かに聞こえたなら、別に一度目の鳴き声で逃げたっていい、命を大事にしろよ?」
「ああ、寧ろ二度目は下手すりゃ遅いくらいだ」
「……三度目は?」
思わず、新入りの魔族はそう聞いた。
その問いに、魔族はふいに浮かべていた笑みを消し、真剣な面持ちになった。
「己の不幸を呪え。それから幸運を祈れ。三度目の鳴き声を聞いて尚、逃げ遅れたのならそいつは――」




