第28話「レジスタンスの扱う武器」
「まさか二日連続で三度も同じ場所に行くとはな。それもこんな人数、これだけの車輌数で」
アランの運転する車の助手席から周りを見渡し、ロジャーは誰にともなく呟く。
周りには十数台の車輌。自分達が乗る車輌も含め全てがドライマウアーへ……昨日戦闘があった地点へと向かっていた。
目的は大破した魔導機兵の牽引、回収。
司令官であるセラからの指令の後、ハウンド・ソードの戦闘員の総数七割がその任務の為に動いた。
『一部回収じゃ駄目なのか?牽引となると、引きずった跡で拠点の位置もバレそうなものだけど』
「んー?」
車のスピーカー、無線からノイズ混じりの声。チェスターは車輌群の前を飛ぶツヴァイの背に乗ったアインスからの質問に反応した。
「そこは中継地点の連中とヤクト商会が痕跡消すのに協力してくれるから気にしなくていいんだよ。それに、運ぶ先は俺達の拠点じゃねえからな」
『そうなのか?』
「ヤクト商会との取引場所だ。そこでリーズィヒ級に対抗するための新しい装備を用意してもらうんだよ」
『どうやって?』
「んなもん俺が知るかぁ!!」
「はいはい、短気すぎるよ。さすがに。てか、お前が知らないのもどうよ」
「へぶっ?!」
片手でハンドルを操作しながら、車のスピーカーに顔を近付けて怒鳴るチェスターを呆れながらもう片方の手で押し退け、「まったく……」と溜め息を漏らすクラーク。
「悪かったね、アインス。彼は気が短い。それはもうびっくりするくらい。なんならその辺の小石がぶつかってもキレ散らかす」
「そこまで気は短くねえよ!!」
「さて、説明するとだ」
「聞けよ!?」
横でチェスターが喚いているが、いつもの事なのでクラークはそれを無視して無線越しに続ける。
「魔導機兵の構造は知ってるね?基盤に書き込まれた命令式に従い活動する、近距離から遠距離戦闘、お使いまで何でもござれの自律機動兵器。アインス、我々にとって奴らの脅威は何だと思う?」
『……奴らの階級?』
「少し違う。勿論、それも正解だ。ゾルダート級、ジェネラル級……、そして今回現れたリーズィヒ級。確かに階級が上がるごとに奴らは強くなる。武装も強化されるし、動きも違う。けど、本題はそこじゃあない。一番の問題はその装甲材の方なんだ」
『何か違うのか?』
「ああ、違う」
クラークは大人しく席に座り直したチェスターから――恐らく、自分も覚えてないから聞く為だろう――手を離し、両手でハンドルを握りながら続ける。
「奴らの装甲は特殊でね、普通の武器なんかじゃ傷1つ付かない。この辺に関しては魔族の方がまだお利口さんだ。鉛玉一発、脳天にぶち込めば殺せる」
『……その割には、第八区画の皆は魔導機兵相手でも普通に対応してたが……』
「それはそういう装備で戦っていたからさ。ヤクト商会から提供される武器は鹵獲した魔導機兵の情報を基に作られた特殊な武器だ。魔導機兵の装甲にしっかりダメージが入るように、ね。それはナイフの一本一本だって変わらない」
『まあ、銃の方は正確には弾丸が特殊なんだけどね』
あらかた話し終えたところで、別車輌のアランが付け加え、それに「補足ありがとう」とクラークが返した。
横でチェスターが「どうだ、分かったか新入り?」と、うんうんと頷いているが、それは見なかったことにして更に続ける。
「つまり今回の作戦の本質的な部分は今後我々が戦っていくために、君が破壊したリーズィヒ級を回収、解析して装備の更新をする、ということだ。その為にも、魔導機兵は丸ごと掻っ払う。これで疑問は晴れたかい?」
『ああ、ちゃんと分かったよ』
どうやらしっかり伝わったらしい。
無線から聞こえる声を聞きながら、クラークは前方に見えてきた光景に意識を向け、車の速度を上げる。
破壊され、瓦礫と化したドライマウアーと今回のターゲットである絶命した巨大な機械の怪物。
それらを視界にしっかりと収めながら、クラークは無線をアインス含め、全ての車輌に伝わるように周波数を変えて号令する。
「ターゲット確認。敵がドライマウアーに戻って来る前にあのデカブツを回収する。全員、いつ敵が攻めてきてもいいように身構えとけよ」




